
太ももの内側にしこりができ、「押すと痛い」「歩くと擦れて痛い」といった症状があると、悪い病気ではないかと不安になる方もいるでしょう。
太ももの内側にできるしこりには、粉瘤(アテローム)や毛嚢炎など皮膚に生じる病気から、リンパ節の腫れ、脂肪腫、筋肉内血腫など、さまざまな原因があります。
また、太ももの付け根やVライン付近にある場合には、鼠径ヘルニアなど皮膚以外の病気がしこりとして触れている可能性もあります。
この記事では、太ももの内側にしこりがあり、押すと痛い場合に考えられる病気や受診する診療科、自分でやってはいけないことについて解説します。
太ももの内側にしこりがあり押すと痛い場合に考えられる病気
太ももの内側にできるしこりには、以下のような病気が考えられます。
粉瘤(アテローム)
粉瘤とは、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などがたまって形成される良性の皮膚腫瘍です。
初期には痛みのない小さなしこりとして触れることが多いですが、炎症を起こすと急に赤く腫れ、押したときに痛みを感じるようになります。
粉瘤には中央に黒い点のような開口部が確認できる場合があります。
太ももの内側や足の付け根は、下着や衣服による摩擦や蒸れが起きやすい場所なので、粉瘤ができた場合には歩行や衣服との摩擦によって刺激を受けやすく、炎症が悪化することがあります。
粉瘤は、中にたまったものを自分で押し出して一時的に小さくなっても、皮膚の下に袋が残っている限り必ず再発するので、治療には袋ごと摘出する根治手術が必要です。
毛嚢炎・せつ(おでき)
毛嚢炎とは、毛穴の奥にある毛包に細菌などが入り、炎症が起きた状態です。太ももの内側は汗や蒸れ、皮膚同士の摩擦が起こりやすく、毛嚢炎が発生することがあります。また、カミソリ処理や脱毛などによる刺激をきっかけに毛穴へ炎症が起こる場合もあります。
毛嚢炎では、
- 赤いできもの
- 小さな膿疱
- 押したときの痛み
- 軽い腫れ
などがみられます。
炎症が毛包の深い部分やその周囲まで広がると「せつ(おでき)」となり、硬いしこりのようになって強い痛みや腫れ、熱感を伴うことがあります。中の膿が出ると治ることがほとんどです。
化膿性汗腺炎
化膿性汗腺炎は、脇や鼠径部、太ももの付け根、お尻など、皮膚同士が擦れやすい場所に痛みを伴うしこりを繰り返す慢性炎症性疾患です。
初期には「ニキビ」「毛嚢炎」「おでき」のように見えることがあります。
しかし、同じ場所に何度もしこりができたり、治ったと思っても再発したり、複数のしこりがつながり膿が出るなどの症状がある場合は化膿性汗腺炎の可能性があります。
単なる毛嚢炎や粉瘤とは治療方針が異なるため、繰り返している場合には皮膚科を受診しましょう。
リンパ節の腫れ・リンパ節炎
しこりが太もものかなり上、足の付け根に近い場合には、鼠径リンパ節が腫れている可能性があります。
リンパ節は感染や炎症などに反応して腫れることがあります。足や陰部周辺に傷や皮膚炎、感染症などがあると、鼠径部のリンパ節が腫れ、押したときに痛みを感じる場合があります。
炎症に伴うリンパ節腫脹では比較的痛みが出ることがありますが、しこりが長期間消えない場合や、大きくなっている場合、硬く動きにくい場合などには、原因を確認するための診察が必要です。
脂肪腫
脂肪腫は、脂肪細胞からできる代表的な良性軟部腫瘍です。皮膚の下に、柔らかくて弾力があり、うごきやすいしこりがあると脂肪腫を疑います。
通常は痛みを伴わないことが多いため、「押すと痛い」という症状が強い場合には炎症性粉瘤など別の病気も考える必要があります。
数年かけて少しずつ大きくなる傾向があり、大きな脂肪腫が周囲の神経や筋肉を圧迫している場合などには、痛みや違和感が出ることがあります。
筋肉内血腫
運動や打撲などの後に太ももの内側へしこりができた場合には、筋肉内血腫の可能性があります。
太ももの内側には内転筋群があり、スポーツや急激な動作によって筋肉を損傷すると、筋肉内に出血して血液がたまることがあります。
その結果、筋肉の中に硬いしこりがあり、押すと痛い
、足を動かすと痛い、皮膚に青あざができるといった症状が現れることがあります。
特に抗凝固薬や抗血小板薬などを服用している方では、明らかな外傷がなくても血腫が生じることがあるため注意が必要です。
鼠径ヘルニア
しこりが太ももの内側というよりも足の付け根に近い場合には、鼠径ヘルニアの可能性もあります。
鼠径ヘルニアは、腹腔内の組織が鼠径部の筋膜の隙間などから外側へ突出する病気です。
特徴として、
- 立っているとしこりが出る
- 横になると小さくなる、または消える
- 咳や力みで大きくなる
- 手で押すと戻ることがある
などがあります。
通常は皮膚そのものにできるしこりとは性質が異なります。突然強い痛みが出て、しこりが硬くなり戻らなくなった場合には、嵌頓を起こしている可能性があるため、早急な受診が必要です。
軟部腫瘍・軟部肉腫
筋肉、脂肪、血管、神経などの組織にできる腫瘍を軟部腫瘍といいます。軟部腫瘍の多くは良性ですが、まれに軟部肉腫という悪性腫瘍があります。
軟部肉腫は太ももなどの四肢に発生することがあり、初期には痛みがないことも少なくありません。
そのため、「痛くないから大丈夫」とは言い切れません。
特に、
- 短期間で大きくなっている
- 5cm以上ある
- 硬い
- 皮膚の下で動かしにくい
- 筋肉の奥深い位置にある
- 徐々に大きくなっている
といったしこりでは、画像検査などによる確認が必要になることがあります。
太ももの内側のしこりは何科を受診する?
しこりの場所や深さ、症状によって適切な診療科は異なります。
皮膚のすぐ下にあるしこりは皮膚科・形成外科
皮膚のすぐ下にあり、
- 赤い
- 押すと痛い
- 中央に黒い点がある
- 膿が出る
- 以前からしこりがあった
といった場合には、粉瘤や毛嚢炎など皮膚由来のできものが考えられます。
このような場合には皮膚科または形成外科が受診先の候補になります。
粉瘤や脂肪腫を手術したい場合は形成外科
粉瘤や脂肪腫などのできものを手術で摘出したい場合には形成外科が選択肢されます。
形成外科では、病変を摘出するだけでなく、傷跡にも配慮した縫合や手術を行っています。
筋肉の深い位置にある場合は整形外科
しこりが皮膚の直下ではなく筋肉の中にあるように感じる場合や、
- 運動後に発生した
- 打撲後にできた
- 足を動かすと痛む
- 皮膚にはほとんど変化がない
といった場合には、整形外科が受診先の候補になります。前述の軟部腫瘍も整形外科が専門であり、必要に応じて超音波検査やMRIなどが行われます。
太ももの付け根に近い場合は外科も検討する
Vラインや鼠径部に近いしこりで、
- 立つと大きくなる
- 横になると小さくなる
- 咳や力みによって膨らむ
といった特徴がある場合には、鼠径ヘルニアの可能性があります。この場合には一般外科(腹部)を受診します。
デリケートゾーンに近い場合は婦人科?
女性の場合、太ももの内側から外陰部に近い場所にしこりができると、皮膚科と婦人科のどちらを受診すればよいか迷うことがあります。
しこりが「太ももの皮膚」にある場合には、基本的には皮膚科や形成外科が適しています。
一方、しこりが大陰唇など外陰部そのものにある場合には、婦人科で診察を受ける選択肢があります。
場所が判断しづらい場合には、まず皮膚科や形成外科で診てもらい、必要に応じて適切な診療科へ紹介してもらう方法でも問題ありません。
太ももの内側のしこりで早めに受診した方がよい症状
以下のような場合には、単純な皮膚のできものと自己判断せず、医療機関を受診することをおすすめします。
- 数日で急激に大きくなった
- 赤みや腫れが拡大している
- 強い痛みがある
- 膿が出ている
- 発熱がある
- 何度もしこりを繰り返している
- 2~4週間以上しこりが消えない
- 徐々に大きくなっている
- 5cm以上ある
- 硬くて動かしにくい
- 皮膚より深い場所にある
- 足全体が腫れてきた
特に深い位置にあるしこりや、大きくなるしこりについては、軟部腫瘍との鑑別が必要になる場合があります。
太ももの内側のしこりに対してやってはいけないこと
自分で潰したり膿を絞り出したりする
しこりがニキビやおできのように見えると、自分で潰したくなる方もいるかもしれません。
しかし、無理に圧迫すると皮膚を傷つけ、炎症や感染を悪化させる可能性があります。
粉瘤の場合、中身だけを押し出しても袋が残っていれば再発する可能性があります。
針を刺して中身を出す
消毒した針であっても、自分でしこりへ針を刺すことは避けてください。
感染や出血、傷跡の原因になるだけでなく、血管などを傷つける可能性があります。
そもそもしこりが粉瘤なのか、リンパ節なのか、血管病変なのかを自分で正確に判断することは困難です。
強く押す・揉む・マッサージする
「押したら小さくなるかも」と強く揉んだりマッサージしたりすることも避けましょう。
炎症性のしこりの場合には刺激によって痛みや腫れが悪化することがあります。
また、強く触り続けることで周囲に炎症が起き、しこり本来の状態を診察時に評価しにくくなる場合があります。
市販薬だけで長期間様子を見る
毛嚢炎など一部の軽度な皮膚炎では改善することもありますが、粉瘤や脂肪腫、リンパ節腫脹、鼠径ヘルニア、軟部腫瘍などは塗り薬だけでは改善しません。
「薬を塗っているから大丈夫」と長期間様子を見るのではなく、しこりが残る場合には診察を受けましょう。
太ももの内側のしこりについてよくある質問
太ももの内側に小さいしこりがあります。見た目の変化はなく、押すと少し痛い程度です。放置しても問題ないでしょうか?
小さく、見た目に赤みや腫れがなく、押したときに軽い痛みがあるだけであれば、毛嚢炎の初期や小さな粉瘤、リンパ節など、複数の可能性があります。
すぐに重大な病気を意味するとは限りませんが、しこりの原因は触った感覚だけでは判断できません。
数日から1~2週間程度で小さくなるかを確認しながら、徐々に大きくなる、赤くなる、痛みが強くなる、あるいは数週間残る場合には形成外科を受診するとよいでしょう。
太ももの内側でデリケートゾーンに近い場所に赤いしこりがあります。押すと痛く、歩いていても痛いのですが、皮膚科と婦人科どちらがよいですか?
太ももの皮膚にできているしこりであれば、まず皮膚科または形成外科が適しています。
この部位は摩擦や蒸れが起こりやすいため、毛嚢炎、せつ、炎症性粉瘤、化膿性汗腺炎などが考えられます。
一方、大陰唇など外陰部そのものにしこりがある場合には、バルトリン腺嚢胞など婦人科領域の病気もあるため、婦人科を受診する選択肢があります。
赤みや痛みが強く、歩くだけでも痛むのであれば、化膿している可能性もあるため早めの受診をおすすめします。
太ももの内側に押すと痛いしこりがあります。現在カンジダなのですが、関係ありますか?
一般的な外陰部カンジダ症そのものによって、太ももの内側に皮下のしこりが直接形成されることは典型的ではありません。
ただし、外陰部に炎症がある場合、周囲の皮膚への刺激や掻破などがきっかけとなって毛嚢炎などを起こしたり、鼠径リンパ節が反応して腫れたりする可能性はあります。
しこりが皮膚にあるのか、鼠径部の深い位置にあるのかによって考えられる原因が異なるため、症状が続く場合には医療機関で確認してください。
太ももの内側の付け根あたりに、ぽこっとしたできものがあります。強く押すと少し痛みますが、赤くありません。これは何でしょうか?
赤みがなく軽い圧痛のみであれば、粉瘤、脂肪腫、鼠径リンパ節の腫れなどが考えられます。また、足の付け根にかなり近い場合には鼠径ヘルニアの可能性もあります。
「立つと膨らみ、横になると小さくなる」「咳や力みで膨らむ」という特徴がある場合には鼠径ヘルニアを疑う所見となります。
一方、皮膚の下にコロコロしたしこりがあり、皮膚と一緒に動くような場合には粉瘤などの皮膚・皮下由来のできものの可能性があります。見た目や触り方だけでは確定診断できないため、しこりが続く場合には受診しましょう。
左太ももの内側のVライン付近に大きめのしこりが突然できました。普段は痛くありませんが、押すと少し痛みます。今後どうすればよいですか?
まず、しこりを強く押したり、自分で潰したりしないでください。Vライン付近には皮膚・皮下組織だけでなく、鼠径リンパ節や鼠径管などもあるため、粉瘤、リンパ節腫脹、炎症性疾患、鼠径ヘルニアなど複数の原因が考えられます。
「大きめのしこりが突然出てきた」という場合には、一度診察を受けて原因を確認することをおすすめします。皮膚表面または皮膚のすぐ下にある場合には形成外科や皮膚科を、立ったときに膨らむなど鼠径ヘルニアが疑われる場合には外科が受診先となります。
また、しこりが硬く固定されている、徐々に大きくなる、5cmを超える、筋肉の深い位置にあると感じる場合には、画像検査を含めた精査が必要で、整形外科が専門となる可能性があります。
まとめ
太ももの内側にしこりがあり、押すと痛い場合には、粉瘤や毛嚢炎など比較的よくみられる皮膚疾患から、化膿性汗腺炎、鼠径リンパ節炎、脂肪腫、筋肉内血腫、鼠径ヘルニアなど、さまざまな原因が考えられます。
特に赤く腫れているしこりでは、毛嚢炎や炎症性粉瘤などの炎症性疾患が考えられます。
一方、赤みがなくても、しこりが長期間残る、大きくなる、硬く動かない、深い位置にある場合には、軟部腫瘍を含めて確認が必要です。
皮膚のすぐ下にあるしこりであれば、まず皮膚科や形成外科への受診が選択肢となります。
太ももの付け根にあり、立ったり咳をしたりすると大きくなるしこりでは外科、運動や外傷後に筋肉の中に生じたしこりでは整形外科が適している場合があります。
しこりを自分で潰したり針を刺したりせず、改善しない場合には適切な診療科を受診しましょう。


