脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、加齢や遺伝などさまざまな要因で発症する良性腫瘍の一つです。放置していても問題はないため、治療は必須ではありません。しかし、見た目が気になる箇所にできた場合、治療を検討する方も多いのではないでしょうか。
今回は、脂漏性角化症の詳しい原因について解説します。また、治療方法や予防方法についても紹介するので、脂漏性角化症にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(老人性イボ)の症状
脂漏性角化症は良性腫瘍で、特に加齢とともに多く見られるため「老人性イボ」とも呼ばれます。脂漏性角化症の主な特徴は、以下のとおりです。
脂漏性角化症の症状 | |
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見た目 | ・表面が盛り上がった隆起性の病変 ・ザラザラしているものもあれば滑らかなものもある |
色 | 薄茶色・濃い茶色・黒などさまざま |
大きさ | 数mm~数cm |
かゆみ・痛み | 基本的にないが、摩擦や刺激によってかゆみや炎症を感じる場合がある |
好発部位 | 顔・首・背中・胸・腕など |
脂漏性角化症は、見た目がイボやシミと似ているため、自分で判断することが難しい症状です。良性腫瘍のため放置していても問題はありませんが、見た目が気になる場合や、かゆみや痛みを感じる場合は治療を検討するとよいでしょう。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の考えられる原因は、以下のとおりです。
皮膚の老化
皮膚の老化、つまり加齢が脂漏性角化症の原因の一つです。脂漏性角化症は皮膚の老化現象とされており、80歳以上ではほぼ全員に見られるものです。
通常40代以降に発症することが多い疾患ですが、遺伝の影響や紫外線の影響によって20代頃に発症する場合もあります。ただし、加齢によって脂漏性角化症が発症しやすくなることは事実です。予防方法は後ほど詳しく解説しますが、早期の予防が重要とされています。
紫外線
脂漏性角化症は、日光にさらされやすい部位(顔・首・手など)に好発するため、紫外線も原因の一つと考えられています。紫外線が皮膚細胞にダメージを与え、遺伝子に異常が起きることが原因です。
また、紫外線の影響でメラニンが過剰に分泌されるため、脂漏性角化症は色素沈着を伴い、濃い色になることがあります。
遺伝子変異
脂漏性角化症は、遺伝的な要因も関係していると考えられています。家族に脂漏性角化症の人がいる場合、発症するリスクが高くなるためです。
遺伝が原因の場合、完全に予防することは難しいとされています。紫外線対策をしっかり行うことや、定期的に皮膚をチェックすることが重要です。
脂漏性角化症の疑いがあるイボを見つけた際の対応方法
脂漏性角化症の疑いがあるイボを見つけた際は、皮膚科を受診しましょう。脂漏性角化症のように見えても、他の疾患の可能性も考えられます。ウイルス性のイボや皮膚がんの一部である可能性も考えられるため、自己判断で市販薬を使用するのは避けた方がよいでしょう。
また、自分で処置すると症状が悪化する可能性があります。イボを触ったり潰したりすると、感染症を引き起こすことがあるため注意しましょう。
脂漏性角化症の治療の必要性
脂漏性角化症の治療は必須ではありません。脂漏性角化症はウイルス性の疾患ではなく、感染が拡大する心配がないためです。多くの場合、痛みやかゆみを伴わないため、治療をしなくても健康面に影響はありません。
そのため、治療を行わずにそのままにしておく、もしくは定期的に様子を見て必要に応じて医師に相談するという選択肢もあります。見た目が気になる場合や、摩擦によって痛みを感じるなど日常生活に支障をきたす場合は、治療を検討するとよいでしょう。
繰り返しになりますが、自己処置すると再発や悪化する可能性があるため、自分で対策するのは避けましょう。
脂漏性角化症の治療方法
脂漏性角化症の治療方法は、以下のとおりです。
液体窒素による冷凍凝固
液体窒素による冷凍凝固が、脂漏性角化症の治療方法の一つです。低温の液体窒素を用いて患部を凍結し、細胞を破壊します。液体窒素治療のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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・保険適用で治療できる ・治療中に強い痛みを伴う ・数回の治療が必要になる可能性がある |
・施術時間が短い ・治療後に赤みや腫れ、色素沈着が残る可能性がある |
電気メスでの切除・焼却
脂漏性角化症の治療は、電気メスで切除・焼却する方法もあります。電気を用いて脂漏性角化症を焼き切る治療方法ですが、局所麻酔を行い施術するため、痛みはほとんどありません。
メリット | デメリット |
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・短時間で確実に除去できる ・再発のリスクが低い |
・出血が少ない ・治療後に軽い痛みや傷跡が残る可能性がある ・保険適用外 |
IPL(光治療)
IPL治療も、脂漏性角化症の治療方法の一つで、高エネルギーの光を皮膚に照射し肌のトラブルを改善します。IPL治療のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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・傷跡が目立ちにくい ・治療中の痛みが少ない |
・ダウンタイムが短い ・残存や再発のリスクがある ・保険適用外 |
レーザー治療
レーザー治療も、脂漏性角化症の治療方法の一つです。レーザー治療にはさまざまな種類があり、脂漏性角化症は炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどを用いて治療します。レーザー治療のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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・周囲の皮膚への影響が少ない | ・治療後の見た目がきれい ・保険適用外のため治療費が高額になる場合がある |
脂漏性角化症は再発しやすい
脂漏性角化症は、再発しやすいイボです。再発しやすい理由は、完全に脂漏性角化症を取り切れないためです。
特に、厚みのある脂漏性角化症は、基底細胞が残り数ヶ月から数年後に再発する可能性があります。反対に、完全に取り除けば再発の心配はほぼありません。ただし、新しい場所に別の脂漏性角化症が現れる可能性があります。
脂漏性角化症の予防方法
脂漏性角化症の予防方法は、原因の一つである紫外線対策を行うことです。紫外線は、メラニン生成を促進させ、シミや色素沈着の原因となります。
そのため、季節を問わず、外出時は日焼け止めを使用することが重要です。特に、顔・首・手など、日光にさらされやすい部分の対策をしっかり行いましょう。さらに、帽子や日傘、サングラスなどを使うことで、紫外線によるダメージを軽減できます。
紫外線予防をすることで、脂漏性角化症の発症リスクを減らし、皮膚の健康を守れます。
まとめ
脂漏性角化症の主な原因は、加齢・紫外線・遺伝です。特に40代以降の方に発症しやすい疾患ですが、遺伝的要素や紫外線の影響によって、若い世代に現れることもあります。
治療は必須ではありませんが、自分で処置すると症状の悪化や感染症を招く原因にもなるため注意が必要です。見た目が気になる場合や日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談し治療を検討しましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。