皮膚がんとほくろの見分け方は?悪性の場合の治療法も合わせて解説!

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そのほくろ、気になりませんか?

「なんだか最近ほくろが大きくなってきた気がする」「他のほくろと違って、形がおかしいほくろがある」など、もともとあったほくろが気になることはありませんか?

意識して見てみると、普通のほくろと比べて色や形、大きさなどに不安を感じたりする人もいるのではないでしょうか?その気になるほくろ、実は皮膚がんかもしれません。しかし、皮膚がんは早期発見しやすく、早期に治療を開始すれば手術などで完治する可能性は高いのです。

そもそも「ほくろ」と「皮膚がん」とは?

見た目だけでは判断しにくい皮膚がんもあり、ほくろなのか皮膚がんなのか迷う方は少なくありません。そもそもほくろ、皮膚がんとは何なのでしょうか?

ほくろの正体は良性の腫瘍

ほくろはメラニン色素を作り出すメラノサイトという細胞が変化して塊が形成されたものです。医学的には「色素性母斑」と呼ばれる良性腫瘍の一種です。

ごく稀に悪性のもの「皮膚がん」が隠れている

皮膚がんは、皮膚細胞に悪性新生物が生じていることを指しますが、この一部の見た目がほくろと似ていることがあるのです。また、内臓にできるがんとは異なり、症状が目視できることから早期発見しやすいといわれています。一方でほくろや湿疹などの形状に似ているため、見過ごしてしまいがちです。

ほくろに似ている皮膚がんの種類と特徴

皮膚がんの中には見た目が良性のほくろと似ており、自己判断が難しいものがあります。そのため、ほくろだと思っていたものが実は皮膚がんだったというケースは少なくありません。

ほくろと間違われやすい皮膚がんには、以下のようなものがあります。

種類特徴
悪性黒色腫次第に大きくなる。日本人では特に足の裏や手のひら、爪に発生しやすいです。
基底細胞がん体に表面のどこにでもできるが、顔など日光が当たる部位にできやすく、転移は稀です。
有棘細胞がん日光が当たる場所にできやすく、赤みを帯びた硬いしこりや、表面がカサカサした治りにくい湿疹のような見た目が特徴。

皮膚がんとほくろの見分け方・セルフチェック

皮膚がんの中には見た目や症状がほくろと似ており、区別が難しい場合が少なくありません。ここでは、良性のほくろと悪性腫瘍を見分けるポイントと、早期発見に役立つABCDE基準を合わせて紹介します。

形が左右対称ではない【Asymmetry】

ほくろは通常左右対称の形をしています。皮膚がんの場合、細胞が異常な繁殖をするため、左右非対称などのいびつな形として現れることが多くなります。

周りの皮膚との境界が曖昧【Border irregularity】

基本的にほくろは輪郭がはっきりしているので、まわりの皮膚との境界が明確です。しかし皮膚がんの場合、輪郭がぼやけていたり周囲の皮膚との境界線が不明瞭であることが多くなります。

色が均一ではない【Color variegation】

ほくろは黒色で塗りつぶしたように濃淡がありません。一方で皮膚がんの場合、色にムラがあり、黒・茶・赤・白など複数の色が混在しています。また、部位によって濃淡が生じることがあります。

直径が6mm以上ある【Diameter enlargement】

ほくろが直径6mm以上の大きさに成長している場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性があるため注意が必要です。

急に大きくなる・数が増える【Evolving lesions】

ほくろが大きくなったり、増えたりすることは珍しくありません。しかし通常そのスピードは緩やかで、自分では気づかないほどです。一方悪性黒色腫(メラノーマ)の進行スピードは非常に早く、1〜2か月で周辺に広がる(転移する)ため、明らかにわかるほどのほくろの拡大や増加が見られます。

注意すべき兆候

日本人の場合、手足などの末端部分に生じることが多い傾向にあります。手のひらや足の裏、爪を含む手の指、足の指にできたほくろには注意が必要です。また、かゆみを伴い掻いて出血したり、長期間治らないかさぶたにも注意しましょう。

ほくろの診断と検査・正確に見分けるには?

ほくろと皮膚がんを正確に見分けるには、専門的な検査が欠かせません。皮膚がんには様々な種類があり、通常のほくろと見た目が似ていることも多いため、視覚的な情報だけで正確に判断するのは困難です。

自己判断の限界と専門医に相談する重要性

セルフチェックはあくまで初期評価です。湿疹や粉瘤など、皮膚疾患と似た症状があるため、自己判断では見落とす可能性があり危険です。気になる症状が現れたら、まずは皮膚科専門医に受診しましょう。最近は診察室に専門医証を掲ることが一般的ですので、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の専門医証などを確認すると良いでしょう。

痛みのない精密検査「ダーモスコピー」とは

ダーモスコピーとは、皮膚表面の光の乱反射をおさえながら、皮膚のシミやできものを痛みなく詳細に観察できる機器です。ダーモスコピーで皮膚の症状を観察することで、皮膚がんかどうかの判断、症状がよくなってきているか、様々な情報を得ることができます。特にダーモスコピーの効果が発揮できるのは、ほくろのがんである悪性黒色腫を見極める時です。また、ダーモスコピーを使ったほくろや皮膚がんなどの診断は保険適用で行えます。

確定診断のための皮膚生検

最終診断は生検による病理組織検査での確定です。局所麻酔薬を注射し、がんの一部(3〜4㎜程度)を切り取って病理検査を行います。悪性黒色腫の場合はできるだけ病変全体を切除する全摘生検をして病理検査を行い、診断とその後の治療方針を決定します。

ほくろ除去の方法

まだ転移を生じていない初期の皮膚がんであれば手術で完全に摘出できた場合、完治が期待できます。そのため初期の皮膚がんに対し、まず検討すべき治療法は手術です。しかし、皮膚がんの種類や大きさ、患者の年齢や体調などを考慮した結果、手術以外の方法(放射線治療、化学療法)を選ぶこともあります。

今回は手術での除去方法を紹介します。

切除法

悪性の可能性がある場合は、基本的にメスでの完全切除を行います。まわりの皮膚をできるだけ傷つけないように切除し、丁寧に縫合します。

レーザー治療

レーザー治療はCO2レーザー(炭酸ガスレーザー)やピコレーザーなどが用いられ、直径1㎜以下で盛り上がりの少ないほくろに適しています。その半面、安易にレーザー治療でほくろを除去してしまうと、悪性だった場合皮膚生検ができないので、確定診断ができません。少しでも悪性が心配な場合は、皮膚科専門医がいるクリニックで診断を受けるようにしましょう。

保険適用になるケース、ならないケース

ほくろの除去にも、保険適用になるケースと、ならないケースがあります。

ほくろを除去したい理由が、見た目が気になるなどの美容目的だと、保険適用にはなりません。一方、悪性腫瘍の疑いがある場合、生活に支障が出る場合は保険適用の対象になります。また、ほくろ除去が保険適用になった際の施術方法は限られています。

まとめ

ほくろと皮膚がんは、悪性黒色腫などの皮膚がんは見た目が似ていることがあり、見分けるのが難しい場合があります。見分けるためのひとつの目安として表面の状態や、形の観察がありますが、外見だけでは良性か悪性かを正確に判断するのはとても困難です。少しでも「変だな」と思うことがあれば、速やかに専門医を受診し適切な検査と診断を受けることが重要です。

大切なお肌を守るために、気になるほくろは放置しないようにしましょう。

院長紹介

古林 玄

日本形成外科学会 専門医
古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。