盛り上がったほくろの原因とは?対処法、除去の必要性も合わせて解説

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「気付いたらほくろが盛り上がっている」「盛り上がったほくろがかゆい」など、不安を感じている方はいませんか?多くのほくろは良性であり、健康上に問題はありません。しかし、このような変化を伴うほくろの中には命の危険がある皮膚がんが隠れている可能性もあります。

この記事では盛り上がったほくろの原因や見分け方、治療法を詳しく解説します。

盛り上がったほくろとはどんな状態?

盛り上がったほくろとは、通常の平らなほくろとは異なり、皮膚の表面から隆起していることが特徴です。ほくろは「母斑細胞」というメラニンを生成する細胞の増殖によって生じますが、年齢と共に平らだったほくろが、盛り上がってくることもあります。また滑らかで柔らかい感触であることがほとんどです。

ほくろが盛り上がる原因とは?

ほくろが盛り上がってきたように感じると、「何か悪いものなのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。盛り上がったほくろはメラノサイト(色素細胞)が集まり、皮膚の上に隆起することで形成されます。一般的にほくろが盛り上がってくること自体に問題はありません。しかし、もともとのほくろに比べて隆起してきたり、変色や拡大、出血、かさぶたができたなどの変化が確認された場合は別種のできものである可能性があります。

不安を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

平らなほくろとの違い

盛り上がったほくろは平らなほくろと違い、隆起しています。そのため見た目が気になるだけでなく、衣類に引っかかったり、かゆみを伴うこともあります。ほくろだけがかゆみの原因になることはほとんどありませんが、ほくろが盛り上がっていると引っ掻いてしまい、かさぶたになりかゆみが強くなる場合があります。

心配のいらない良性の盛り上がったほくろ

盛り上がったほくろは通常のほくろより目立つので、気になるものです。しかし盛り上がったほくろ全てが悪性というわけではありません。盛り上がったほくろでも、心配のいらない良性の種類があります。

ひとつ目は、ミーシャー母斑です。ミーシャー母斑とは顔などにできるドーム状に盛り上がっているほくろです。顔や頭、首など目立つ場所にできやすいため、切除を希望する人も少なくありません。幼少期から発生し、最初は青黒いですが年齢が進むと肌色に近くなってきます。ほくろの種類の中では、悪性化する危険は低い部類になります。

次にウンナ母斑です。ウンナ母斑は主に体幹の胸やお腹、背中といった部位に発生するほくろです。直径1㎝ほどの黒色〜茶色で柔らかく、表面が凸凹しているのが特徴です。加齢と共に目立つようになるため、切除を希望する人が多く見られますが、悪性化するリスクはほとんどありません。

悪性だった場合に見られる症状

ごく稀ではありますが、急にほくろが盛り上がってきたり、形がいびつになるなどの変化が見られた場合は悪性黒色腫(メラノーマ)といった悪性腫瘍(皮膚がん)の可能性を考慮する必要があります。

以下のような変化を感じた場合には悪性を疑い、できるだけ早く専門医による診察を受けましょう。

  • 新しいほくろができた、または急に盛り上がってきた
  • 血やかさぶた、かゆみ、痛みなどの症状がある
  • 形が左右非対称である
  • 以前からあるほくろが急に大きくなった、または形が変化した
  • 色が濃くなったり複数の色が混在している
  • 周囲の皮膚との境界が不明瞭になっている

インターネットでの情報に注意

インターネット上でのQ&Aや掲示板などに「盛り上がったほくろ」に関しての質問が多く見られます。そこでの不安の声に対する回答の多くは、医学的根拠に乏しく、混乱や誤解を招いてしまう可能性があります。よく見かける誤解を整理し、正しい判断をするための知識をお伝えします。

かゆいのはがんのせい?

盛り上がったほくろがかゆくなってきたらがん?と考える声が多く寄せられますが、医学的にかゆみがあるからといって、がんであると断定はできません。悪性黒色腫でかゆみを感じることもありますが、それ以外に色や形の変化、出血やほくろの拡大など複数の要素がそろっていることが多いです。

ほくろの変化を感じたり、かゆみが数日続くような場合は、自己判断せずに専門医のクリニックを受診することをおすすめします。

ネットの体験談に振り回されないように

人の体験談から、「自分も同じようなほくろだけど、大丈夫だった」などの書き込みを見ると、安心したくなる気持ちもわかります。しかし、見た目が全く同じでも、人によって皮膚の状態は様々です。体験談はあくまでその人個人の意見であり、誰もが当てはまるわけではありません。情報をうのみにせず、自分の状態を客観的に判断し行動することが大切です。

本当に安心できるのは「専門医による診断」です

安心できる情報源として、医師監修のサイトや公的医療機関が発信している情報であれば、それらを参考にし、正確な判断ができるでしょう。しかし専門用語が多く難しかったり、ネットの情報に迷ったときは、専門医のクリニックに相談してください。

専門医のクリニックでは、「ダーモスコピー」という特殊な拡大鏡を用いた検査を行います。これは、皮膚の表面の反射を抑え、ほくろの内部構造を拡大して観察できる機器です。肉眼では見えない色素のパターンや血管の状態を確認できるため、良性か悪性かの判断精度が飛躍的に高まります。ネットの情報や自己判断では決して得られない、確かな安心への第一歩です。

日常のセルフチェックと予防策

ほくろの予防には、日々のセルフケアと定期的な対策が必要です。ほくろを増やさないためには、紫外線予防を心がけましょう。紫外線と聞くと暑い夏を思い浮かべる方も多いと思いますが、天気や季節によって変化はあるものの、紫外線は一年中地上に降り注いでいます。

またホルモンバランスの乱れにより、メラニンの生成量が増加することで、ほくろが増えることもあります。ストレスや睡眠不足、食生活などの生活習慣にも気をつけると良いでしょう。

盛り上がってきたほくろの治療方法の種類

ほくろの治療には次の方法があります。ほくろの種類や大きさなどの状態によって適した治療法を医師に相談して決めましょう。

治療法内容
レーザー治療直径1ミリ以下で、盛り上がりの少ないほくろ除去に有効
電気メス直径6ミリ以下の盛り上がったほくろの除去に効果的
くりぬき法直径6ミリ以下で皮膚の深いところまでメラニン色素が影響しているほくろに適している
切開法直径6ミリ以上の大きなほくろ除去に対応している

このような治療法がありますが、悪性黒色腫(メラノーマ)の場合は、外科手術によってすべて除去する方法がもっとも確実だと考えられています。患部が小さいうちは外科手術のみできれいに取り去ることが可能です。

ほくろ除去後のダウンタイムは?

ほくろ除去後は腫れや赤み、乾燥、痛み、硬さが生じる場合があります。患部は保護テープで最低10日間固定します。治療直後は赤くなりやすいですが、徐々にピンク色になり、3〜6か月程度で馴染むようになります。

また、ダウンタイム中に日焼けしてしまうとほくろが再発してしまう可能性もあるため、紫外線対策は徹底しましょう。

まとめ

ほくろの盛り上がりの原因は、母斑細胞の増殖にあります。加齢による皮膚の変化や、紫外線の刺激、摩擦や物理的な刺激が原因で母斑細胞の増殖を引き起こすと考えられます。

多くの場合、ほくろは良性の皮膚腫瘍であり、健康上の大きな問題はありません。しかしごく稀に急に盛り上がったり、色や形に不規則な変化が見られた場合は皮膚がんの可能性を考慮する必要があります。このような変化に気づいた場合は、早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を行いましょう。

院長紹介

古林 玄

日本形成外科学会 専門医
古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。