できものが急にできて正体がわからない。
仕事が忙しくてできものの診察になかなか行けない。
このできものが良性なのか悪性なのかだけでも知りたい。
このようなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか? この記事では、できものの見分け方とよくある症例について解説しています。
できものについて
「できもの」と一般的な表現されるものは、医学的に皮膚腫瘍と言い換えることができます。
腫瘍と聞くと体に何か悪影響を与えるような悪性腫瘍をイメージしてしまいますよね。
たしかに皮膚腫瘍で悪性とされるものは、多くの場合皮膚がんのことを指します。
それぞれのできもので、原因は異なり、ウイルスや細胞、脂肪、老廃物など多岐にわたります。 良性と悪性で共通して言えるのは、どちらも早期発見、早期治療を行うことが何よりも重要です。
良性と悪性の見分け方
次に腫瘍が良性なのか悪性なのか見分ける方法を紹介します。
硬さ
まずはできものの硬さで判断できます。
悪性のがんは、硬くでこぼこしたような表面であることが多いです。そしてがん物質が周りの組織に癒着をしているせいで、押してもあまり動かないという特徴もあります。
また、良性の腫瘍はゴムのように柔らかく、表面は滑らかに丸みを帯びています。腫瘍は独立しているので、押すとこりこりと動きます。
表面
悪性のがんは、悪性を疑う場合として、出血する、ジクジクする、周囲との境界が不鮮明である、かさぶたがある等の特徴があります(もちろんこれらの特徴がなくても悪性の場合はあります)。
完全に見極めるには?
診察をせずに良性と悪性を完全に見極めることはできません。
最終的には必ず専門医による診察が必要となってきます。
しかし、できものができたからといってすぐに診察に行くほど、世間から重要視されていないのが現状です。
そのため良性腫瘍と悪性腫瘍の一部を紹介することで、いまお悩みのできものが何という疾患なのか判断材料にしていただければと思います。
良性腫瘍とその治療法
「できもの」と言っても、その形や症状は様々です。そこでまずは良性腫瘍について紹介していきます。
ほくろ
良性腫瘍の中でも最も一般的に知られているのが、この「ほくろ」です。
厳密にほくろとはメラニン色素を作り出す母斑細胞と呼ばれる細胞が集合し、固まったものです。
様々な形のほくろがありますが、正しい見分け方をしないと危険があるものも実はあるのです。
それはほくろが皮膚がんととても似ている点にあり、診察でもじっくり検査を行う程見分けることが非常に難しい腫瘍です。
もし、ほくろが悪性である可能性が高い医師が判断した場合は、手術で切除し病理検査を行うことで診断が確定します。
基本的にはほくろ治療にはレーザーでの治療が有効ですが、レーザー治療は複数回受ける必要があり時間がかかることと、ほくろが悪性だった場合、レーザー治療は有効ではないのです。
粉瘤(アテローム)
表皮嚢腫とも呼ばれる良性の腫瘍です。
皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質といった老廃物が溜まることで、できるできものです。
始めはあまり目立つことはありませんが、ニキビやしこりと似たように感じます。しかし、この粉瘤は放置することで、皮膚が隆起するほど大きくなり、異臭や細菌感染による炎症を起こす可能性があります。
粉瘤は手術を行わない限り根治できないのが特徴で、手術には「くりぬき法」「切開法」の2つの手術方法を用いて摘出します。
脂肪腫(リポーマ)
最も多くみられる皮下の良性腫瘍です。
身体の各部に発生しますが、ゆっくり発育するのが特徴で発見するのが遅くなりやすい腫瘍です。
一般的に痛みや痒みといった症状はないのですが、放置するとどんどん大きくなり目立ってしまいます。
また、脂肪腫自体は良性の腫瘍ですが、よく似た症状や見た目の悪性腫瘍もあるので、早急な手術が必要になります。
脂肪腫は自然治癒することはなく、内容物は液体状ではないので根治には外科手術が必要になります。
悪性腫瘍とその治療法
悪性腫瘍とはいわゆる「がん」のことです。早期発見が鍵となる悪性腫瘍についてご紹介します。
この腫瘍を疑う特徴がある場合には、すぐに病院での診断を受けることをおすすめします。
悪性黒色腫(メラノーマ)
この悪性黒色腫は、その名の通り色が黒くいことから、ほくろと見間違う代表的な皮膚がんです。
手足などの末端部分に生じることが多く、大きなほくろや急にできたほくろなどは、このがんに該当する可能性があります。見分けるポイントとしては以下があります。
✔ぼやけてはっきりしない
✔色が混在する
✔大きさが6mm以上
✔表面が隆起している
✔左右非対称
基底細胞腫
悪性黒色腫と同様に、ほくろと間違うがんの1つで、高齢者に多いのが、この基底細胞腫です。
放置すると大きくなり、中央部がくずれてへこんできた場合には基底細胞腫の疑いがあります。皮下脂肪の少ない顔面などに生じると深く進攻し骨を崩してしまうこともある危険ながんです。
有棘細胞癌
最後にイボと間違われる代表例であるのが、人体の一番外側に存在する表皮細胞のがんである有棘細胞癌です。
皮膚が盛り上がったしこりになるので、イボと間違われることがあります。特に顔面や手の甲など、紫外線を浴びやすい場所に見られる傾向にあります。
表面がもろく崩れやすいので、少しの摩擦で傷になりジクジクしたり、かさぶた状態になるなどの特徴があり、細菌感染によって悪臭を放つようにもなるがんです。
見分けるポイントとしては、
✔悪臭
✔できものを繰り返している場所にできている
✔表面がジクジクしたり、かさぶたになっている
✔顔面や手の甲などの、紫外線を浴びやすい部位にできている
これらの皮膚がんが転移が生じていない初期の段階であれば、手術により完全に摘出すれば完治の可能性が高くなります。したがって悪性の疑いがある特徴がある場合には、なるべく早く病院で診断してもらい、手術することが重要になります。
まとめ
ほとんどの場合、良性でも悪性でも早期発見早期治療が何よりも重要です。
本記事で記載した腫瘍の種類と見分け方を参考に、不安があればすぐに病院にいらしてください。
当院では、検査の結果と患者様の状態に合わせた治療方法を詳しくご説明し、インフォームドコンセントを重視して、最善の治療を行います。
基本的には粉瘤であっても、日帰りでの手術など短時間での処置をすることができます。
できものについて不安がある方、ぜひお気軽にご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。