脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は、良性腫瘍の一種のため、放置していても問題はありません。しかし、「見た目が気になる」「市販薬で治せるなら治療したい」という方も多いのではないでしょうか。しかしながら、脂漏性角化症は市販薬では治療効果を得られません。
今回は、脂漏性角化症が市販薬で治療できない理由や、治療方法、注意点について解説します。脂漏性角化症でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
脂漏性角化症(老人性イボ)とは
まず、脂漏性角化症の症状や原因について解説します。
脂漏性角化症の症状
脂漏性角化症の症状は、以下のとおりです。
特徴 | 褐色~黒色の隆起した斑点のようなものが現れる |
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部位 | 顔・首・背中・胸部など日光があたる箇所にできやすい |
大きさ | 数mm~数cm(徐々に大きくなることもある) |
痛みやかゆみ | 基本的にはないが、摩擦などの刺激でかゆみを感じる場合がある |
脂漏性角化症は良性のため、悪性の腫瘍に変化するリスクは限りなく少ないとされています。ただし、見た目が気になる場合や症状が急激に変化した場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の原因は、主に以下のとおりです。
- ・紫外線
- ・加齢
- ・遺伝
- 脂漏性角化症は、皮膚の表皮基底細胞の遺伝子に異常が起こることで発症します。脂漏性角化症は老人性イボとも呼ばれており、40代以降で発症することが多い腫瘍です。加齢に伴い、皮膚のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が遅くなり、脂漏性角化症のような良性腫瘍が形成されやすくなります。
脂漏性角化症に効果がある市販薬はない
脂漏性角化症に効果がある市販薬は、今のところ確認されていません。効果がない理由や治療方法については後ほど詳しく解説しますが、外用薬では治療効果がないといわれています。
また、無理に自分で処置すると悪化する可能性があるため、触ったり潰したりしてはいけません。脂漏性角化症は、市販薬や自己処置では治療が難しい疾患のため、医師に相談し正しい診断と治療を受けることが重要です。
市販薬が脂漏性角化症に効果がない理由
市販薬が脂漏性角化症に効果がない理由は、以下のとおりです。
ウイルス性イボではないため
脂漏性角化症は、ウイルス性のイボではないため、市販薬では治療効果が得られません。ウイルス性イボとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚に感染して発生する良性腫瘍です。
脂漏性角化症は、皮膚が角質化して盛り上がった良性腫瘍の一種であるため、市販薬で治療するのは難しいのです。腫瘍を柔らかくする程度の効果は得られても、根本的に症状を改善することはできません。
物理的な治療が必要なため
脂漏性角化症は、外用薬や内服薬ではなく物理的な治療が必要なため、市販薬だけでの治療ができません。皮膚が盛り上がって角質化しており、薬の成分が内部まで浸透しないため、外用薬だけで治療するのは困難なのです。
市販薬では皮膚の表面を柔らかくする程度の効果しか得られず、角質や腫瘍自体を除去することは難しいため、物理的な除去が必要になります。
脂漏性角化症に効果的な治療方法
脂漏性角化症に効果的な治療方法は、以下のとおりです。
液体窒素療法
液体窒素療法は、低温液体窒素を用いて患部を凍結し、細胞を破壊する治療方法です。保険治療が可能で、液体窒素療法を導入している病院は多くあります。
液体窒素療法はマイナス196℃の超低温の液体を患部に当てるため、強い痛みを感じることが特徴です。強く当てると治りも早くなりますが、痛みも強くなるため、基本的には数回に分けて治療を行います。
また、治療後は凍傷ややけどのような反応が起きるため、痛みを感じたり水ぶくれや血豆ができたりします。痛みは2~3日続くこともありますが、治療箇所はかさぶたとなり自然と剥がれ落ち、きれいな皮膚が再生されます。
レーザー治療
脂漏性角化症は、炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザーなどのレーザー治療も可能です。基本的に保険適用外ですが、1回の治療で済みます。
レーザー治療は再発がしにくく、色素沈着も起こりにくいことが特徴です。傷跡がほとんど残らないため、特に顔などの目立つ部分の治療に適しています。保険治療ができないケースが多いため、治療費は高くなりますが、きれいかつ早く治したい方は選択肢に入れてよいでしょう。
電気焼灼法
脂漏性角化症は、電気焼灼法でも治療可能です。電気焼灼法は保険適用外で、電気メスの高周波電流で患部の表皮を薄く削り取る治療方法です。
局所麻酔を行い、電気メスで患部を焼き切るため、比較的正確な処置ができます。施術中の痛みはほとんどなく、再発のリスクも少ない点が特徴です。治療後は、色素沈着や傷跡が残る場合があります。
市販薬で治療できないイボ
市販薬で治療できない他のイボは、以下のとおりです。
脂漏性角化症(老人性イボ)
先述したとおり、脂漏性角化症は市販薬で治療できません。良性腫瘍なので、放置していても問題ありませんが、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
水イボ
水イボも市販薬で治療できません。水イボはウイルス性の感染症で、一般的な市販薬では治療効果がありません。反対に、市販薬を使用すると周囲の皮膚を刺激して炎症を起こし、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
水イボは1年程度で自然治癒することもありますが、接触感染するため感染が広がる場合もあります。そのため、病院を受診することが望ましい疾患です。
尖圭(せんけい)コンジローマ
尖圭コンジローマも、市販薬では治療できません。尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症の一種で、性器周辺に先のとがったイボができます。
痛みがないため発見が遅れやすい疾患ですが、放置していると大きくなったり他の部位に広がったりするため注意が必要です。自然治癒することもありますが、感染するイボなので早めに病院を受診しましょう。
市販薬やスキンケア用品に関する注意点
市販薬や市販のスキンケア用品に関する注意点は、以下のとおりです。
用法・用量を間違えると症状が悪化する可能性がある
イボの市販薬やスキンケア用品を使用する際、用法用量を誤ると症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。指示を守らずに誤った使用をすると、症状が悪化するリスクがあります。
また、症状によっては市販薬を使用しても効果を得られないものがあります。使用中に、かゆみ・赤み・腫れ・痛みなどの異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談しましょう。
市販のスキンケアアイテムには限界がある
市販のスキンケアアイテムには限界があり、症状の改善に向けた効果を期待できる範囲が限られています。特定の症状や重度の症状の場合は、効果が期待できません。
スキンケア用品には、皮膚の保湿や基本的な保護に効果がありますが、イボそのものを除去する効果はありません。また、スキンケア製品そのものが皮膚のトラブルを招く可能性もあるため、注意しましょう。
まとめ
脂漏性角化症は、市販薬では効果が得られません。治療をする際は、液体窒素やレーザー治療など、物理的な治療が必要です。液体窒素やレーザー治療など、さまざまな治療方法があるため、自身の希望に合った治療方法を選ぶことが大切です。
脂漏性角化症は良性腫瘍なので、基本的に放置していても問題ありませんが、別の病変の可能性もゼロではないため、気になる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。