脂漏性角化症は(老人性イボ)は、基本的に健康面で悪影響が出ないイボなため、放置される方も多い症状です。ただし、イボの位置や大きさによっては見た目が気になってしまった際には切除も可能です。健康に害がないことから、できるだけ治療費を抑えて何とか自力で治せないか検討される方もいらっしゃいます。本記事では、脂漏性角化症を自分で取ることはできるのかどうか解説します。
脂漏性角化症(老人性イボ)について
まずは「脂漏性角化症」(老人性イボ)という症状がどんなものなのか、特徴と原因に分けて詳しく解説します。
特徴
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は別名「老人性イボ」とも呼ばれている通り、中年以降の方に発生することが多いイボの一種です。主に顔や頭部、首筋、手足など、紫外線を浴びやすい部位にできます。見た目の特徴としては、茶色や黒色など濃色であり、表面は少し盛り上がりざらざらしています。大きさや形状は様々ですが、一般的に数ミリ程度から2~3センチ程度と言われています。シミと間違えられることも多く、初期はシミだったものが徐々に盛り上がって脂漏性角化症となることがあります。
この症状は痛みやかゆみを伴わず、放置しても健康上の問題はありませんが、自然に消えることもありません。そのため、顔など目立つ部位にできた脂漏性角化症は、美容的観点から治療を希望する方が多いです。
原因
脂漏性角化症の原因は、医学的に完全には解明されていません。しかし、顔や手足など紫外線を多く浴びる部位に発生しやすいことから、紫外線が影響していると考えられています。皮膚は、紫外線を浴びることで細胞に異常が生じ、異常増殖を始めます。
この異常増殖が、濃いシミのような肌の変化の原因となっているようです。そして脂漏性角化症は、こうした皮膚の変化が加齢とともに徐々に蓄積することで発生するため、若い方より高齢の方に多く見られる症状です。
脂漏性角化症は自分で取れる?
脂漏性角化症を自分で取ることはおすすめしません。市販薬や木酢液などを使って改善を試みる方もいますが、基本的に効果がありません。自分で切ったり削ったりすると傷跡を作る危険性が高く、感染症の恐れがあるので注意しましょう。
また、「木酢液でイボを除去できた」という体験談を目にする機会が多いですが、医学的な根拠はありません。このような方法を自己判断で試すと、思わぬ肌トラブルや症状の悪化を招く危険性があります。特に、顔や目立つ部位に傷跡が残ってしまうとストレスの原因になります。脂漏性角化症の治療を希望する場合は、信頼できる医療機関での治療をおすすめします。
治療法
脂漏性角化症の治療法には、主に2種類の治療方法が採用されています。
- ・レーザー治療
- ・冷凍凝固療法
レーザー治療
脂漏性角化症の治療には、炭酸ガスを使用したレーザーが多く用いられています。この治療法は、レーザーを照射して皮膚内の水分を蒸散させることで、脂漏性角化症を除去する方法です。治療中の出血が少なく、施術時間が短いのが特徴で、特に顔や首などデリケートな部位でも安心して受けられます。
特に炭酸ガスレーザーでは、後述する液体窒素の治療より色素沈着のリスクが低く、数か月程度で色素沈着も落ち着いてきます。レーザー治療は、周囲の正常な皮膚を傷つけることなく除去できるため、初めての方でも安心して治療を行えます。しかし、この治療は保険適用外であるケースもあり、自己負担額が大きくなる可能性があるデメリットがあります。とはいえ、治療期間の早さや肌への負担を最小限に抑えられる点で、幅広い年代の方に採用されている治療法です。
冷凍凝固療法
冷凍凝固療法は、脂漏性角化症の治療で最も一般的かつ保険適用の方法です。この治療法では、マイナス196℃の液体窒素を使用して異常な表皮細胞を凍結し、壊死させることで除去します。費用が抑えられるのが大きなメリットですが、治療時や治療後に痛みを伴うことがあります。
また、適切な凍結強度の調整が重要です。冷凍が不十分だと再発しやすく、過剰に冷凍すると瘢痕(はんこん)が残るリスクがあるため、施術者の経験が重要です。さらに、治療後は半年から2年程度、炎症後の色素沈着が残ることが多く、特に顔面では美容的な課題となる場合があります。脂漏性角化症の数が少なく、見た目を大きく気にしない場合に適した治療法ですが、美容的な影響を考慮する場合は他の方法を検討することも重要です。
放置した場合のリスクと注意点
脂漏性角化症は痛みやかゆみなどの症状がなくガンなどの悪性に変異することもほぼありません。しかし放置した場合、下記3つのリスクやデメリットを伴う可能性があります。それぞれ詳しく解説します。
- ・自然治癒しない
- ・再発の可能性がある
- ・悪性腫瘍と間違われる可能性がある
自然治癒しない
脂漏性角化症は、自然に治癒することはありません。むしろ年齢を重ねるごとに数が増える傾向があります。この症状は明確な原因が判明していませんが、紫外線や皮膚の老化が主な原因とされており、一度できたものが自然に消えることはありません。しかし、日常的に肌が服などによって擦れて摩擦が起こることで、表面の角化部分が剥がれ落ちる場合があります。
一時的に色が薄く感じる方もいらっしゃいますが、根本的な改善にはなっていないため注意しましょう。そして、良性の皮膚腫瘍であるため緊急性はありませんが、顔や首など目立つ部位に発症しやすいため、見た目を気にされる方が多い症状です。
再発の可能性がある
脂漏性角化症は、治療を行っても再発する可能性があることを理解しておきましょう。治療を行っても細胞が残ってしまうケースがあり、数ヶ月〜数年後に再発する可能性があります。そして、一時的にサイズを小さくしたり、目立たなくする方法として、液体窒素を使った凍結療法やレーザー治療が有効ですが、傷跡が残るリスクがあります。
また、治療後は炎症が起こりやすく、炎症後色素沈着が生じることがあります。色素沈着では、茶色い色が残ったり、逆に色が抜けることもあります。脂漏性角化症は、一度除去しても再発することが多いため、治療方法についてよく相談することが重要です。また、新たな発生を防ぐためにも、紫外線対策などを行うことをおすすめします。
悪性腫瘍と間違われる可能性がある
脂漏性角化症は良性の皮膚腫瘍ですが、見た目が悪性腫瘍と似ている疾患もあるため、自己判断には注意しましょう。特に間違われやすい悪性腫瘍には、悪性黒子や日光角化症、有棘細胞がんなどが挙げられます。悪性黒子は悪性黒色腫(メラノーマ)の一種で、色が褐色や黒っぽいシミの様に見えるため、シミやほくろと区別がつきにくい特徴があります。
悪化すると、内臓にまで転移する可能性があるため、早期発見が重要になる疾患です。日光角化症は紫外線によって発生しやすい悪性腫瘍で、放置すると一部が有棘細胞がんに進行する場合があります。特徴としては、赤みが強く、触ると硬さを感じる人も多いです。
特に、ジュクジュクと腫瘍部分が崩れてきた場合は早急に治療を行いましょう。有棘細胞がんの初期段階では、イボと間違われやすい顔や手にできやすいです。皮膚が盛り上がり、時に表面が崩れたり悪臭を放つことがあります。
そのため脂漏性角化症と思われる症状でも、悪性腫瘍の可能性を考慮して、早めに医師に相談することが大切です。
まとめ
脂漏性角化症は、原因が明確に判明していませんが、加齢とともにできやすい良性の皮膚疾患です。悪性腫瘍であることが少なく、放置しても基本的には問題はないと言われています。しかし、目立ちやすいイボであるため、見た目が気になり治療を希望する方も少なくありません。
治療には、レーザー治療や保険適応できる冷凍凝固療法などもありますので、症状に合わせて医師と相談しましょう。当院は、形成外科の専門医が在籍しており、傷跡を最小限に抑えた治療を行っています。土日も診察していますので、脂漏性角化症などお肌のお悩みにはぜひ当院をご利用ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。