脂漏性角化症とメラノーマの違いと治療方法を解説

「脂漏性角化症とメラノーマ、ほくろは何が違うの?」
「自分で確認できる方法が知りたい」
「脂漏性角化症とメラノーマの治療法について知りたい」
似たような見た目で判断に困る方は多いです。

脂漏性角化症は良性の腫瘍ですが、メラノーマは皮膚がん(悪性腫瘍)です。
本記事では、脂漏性角化症とメラノーマの症状や原因、治療法の違いについて解説しています。

自分にできているものが悪性ではないかと気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

脂漏性角化症とメラノーマ(悪性黒色腫)の症状の違い

項目 脂漏性角化症 メラノーマ
乳頭状や顆粒状 左右非対称
褐色から黒色までさまざま 褐色や黒色で色ムラがある
大きさ 数㎜から2cmまで 6㎜以上になることが多い
できる箇所 顔や頭部、体幹 足の裏や手のひら、顔、体、粘膜など様々
触感 スベスベもしくはカサカサ 硬いできもののよう
変化 加齢とともに数が増える 大きさ、色、形が変化する

脂漏性角化症は別名「老人性イボ」とも呼ばれており、名前の通り加齢とともに増えていきます。
脂漏性角化症は良性の腫瘍のため、健康被害はありません

しかし、患部が大きくなると、指や衣類などでこすれて炎症を起こしたり痒みを感じることがあります。

一方で、メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚がんです
初期は、ほくろとの見分けがつかないこともありますので、体調に変化を感じてからはじめてメラノーマを疑う方も多いです。

ほくろとまわりの皮膚の境界線が不明瞭であったり、滲出液や出血が見られるなど、上記の表のような症状以外にも気になることがある場合は、早めの受診がおすすめです。

 

脂漏性角化症とメラノーマの原因の違い

脂漏性角化症の原因は、加齢、紫外線、遺伝などが考えられています。肌の新陳代謝で、シミの原因になるメラニンは体外へ排出されます。

しかし、加齢による衰えでメラニンの排出が追いつかなくなり、徐々に蓄積されていきます。

また、紫外線などによる外部からの強い刺激を受けると、メラニン色素が作られ、肌を守ろうとします。その結果、発生するのがシミ(老人性色素斑)です。シミと同じですが、メラニンが皮膚を盛り上げるほど蓄積した状態になるのが、脂漏性角化症と言われています。

メラノーマは皮膚がんの一種で、皮膚の色素に関係するメラノサイトという細胞やほくろの細胞ががん化して起こる病気です。

メラノーマの原因は、紫外線や遺伝、外的な刺激などが考えられています。紫外線の強い地域で発生率が高く、紫外線の過剰照射は重大な原因と考えられています。

しかし、足の裏や手のひら、爪の中など、紫外線が直接当たりにくい部位にも多く発生しています。そのため、摩擦や外傷など外部からの刺激も危険因子として挙げられます。

また、家族にメラノーマを発症した人がいることも、黒色腫発生のリスクを上げる要因です。

 

脂漏性角化症・メラノーマ・ほくろの見分け方

項目 脂漏性角化症 メラノーマ ほくろ
見た目 褐色~黒色の盛り上がったシミやイボ、表面はザラザラ 色の濃淡がまだらな黒色や茶色の病変、形は左右非対称 褐色~黒色の色素斑、形は円形や楕円形

医療機関での診断方法やセルフチェックポイントをそれぞれ見ていきましょう。

医療機関での診断方法

脂漏性角化症は視診で診断が可能です。
また、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いた検査を行うことで、より確実にメラノーマなどの他の病変と区別できます。

それでも似た症状の皮膚疾患との区別が難しい場合は、皮膚組織を採取して生検組織診断を行うことがあります。

セルフチェックのポイントと注意点

脂漏性角化症(老人性イボ)のセルフチェックでは、以下のような点を確認します。

  • ・盛り上がりの大きさは数㎜〜2cm程度か
  • ・表面はざらつきがあるか
  • ・色は褐色から黒色であるか
  • ・凹凸があるか


メラノーマ(悪性黒色腫)のセルフチェックでは、ほくろやシミの形・色・大きさに変化がないかを確認します。

  • ・形が左右非対称
  • ・皮膚との境界がギザギザしている
  • ・色ムラがある
  • ・直径が6mm以上ある
  • ・出血や滲出液がある
  • ・【爪の場合】黒い線や変形がある

脂漏性角化症は良性ですが、メラノーマは命に関わるがんです。

初期はほくろとの区別がつきにくいため、少しでも気になることがある場合は、早めの受診をおすすめします。

 

治療方法

脂漏性角化症とメラノーマでは、治療方法が異なるため治療費にも違いがあります。まずは、脂漏性角化症の治療法から紹介します。

脂漏性角化症の治療法

脂漏性角化症(老人性イボ)の治療法には、液体窒素による凍結療法、炭酸ガスレーザー、高周波メス(ラジオ波メス)、切除手術などがあります。

液体窒素

液体窒素(-196℃)を用いた凍結療法が一般的です。綿棒や専用スプレーで病変部に液体窒素を数秒間塗布し、皮膚組織を凍結・壊死させます。このとき多少の痛みが伴うことがあります。

治療した患部は、数日~数週間でかさぶたとなり自然に剥がれ落ちます。軽度の痛みや腫れが出ることがありますが、通常は数日で改善します。数回の施術が必要になることがあります

炭酸ガスレーザー

炭酸ガス(CO₂)レーザーは、水分を含む皮膚組織を蒸散させて除去する治療法です。局所麻酔後にレーザーを照射し、病変部のみを精密に削ります。

施術後は軽いかさぶたができ、1~2週間で自然に剥がれますが、一時的な赤みや色素沈着が残ることがあります。ダウンタイムが短く、顔など目立つ部位に適しています

高周波メス(ラジオ波メス)

高周波メスは、電気エネルギーで皮膚組織を蒸散・切除する治療法です。局所麻酔後、専用電極で病変部を削り取ります。

出血が少なく、短時間で治療が終わるのが特徴です。

切除手術

メスで直接切除する方法です。
大きな病変や他の治療法で除去できない場合に選択されます。

傷跡が残る可能性がありますが、病理検査ができること、再発リスクが少ないことがメリットです。

メラノーマの治療法

メラノーマ(悪性黒色腫)の治療法には、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。
治療法は病状の進行度や転移の有無、健康状態などにより異なります。

基本的には外科手術による切除が第一選択です。

腫瘍の周囲に安全域を確保して切除し、深さが1mm以上の場合はセンチネルリンパ節生検で転移を調べます。

手術が難しい場合や全身転移がある場合は、薬物療法や放射線療法を併用します。

治療費の目安

疾患 治療法 費用の目安
脂漏性角化症 液体窒素 保険適用で約700円〜
炭酸ガスレーザー 自由診療、クリニックにより異なる
切除 保険適用で約7,000円〜14,000円
メラノーマ 手術 日帰り手術で約36,000円(3割負担)
放射線療法 1部位1回 約30,000円
薬物療法 使用薬によって異なる

メラノーマの治療は原則保険適用ですが、放射線療法には先進医療が含まれるケースもあります。

薬物療法では高額な薬剤が使われることもあるため、詳細は医師にご確認ください。

 

早期発見と早期治療の重要性

メラノーマは進行が速い皮膚がんであり、放置すると全身に転移するリスクがあります。

早期に発見し、適切な治療を受ければ高い確率で完治が可能です。

脂漏性角化症とメラノーマは見た目が似ており、自己判断が難しいケースも少なくありません。

少しでも気になる変化があれば、迷わず皮膚科を受診しましょう。

 

まとめ

本記事では、脂漏性角化症とメラノーマ、ほくろの違いについて解説しました。

脂漏性角化症は良性腫瘍ですが、メラノーマは悪性で進行が速い皮膚がんです。

初期段階では見分けが難しいため、自己判断せず早めに専門医へ相談することが大切です。

早期発見・早期治療によって、命を守ることにもつながります。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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