脇の下や足の付け根にかゆみや痛みを感じて、赤いできものができたことはありませんか?
繰り返し同じ場所にできるなど、お悩みの方もいるのではないでしょうか?
そのできものは「化膿性汗腺炎」という疾患で、悪化すると炎症部位が大きくなり、傷跡も残ってしまうこともあります。
本記事では、化膿性汗腺炎の症状や原因、治療法を詳しく解説していきます。
また、化膿性汗腺炎によく似た、かゆみを伴う別の疾患も紹介しますので、参考にしてください。
化膿性汗腺炎とは
化膿性汗腺炎とは、毛が生えてくる毛包に炎症が起こり、赤いおできが繰り返しできる疾患のことです。
初期の段階では、かゆみや痛み、腫れをともなう程度ですが、症状が悪化すると膿が溜まった後に炎症が広がり、手術が必要になるケースまで悪化することもあります。
化膿性汗腺炎は、20代〜40代の方が最も発症しやすく、男女ともに見られる疾患です。
症状が現れやすい部位としては以下になります。
・首
・脇の下
・乳房の周り
・足の付け根
・鼠蹊部
・肛門の周り
人に見せるのに抵抗がある部位にできやすいため、恥ずかしさから受診をためらって症状が悪化することがありますので注意が必要です。
化膿性汗腺炎の原因
化膿性汗腺炎の原因は、まだはっきりと解明されていません。
タバコに含まれるニコチンが毛孔閉鎖を引き起こすのではと考えられ、化膿性汗腺炎の原因になる可能性があるのではないかと言われています。
また、肥満により肌が擦れてしまい刺激が与えられることが原因ではないかともいわれています。
他にも、欧米における化膿性汗腺炎の患者全体の30〜40%の方が、家族に同じ疾患を持っていることから、遺伝の関連性もあるのではともいわれています。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン『化膿性汗腺炎診療の手引き 2020』
化膿性汗腺炎の症状
化膿性汗腺炎は、放置していると悪化する可能性があります。
悪化してしまうと、患部も広がり傷跡も残ってしまうことにもなりますので、早いうちに治療することをおすすめします。また、症状が悪化するにつれて痛みも激しくなっていきます。
発症する部位は肌がすれるところが多く、頻繁に痛みを感じることになり日常生活にも支障をきたすことにもなります。
ここからは、化膿性汗腺炎の症状5つと、その症状が悪化していく状況を順番に解説していきます。
かゆみを伴う
初期症状としては、漠然としたかゆみを感じるようになります。
化膿性汗腺炎は汗をかきやすい部位に発症することが多く、かゆみを伴い赤く腫れるようになります。
結節
毛穴が詰まり、しこりやコブのようなものができている状態です。
かゆみや痛みをともない、時間が経つにつれて赤く腫れてきます。
腫・膿瘍
おできが発生してきて、その中に膿が溜まった状態が膿腫です。
さらに、膿が溜まって毛を包む袋が破れて、ぷよぷよした状態が膿瘍です。
瘻孔(ろうこう)
複数のおできが発症して、膿の溜まった毛を包む袋が破れて隣同士のおできが皮膚の下で貫通した状態です。
おでき同士に蜂の巣のようなトンネルができ繋がってしまいます。
瘻孔になると、痛みも強くなり完治には時間がかかることになります。
瘢痕(はんこん)
腫瘍の再発を繰り返すことで、皮膚が厚くなり傷跡が残った状態です。
この症状を繰り返すことで、慢性化していくことにつながります。
化膿性汗腺炎の治療法
化膿性汗腺炎は重症度によって治療法も違ってきますが、大きくは投薬治療による内科的治療か、手術による外科的処置の2つになります。
それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
手術による治療
化膿性汗腺炎の手術では、患部を切開して中の膿を排出する方法や、患部を皮膚ごと切り取り皮膚移植する方法があります。
かゆみしかない初期の段階など炎症部位が小さい場合は、患部を切開して膿を出し切ることで完治できます。
しかし、炎症部位が広範囲に広がっている場合は、切除する部分が大きいため皮膚ごと切り取り、皮膚移植を行うこともあります。化膿性汗腺炎は、患部が小さいうちに治療することで摘出も簡単であり、傷跡も残りにくくなりますので、早期に治療を受けることが重要です。
どちらの手術も、切除する際に膿を完全に排出することが重要で、取り残しがあればまた再発する可能性もあるため、適切な手術が必要になります。
薬による治療
手術できない部位や、手術による症状の改善がみられない場合は、薬による治療をおこないます。
薬による治療法としては、まず患部を清潔に保ち抗菌薬の内服や抗菌薬軟膏などを使用します。重症度が高い場合は、ヒュミラという薬を皮下注射して治療することもあります。
ヒュミラは、炎症の元になる物質の働きを阻害する薬で、化膿性汗腺炎を減少させる効果があります。しかし、効果が現れるまでには3ヶ月程度かかります。
化膿性汗腺炎と似たかゆみを伴う疾患
化膿性汗腺炎と同じように、かゆみを伴ってしこりやおできができる疾患は他にもあります。
化膿性汗腺炎と似た症状なので間違いやすいですが、治療法も違ってきますのでそれぞれの特徴を解説していきます。
粉瘤
粉瘤とは、皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質といった老廃物が溜まってできる良性の腫瘍のことです。
通常の大きさは、数mm〜数cmほどのドーム状に盛り上がったしこりになり、肌色もしくは白色をしていて、中央部に黒い穴があいていることが多いです。
また、皮膚は隆起するほど大きくなることもあり、臭いを発するのも特徴です。
粉瘤は炎症を引き起こさなければ痛みはなく、少しかゆみがあったり見た目が気になったりする程度で、日常生活には支障はありません。
しかし、放置していても自然に治ることはありませんので、見た目が気になる場合や、炎症を引き起こす可能性があるため、治療することをおすすめします。粉瘤の治療法としては、切開法などの手術で患部の袋を取り出す治療がおこなわれます。
粉瘤も完全に除去しなければ再発することもありますので、適切な手術が必要です。
毛嚢炎
毛嚢炎とは、毛根を包む毛穴の奥の部分が炎症して、赤くなったり膿が溜まったりする疾患です。毛嚢炎は、軽いかゆみや痛みを伴うことがありますが、通常数日〜1週間程度で治ることが多いです。
化膿性汗腺炎と毛嚢炎は、初期の段階では見た目がよく似ていて間違いやすいですが、症状は大きく異なり、対処法を間違えると悪化してしまいますので注意が必要です。
こうしたことから、見た目だけで自己判断するのは難しく、いつもと少しでも違う症状があったり、なかなか改善が見られない場合は、早いうちに病院へ行くことをおすすめします。
化膿性汗腺炎の治療は形成外科へ
化膿性汗腺炎の治療は重症度によっては手術が必要になるので、形成外科への受診をおすすめします。
化膿性汗腺炎の手術では、すべての膿を取り出さないと再発の可能性がありますし、切開部分が大きくなることで傷跡が残ることも懸念されます。
当院では、手術による傷口を治すだけの治療ではなく、傷跡を目立たなくすることを重視した治療もおこなっています。
また、局所麻酔を使用して痛みを軽減する工夫もおこなっていますので、痛みが苦手な方も安心して手術を受けることができます。
日帰り手術も可能となっていますので、入院する必要もなく日程を組みやすいので、時間を取られず治療が可能です。
もちろん症状によっては投薬による治療もおこなっていますので、それぞれの患者様に最適な治療を提案させていただきます。
経験豊富な形成外科専門医が、一人ひとり丁寧に診察して対応いたしますので、できもの全般の治療は当院へお任せください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。