化膿性汗腺炎は自然治癒する?放置の危険性と治療法を解説

化膿性汗腺炎は、繰り返し炎症が起こる慢性的な皮膚疾患です。多くの場合、脇の下やお尻、足の付け根部分に発生します。

見た目は、小さなニキビのようで、赤みや腫れ、痛みを伴うことが特徴です。この病気は、自然に治癒することは少なく、治ったと思っても慢性的に再発しやすいため、注意が必要です。

本記事では、化膿性汗腺炎を放置する危険性と、似ている病気やそれぞれの治療法について解説します。

化膿性汗腺炎について

ここでは、化膿性感染炎の原因と症状について解説します。

原因

化膿性汗腺炎の原因は、明確には判明していません

しかし、発症しやすい人にはいくつかの特徴があることが分かってきました。そのひとつが遺伝的な原因です。家族の中で化膿性汗腺炎を発症したことがある人は、遺伝子による要因が関係していると考えられています。もし、近親者の中に化膿性汗腺炎を患った人がいる場合は、遺伝による原因が考えられるでしょう。

他にも、環境的な原因があると言われています。環境的な要因としては、肥満と喫煙です。肥満は皮膚同士や皮膚と衣類との摩擦が発生しやすく、毛包が閉塞(へいそく)しやすくなります。さらに、喫煙によって毛包の免疫機能が低下することで、細菌感染が引き起こされやすくなることも知られています。

このような要因が重なることで、感染が進行し、化膿性汗腺炎が発症すると考えられています。特に家族に化膿性汗腺炎になったことがある人や肥満の方、喫煙をする方は、発症リスクが高まるため、注意が必要です。

主な症状

化膿性汗腺炎の主な症状としては、痛みを伴うおできのようなしこりができます。特に汗をかきやすい部位にできやすく、脇の下や太ももの付け根、お尻などにできやすいと言われています。初期症状では、皮膚が少し腫れたように感じることが多く、悪化すると膿があるおできのような状態になります。

化膿性汗腺炎は慢性的に発生しやすい病気で、しっかり治療を行わなければ、長期間にわたって繰り返し炎症が続くことが多いです。膿がたまることで瘻孔(ろうこう)ができることもあり、傷跡が残りやすくなってしまいます。さらに悪化すると皮膚が硬くなり、重症の場合、放置すると皮膚がんのリスクも否定できません。

そのため、化膿性汗腺炎が疑わしい場合、早めの治療が非常に重要になるでしょう。

自然治癒するのか?

化膿性汗腺炎は基本的に自然治癒することはありません。軽度の場合は、一時的に自然に改善することもありますが、基本的には慢性的で再発しやすい病気です。

初期の段階では、しこり部分を清潔に保ち、抗菌薬の内服や外用薬で炎症を抑えることが可能な場合もあります。しかし、自然治癒を期待して放置すると、症状が悪化するリスクが高いため、自己判断による放置は避けましょう。悪化して膿がたまると悪臭を伴うケースや傷跡が残りやすくなります。

特に膿がたまっている部分が潰れてしまうと、さらに感染が広がり、治療が難しくなることもあります。特に化膿性汗腺炎は、症状が一度治まったように見えても再発することが多い病気です。放置した場合のリスクが非常に高いため、早めに適切な治療を受けるようにしましょう。

化膿性汗腺炎と似ている病気

化膿性汗腺炎と見た目が似ている病気はいくつか存在しています。ここではよく間違われやすい下記3つの疾患について説明します。

疾患名 痛み できやすい場所
粉瘤 なし 顔、首、背中、耳の後ろ
毛嚢炎 あり 顔、首、背中、太もも、おしり
ニキビ なし(悪化すると痛みあり) 顔、背中など

粉瘤

粉瘤は、別名アテロームと呼ばれ、皮膚の下にできる良性の腫瘍です。袋状のできものができ、そこに角質や皮脂がたまることで発生します。できやすい部位としては、特に顔や背中、首などで、皮膚の表面が盛り上がったように見えます。

大きな特徴としては、盛り上がりの中央に黒い点ができ、自然に消えることはほとんどありません。

そして自然に腫瘍部分が小さくなることはなく、時間と共に大きくなっていくことが一般的です。基本的には痛みを伴わない腫瘍ですが、細菌感染すると赤く腫れ、強い痛みや炎症を引き起こすこともあります。

毛嚢炎

毛嚢炎(もうのうえん)は、毛穴に細菌が感染して起こる皮膚の炎症です。髭剃りやムダ毛処理、掻きむしりなどによって皮膚に傷が付いた際に、細菌が毛穴に侵入することで炎症を引き起こします。症状としては、赤いプツプツした発疹や膿を伴う膿疱ができることがあります。

人によって痛みを感じる方もおられますが、かゆみは軽度であることが多いです。基本的に軽症であれば自然に治ることが多い病気ですが、悪化すると色素沈着や傷跡が残る場合もあるため注意しましょう。

ニキビ

ニキビは、顔の額や頬、あご周り、背中など皮脂が多い場所にできやすい発疹です。

特に思春期から青年期にかけてよく見られますが、年齢や性別問わず多くの方に発生しやすいです。ニキビは「白ニキビ」「黒ニキビ」「赤ニキビ」の3段階に分けられます。初期の段階が白ニキビと言われ、痛みがなく毛穴に皮脂が詰まった状態です。そして、酸化により黒くなった状態を黒ニキビ、細菌の増殖により炎症が悪化した状態が赤ニキビになります。

ニキビは、自然に治る軽度のものから跡が残る重症のものまであります。また炎症を起こすと、場所によっては激しい痛みを伴うケースもあるため、正しいスキンケアを行い予防と対策を行いましょう。

何科を受診する?

おできができた場合、何科を受診するべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

  • ・皮膚科
  • ・形成外科
  • ここでは、症状に合わせた受診先について解説します。

皮膚科

皮膚科は、皮膚や爪、毛髪に関わる病気を診察・治療します。そのため、診察の対象としては頭皮や顔、手足、体全体にわたり、目に見える部位全般になります。

皮膚の赤みやかゆみ、できものなどで受診する方が多く、内科的な治療から外科的な処置まで幅広く対応できます。

しかし得意とする治療としては、外科的な手術より内服薬や塗り薬を用いた治療がメインとなります。薬物療法で治療が可能な場合は、皮膚科での治療が最適です。

形成外科

形成外科は、からだの表面の傷やしこりをきれいに治療します。主に、皮膚の腫瘍やケガ、先天異常、やけど、幅広い病気について相談できます。

特に傷跡をできるだけ目立たないように治療することが得意で、手術や縫合技術に優れています。形成外科では、新生児の赤ちゃんから高齢者までと幅広く、機能的かつ美しくきれいな回復を目指す診療科です。

外科手術を伴う治療に関しては、傷跡が残りにくくきれいに仕上がる形成外科での治療がおすすめです。

治療法

では、実際に受診した際の治療方法について解説します。治療については大きく分けて、下記に2つになります。

  • ・薬を使用した治療
  • ・手術による摘出

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

薬を使用した治療

薬を使用した治療では、飲み薬や塗り薬、注射などが用いられることが多いです。一般的に、ヒュミラと呼ばれる薬が使われ、できものの減少が期待できます。ヒュミラは自分で注射できるタイプになるため、通院の手間を省いて手軽に治療できるメリットがあります。

また、外科的手術を伴わないため、精神的な不安や傷あとの心配もありません。しかしデメリットも存在し、効果が現れるまでに3か月ほどかかってしまいます。

他にも、抗菌薬や外用薬のクリームが併用して処方されるケースもあり、症状に合わせて様々な薬を組み合わせて治療を行っていきます。

手術による摘出

手術による摘出では、麻酔を使用するため痛みの心配はありません。できものができた皮膚を部分的または全て切除して腫瘍部分を摘出していきます。特に化膿性汗腺炎は、がんを発生する可能性も否定できないため、完全に取り除くことが非常に重要です。

膿瘍を出すためには、切開やくり抜き術が行われますが、再発リスクを下げるためには、切開による治療がおすすめです。他にも、体への負担が少ないレーザー治療も選択肢の一つです。手術の内容に関しては、症状の重症度によって異なるため、医師と相談して最適な治療法を見つけましょう。

まとめ

化膿性汗腺炎は、自然治癒が難しく、放置すると症状が悪化しやすい慢性的な病気です。治療には抗菌薬や外用薬、場合によっては手術が行われ、早期の診断と治療が重要になります。このおできは、赤みや痛みを伴う腫れが生じ再発を繰り返すことが多いため、適切な治療を受けるようにしましょう。

当院は、傷をきれいに治すことに特化した形成外科です。日帰りによる治療も行っていますので、肌のトラブルでお悩み方はぜひご利用ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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