痛みを伴ったできものの治療について

できものを触ってみたら、痛みを感じることはありませんか。 痛みを感じるできものは、病院で早急に治療する必要がある場合が多いです。

ここでは、症状と治療法をそれぞれ詳しく解説していきます。

痛みを感じるできものの正体とは?

痛みを感じるできものの正体としては次の3つが考えられます。 ・粉瘤 ・炎症性粉瘤 ・化膿性汗腺炎 それぞれの詳しい症状や原因を解説していきます。

粉瘤(アテローム)

まず、一つ目に考えられるのが粉瘤(アテローム)です。 粉瘤とは、表皮嚢腫とも呼ばれる良性の腫瘍のことで、皮膚の下にできた袋状の組織に、皮脂や角質といった老廃物が溜まった状態のことを指します。

粉瘤の初期症状としては、小さなしこりが皮膚の下に見られる程度で、ほとんど目立つことはありません。そのため、ニキビやふきでものと間違えてしまうことが多いです。 しかし、粉瘤はニキビとは違い自然治癒することはなく、時間が経つにつれて皮膚を隆起させるほど大きくなったり、臭いを発するようになったりします。 また、細菌などの感染により炎症を引き起こす危険性もあるので、できるだけ早い処置が必要になります。

炎症性粉瘤

二つ目に考えられるのが、炎症性粉瘤です。 炎症性粉瘤とは、粉瘤が炎症を起こして赤く腫れあがり、痛みを伴う状態のことを指します。 炎症を起こす主な原因は細菌感染と異物反応の2つです。

細菌感染

粉瘤の中には皮脂や垢といった老廃物が溜まっており、細菌が増殖しやすい環境になっています。そこに細菌が侵入することで炎症が起きます。

異物反応

また、粉瘤が圧力を受けるなどして、袋状の組織に溜まった老廃物が外に漏れだし、皮膚と触れることで炎症が起きることがあります。

炎症性粉瘤の症状としては、通常の粉瘤の何倍にも腫れあがり、鋭い痛みを伴うことが挙げられます。 炎症の程度は様々ですが、脇や鼠径部などの関節部分などのデリケートな部分に出来た場合には、腕や足を挙げられないほどの痛みを伴うこともあります。

炎症性粉瘤を放置しているとやがて増殖した細菌が全身にまわり、発熱を伴うこともあるので、早急な治療が必要です。

化膿性汗腺炎

三つ目に考えられるのが、化膿性汗腺炎です。 化膿性汗腺炎とは、汗を分泌する汗腺に感染が起こり、膿が溜まる皮膚性の疾患です。 加齢や皮膚のターンオーバーの乱れによって汗腺につまりが起き、汗を十分に出せないことが化膿性汗腺炎の主な原因になります。

化膿性汗腺炎の症状としては、毛穴が赤く腫れあがり、痛みを伴うことが挙げられます。
主に脇の下や陰部、肛門に多いアポクリン腺という汗腺によくみられます。

また、化膿性汗腺炎を放置すると、膿が溜まり続け、皮膚の下でおできがつながってしまう危険性もあるので、早急な治療が必要です。

治療方法

次に、それぞれの治療法と治療後の注意点について解説していきます。

粉瘤

粉瘤の治療法には、くりぬき法または切開法の2つの方法があります。 どちらも粉塵を摘出する手術による治療方法です。

くりぬき法

くりぬき法は、特殊な器具を用いて皮膚に小さな穴をあけ、そこから粉瘤の内容物を絞り出し、その後しぼんだ袋状の組織を引き抜く手術法です。 手術時間も5分~20分と短く、患者様の負担も少ない手術法となります。

切開法

切開法は、粉瘤直上の皮膚を切開し、粉瘤をまるごと摘出する手術法です。再発する可能性が低い治療法であるため、場合によっては切開法が選択されます。

炎症性粉瘤

炎症性粉瘤の治療法には、抗生物質の内服、切開排膿、摘出手術の3つの方法があります。

抗生物質の内服

抗生物質の内服によって治療を行います。 しかし、粉瘤の炎症は細菌感染以外が原因の場合が多いため、必ずしも効果があるとは言えません。 また、炎症を起こしている内容物内部まで有効成分を運ぶことができず、大きな粉瘤の場合は十分な効果を得られないことも多いです。

切開排膿

切開排膿は、粉瘤を切開し、老廃物の排出(排膿)を行い炎症の原因を排除する方法です。 しかし、再発のリスクや痛みが残るため、洗浄や経過観察のために通院が必要となります。

抗生物質の内服

イボの治療で保険が適用される方法は「液体窒素治癒」と「イボ剥ぎ法」です。

摘出手術

摘出手術は粉瘤の治療法と同様の方法で行いいます。 しかし、炎症性粉瘤の場合は通常の粉瘤とは違って被膜と呼ばれる袋状の組織を切除することが難しいので、摘出手術を行っても再発する可能性があります。

化膿性汗腺炎

化膿性汗腺炎の治療法としては、除去手術と投薬治療の2つの方法があります。

除去手術

皮膚を全層にわたって大きく取り除く方法です。 化膿性汗腺炎が発症した箇所から皮膚がんにつながることもあるので、炎症部をしっかりと取り除きます。

投薬治療

投薬治療は除去手術で症状が改善しなかった場合に用いられる治療法です。 ヒュミラなどの治療薬を服用することが多く、効果が出るまでに3か月ほど要します。

治療後の注意点

術後の注意点

どの手術も、術後1~3日はガーゼが血で滲むので、毎日ガーゼを交換する必要があります。 シャワーで傷を流しても問題ありませんが、必ず新しいガーゼに交換し、入浴は感染の可能性があるため、抜糸までは避けてください。また、手術当日・翌日は飲酒、運動は出血のリスクがあるので避ける必要があります。

傷痕

傷痕は2~3週間で一度硬くなり、徐々に柔らかくなっていきますが、体質や環境によってはケロイドや肥厚性瘢痕になる場合もあるので、不安な場合には相談してください。

できものの予防策

ここまで、痛みを感じるできものの正体として、粉瘤と炎症性粉瘤、化膿性汗腺炎の症状と治療法について紹介してきました。 最後に、それぞれの予防策について解説していきます。

粉瘤の予防策

粉瘤は外傷による原因が多いため、ケガに気を付けることが予防策として挙げられます。 また、先ほども説明したように、粉瘤を放置してしまうと、炎症を起こしてしまう危険性があるので早急に治療を開始する必要があります。

化膿性汗腺炎の予防策

化膿性汗腺炎の予防策としては、汗をかきやすい脇の下などの汗腺を塞がないようにすることが挙げられます。 締め付けの強い下着の着用は避け、しっかりと乾燥させることが重要です。 ただ、粉瘤や化膿性汗腺炎になりやすい体質の方は予防することは難しいため、症状があまり出ていないうちに治療することが大切です。

当院では、上記のような症状の治療を行っています。 治療に関するご相談やご予約など受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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