できものは、身体のどこにでもできるもので、手足の指に発症する可能性もあります。中には自然治癒しないものもあり、大きくなったり悪化したりする可能性があるため、放置することはおすすめできません。
本記事では、指にできるできものの種類や治療方法を紹介します。指にできものでお困りの方は最後までお読みいただき、早めに病院を受診することをおすすめします。
指にできる良性のできものの種類
指にできる良性のできものの種類を紹介します。
いぼ(尋常性疣贅)
いぼは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することによって発症します。医学用語では、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)と呼びます。細胞が増えることで皮膚が盛り上がりますが、痛みやかゆみなどの症状はありません。
いぼは感染力があるため、他の箇所に広がる可能性があります。特に、手足は小さい傷ができやすいため、症状が広がりやすくなります。
ガングリオン
ガングリオンは、ゼリー状の内容物が詰まった良性の腫瘤です。手の甲にできるものが典型的ですが、指の付け根や関節の周辺、腱鞘などにできます。
ガングリオンは痛みもなく、無症状であれば放置していても問題ありません。ただし、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛みを感じる場合があります。
腱鞘巨細胞腫(けんしょうきょさいぼうしゅ)
腱鞘巨細胞腫は良性の皮下腫瘤で、手の指の関節周辺の腱鞘付近に多く発生します。徐々に大きくなっていくこともありますが、大きさが変わらない場合もあります。大きさが3cmを超えることはほとんどなく、痛みもありません。
ただし、指の付け根にできると運動制限がかかり、日常生活に支障をきたす場合があります。腱鞘巨細胞腫は大きくなると、骨を浸食する場合もあるので早い段階で摘出することが望ましい腫瘍です。
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、アテロームや表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも呼ばれる良性の腫瘍です。皮膚に袋状の組織ができ、その中に皮脂や垢などの老廃物が溜まっています。ニキビと勘違いしやすいできものですが、粉瘤は自然治癒しません。腫瘤が破裂すると、独特な臭いを発します。
通常は痛みを伴いませんが、細菌感染を起こすと赤く腫れ痛みを伴います。化膿すると悪化する場合もあるため注意しなければいけません。
粉瘤は、指だけではなく全身にできるできもので、顔・首・背中・耳の後ろにできやすいと言われています。
たこ(胼胝)
たこは、皮膚が外的刺激を受けることで角質が増殖し分厚くなります。医学的には胼胝(べんち)と呼ばれます。足の甲にできる「正座たこ」や、手の指にできる「ペンだこ」など、身体のさまざまな部分にできます。
通常は痛みを伴いませんが、炎症を起こすと赤く腫れ、痛む場合があります。
うおのめ(鶏眼)
うおのめは、直径5~7mm程度の硬い角質の塊です。中心部分に芯ができ、魚の目のように見えることが名前の由来ですが、医学的には鶏眼(けいがん)と呼ばれます。
中心の芯が皮膚にめり込むことで神経が圧迫され、痛みを伴います。大きくなる可能性があるため、早めに治療することが望ましいできものです。
指にできる悪性のできものの種類
指にできる悪性のできものの種類を紹介します。悪性のできものの場合、身体の他の部位に転移したり、命に関わる症状がでたりと、危険性を伴うので特に注意が必要です。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)は、悪性腫瘍で皮膚がんの一種で「ほくろのがん」とも呼ばれています。黒色もしくは褐色のしみや、腫瘤が皮膚の表面に現れます。
悪性黒色腫は転移する可能性もあるため、早めに治療しなければいけません。
有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)
有棘細胞癌は、表皮にある層の細胞が悪性化してできる悪性腫瘍で、皮膚がんの一種です。皮膚の表面がかさついて硬くなり、盛り上がったりしこりができたりします。有棘細胞癌は、基底細胞癌に次いで2番目に多く見られる皮膚がんです。
皮膚の深い部分に浸潤するとリンパ節に転移する可能性があり、最悪の場合、死に至る可能性もあるため放置してはいけません。表皮内にとどまっている間に切除すれば完治します。
指のできものの治療方法
上記で紹介した指のできものの治療方法は以下のとおりです。
できものの種類 | 治療方法 |
---|---|
いぼ | 液体窒素による冷凍凝固療法 |
ガングリオン | ・注射器で吸引 ・症状が繰り返す場合は外科手術 |
腱鞘巨細胞腫 | 外科手術 |
粉瘤 | 外科手術(くり抜き法・切開法) |
たこ | 専用の医療機器で患部を削り取る |
うおのめ | ・軟膏で芯を柔らかくした後、芯の根元から切除 ・液体窒素による冷凍凝固療法 |
悪性黒色腫 | 症状の進行度によって異なる (外科手術、リンパ節の生検、化学療法など) |
有棘細胞癌 | 病状の進行度によって異なる (外科手術・凍結療法・放射線療法・化学療法など) |
指にできものができたら何科を受診すべき?
指にできものが出来た場合、形成外科または皮膚科を受診しましょう。
外科的治療を必要とするできものの場合は、外科手術を得意とする形成外科がおすすめです。形成外科は、治療後の傷跡を目立たなくする技術に優れています。再発を繰り返しているできものや、薬で改善が見られないもの、根治させたいできものなどは形成外科が望ましいでしょう。
一方、皮膚科は内服薬や塗り薬を用いて治療することを得意としています。そのため、薬で改善される症状であれば、皮膚科を受診しても問題ありません。ただし、手術が必要なできものでも外科手術は優先されないことを覚えておきましょう。
指にできものができた際の注意点
指にできものができた際の注意点を3つ紹介します。
基本的にできものは自然治癒しない
基本的に、できものは自然治癒しません。放置していても問題ない良性の腫瘍の場合もあれば、悪性腫瘍の可能性もあるため注意が必要です。
気になるできものを見つけた場合は、早めに病院を受診することをおすすめします。放置していても問題ないか医師に相談してください。
できものの種類によって再発する可能性がある
できものは、完全に除去しなければ再発の可能性があります。1番してはいけないことは、自分で処置することです。感染症を起こし悪化するおそれがあるため、触らないようにしましょう。
再発を繰り返している場合は、外科手術で根治させることをおすすめします。
治療方法によって痛みを伴う場合がある
外科手術や凍結療法の場合、治療中や治療後に痛みを伴う場合があります。特に、手の指は敏感な部分なので、比較的痛みを感じやすい部位です。
術後の痛みが不安な方は、痛み止めを処方してもらいましょう。治療箇所に触れたり、突っ張ったりすると痛みを感じやすいため、術後は触らないようにしてください。
まとめ
手足の指にできるできものには、放置していると大きくなるものや自然治癒しないものなど、さまざまな種類があります。悪性腫瘍の可能性もあるため、まずは病院を受診することをおすすめします。
当院は、傷口が目立たない外科手術を得意としています。日帰り治療が可能なので、指に気になるできものがある方はご相談ください。
院長紹介
日本形成外科学会 専門医 古林 玄
私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。
がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。
この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。
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