顔面にできた粉瘤の治療 日帰り/くり抜き法
顔の粉瘤手術の紹介をします。動画も最後にありますので苦手でなければ観てください。
顔も比較的、粉瘤の出来やすい部位です。皮膚は頭の先から足の先まであり、人体最大の臓器ともいわれています。皮膚についてはまた今度、詳しく解説しますが、皮膚は垢を出したり、脂を出したり、汗を出したり、毛髪を生やしたりと、毎日たくさんの老廃物を出します。美容外科の高須先生は『皮膚は肛門です』と斬新なことをおっしゃっていましたが、私も本当にその通りだと思います。
皮膚自体は化粧水などで何か栄養を吸収させれるようなところではありません。常に老廃物を出しており、自然に体の外に出るようになっています。しかし、肌のターンオーバーの遅れがあると肌に老廃物が詰まってしまいます。詰まった老廃物をヒトは吸収することは出来ないため、炎症を起こして、皮膚を破壊します。その結果、老廃物がやっと外に出ることになります。
しかしその際に肌を強く破壊してしまうため、傷跡が残ったり、色素沈着が残ります。
一番大事なことは老廃物を上手に出せるような肌を作る事になります。これについても、今度まとめようと思います。
顔の皮膚は比較的多くの老廃物を出す部位であるため、ニキビや粉瘤などが出来やすくなります。そしてニキビも炎症を起こすと大きく腫れあがり、炎症後にはしこりが残るため、よく粉瘤と間違えて来院される患者様も多くいます。しかし、ニキビが悪化して繰り返している場合には切除をすることもあります。皮膚の老廃物を出す能力が炎症により壊れてしまい、結果的に粉瘤のように老廃物をためて粉瘤のように炎症を更に繰り返します。その際にはしっかりと壊れた皮膚を切除することがあるため、切開により切除することが多くなります。炎症を繰り返す前に何らかの手を打つことが大事になります。
今回の症例は今まで腫れたこともない症例であるため、比較的摘出しやすい症例でした。
局所麻酔を行い、3mmパンチを使用し、皮膚に穴をあけます。
しっかりと中身を絞り出し、粉瘤の袋を小さくします。
小さくなった袋を取り出すことで3mmの穴から腫瘍を取り出すことが出来ました。
創部を縫合し、手術を終了しています。
顔は人に見られる部位でもあるため、出来るだけ小さな傷で取る事を意識しなければいけません。くりぬき法は炎症の起こっていない腫瘍には非常に有用なやり方になりますが、何度も炎症を繰り返してしまうと、切開法による手術を選択することもあります。また4㎝を越えた症例でも切開を考えなければいけません。
もう一つの考え方としては再発覚悟で小さい穴から腫瘍を取り出し、再発してしまった場合に、また小さい穴から腫瘍を取り出す方法です。顔などで大きな腫瘍ができてしまい、どうしても傷を小さくして、腫瘍を取りたい場合には選択の一つになるかと思います。診察の際に手術方法についてはそれぞれの患者様に一番適した方法を紹介させて頂きますのでお気軽にご相談ください。
形成外科専門医 古林玄
耳にできた粉瘤(アテローム)の治療 日帰り/切開法
耳裏に出来た粉瘤の摘出について解説します。最後に動画も貼り付けていますので苦手でなければ観てください。
耳は粉瘤の比較的出来やすい場所です。
耳の周りは脂腺が多く、たくさんの脂が出ます。体質にもよりますが男性に多い傾向にあります。
また耳はヒトのカラダの部位でも特に立体的な部分でもあり、老廃物が溜まりやすいことも原因になります。耳の裏面から頚部にかけてが特に粉瘤が出来やすい部位になります。
耳の皮膚は薄いため、背部のように皮膚の下でこっそりと大きくならずに、浅い皮膚の下で大きくなるため、比較的大きくなった際にすぐに見つけられます。
大きくなると皮膚を拡張してしまうため、くりぬき法で皮膚を残して摘出すると、皮膚が余り、術後に形態が悪くなってしまいます。
そのため、皮膚の浅い部位である程度大きくなってしまった粉瘤は切開により余剰皮膚を切除しながら、腫瘍の摘出をする必要があります。
そのため、余剰皮膚をある程度計算に入れながら切開ラインをデザインします。デザインを行い、消毒をした後に局所麻酔を打ちます。耳は元々鈍感な部位であるため、比較的麻酔の痛みも少なく手術ができます。
メスで切開を行い、腫瘍の周囲の剥離を行います。
今回の症例では粉瘤の開口部は表側にあったため、表の開口部を2㎜パンチでくりぬき、表側は出来るだけ傷が目立たないように処理しています。開口部は必ず切除しないと再発してしまうので、術中によく確認しなければいけません。しかし、炎症を繰り返している時には開口部が行方不明になることもあり、再発の要因になることもあります。また、元々開口部がない症例もあります。
開口部を摘出できたところで、腫瘍を摘出します。
腫瘍を摘出した後は創部の止血を確認します。術後に出血があると創部内に血腫ができるため、注意が必要になります。血腫が出来ると感染の原因になったり、傷の治りが遅れたりするため、創部に大きな空洞(死腔)が出来る場合にはドレーンという管を挿入する場合もあります。
また術後に運動をすることで血圧が上がり、血が出ることもあるので基本的には術後は安静が必要になります。心臓にステントが入っている患者様はバイアスピリンなどの抗凝固剤を飲んでいる場合があるため、血腫の可能性が上がってしまいます。小さな腫瘍を摘出する場合にはそのまま当日手術をすることが出来ますが、大きな脂肪腫を摘出する場合などにはバイアスピリンを術前に中止する必要がある場合もあります。
十分に止血を確認後に創部の縫合を行います。
術前に余剰皮膚をある程度は計算しますが最終的には微調整が必要になります。耳の裏側でも皮膚が薄い部位は術後にドッグイヤーが目立つこともあるため、皮膚を調節しながら縫合します。結果的には傷は長くなってしまいますが、腫瘍により皮膚の緩みがある部位は比較的、綺麗に治癒することができます。
基本的に抜糸は約1週間後としています。糸を長く放置してしまうと、細い糸でも糸の痕が残ってしまいます。
そして、術後は軟膏処置をしっかりして頂いています。術後に軟膏が塗れていないと糸がバイ菌の感染源になり、炎症により傷痕が残りやすくなります。術後の1週間は傷が治る上では1番大切な時期であるため、炎症を起こさずに治癒させることが非常に大事になります。
抜糸後はテープ固定とヒルドイドによる処置を1ヶ月から3ヶ月の間していただいています。
一般的な傷の治癒として術後1ヶ月は傷は硬くなり、3−6ヶ月かけて少しずつ柔らかくなります。意外に傷が治るのには時間がかかってしまいます。
また今度、傷の治癒についてもブログをアップさせてもらいますね。
形成外科専門医 古林玄
粉瘤のエコー所見について東京(新宿)の専門医が徹底解説
今日は粉瘤のエコー所見について説明します。
エコーは腫瘍を見極める上で非常に有用な検査になります。当院では皮膚に様々な腫瘍を持った患者様が来院されます。見ただけで腫瘍の種類が分かる患者様もいらっしゃいますが、皮膚の下に出来た腫瘍では見ただけで腫瘍の診断をすることは出来ません。そのためエコー検査を使用した診察が必要になります。
エコーとは超音波というヒトが聞くことを目的としない音を利用しています。音の高さは周波数で表され、単位はヘルツです。ヒトの聞こえる音は20Hz〜20k Hzですが、エコー装置で使われる音の範囲は2M Hz〜14M Hzと非常に高い音になります。音響インピーダンスという組織固有の超音波に対する特性、周波数の違いを利用して、皮膚の下の組織を表していきます。
エコーはシコリにプローべを当てるだけの非常に簡単な検査になりますが、検査者の習熟度により結果に大きな影響を与えます。検査者は基本的知識を十分に把握し、正確な病変や評価を行わなければなりません。
大学病院など大きな施設では検査を資格を持った技師さんにお願いしていることも多く、不慣れな先生も沢山います。しかし、小さな病院やクリニックではドクター自身がエコーを当て、しっかり診断した上で手術に望む必要があります。
腫瘍自体は本当に無数にあるため、エコーだけで診断することは出来ない場合もあります。その場合にはCTやMRI検査を加え、手術可能なのか全身麻酔が必要なのかの判断を行います。そして手術を行い、病理検査により確定診断に至ります。
粉瘤はよく見る腫瘍ですが、血管腫や石灰化上皮腫、脂肪腫、皮膚線維腫などと間違えやすく、やはり術前のエコーが非常に重要になります。開口部が明らかで、小さな粉瘤の場合には簡単な診察のみで手術を行いますが、開口部がなく、大きな腫瘍の場合には他の腫瘍を除外する必要があります。
粉瘤の主なエコー所見です。
①内部エコー不均一
②微細な高エコースポット
③血流なし
④外側低エコー領域あり
⑤後方エコー増強
と以上のような所見が挙げられます。
しかし、実際に診療をしてみると炎症がある場合では全く別のエコー所見を呈します。様々な知識を持った上で手術の適応があるかを判断する必要があります。
最近では携帯型エコーなどエコーもスマホのよう容易に使用することができ、非常に便利になってきています。しかし解像度では大きなエコーには負けてしまうので、難しい症例では大きなエコーで診察する場合もあります。
形成外科専門医 古林玄
背中にできた粉瘤の治療 日帰り/くり抜き法
背部の粉瘤の摘出です。
大きさは3.5㎝程あります。皮膚の浅い部位に出来たため、大きく膨らんでしまっています。約3,4年前から腫瘍を認めていましたが、大きくなるまで放置していました。
大きくなると、袋がなんらかの形で破れてしまい、異物反応が始まります。それが炎症です。
炎症が起こると3つの嫌な事が起こります。
➀術後の再発率が上がる
➁傷跡が残りやすい
③麻酔の際に痛みが強い
炎症時の術後の再発率が上がる理由は開口部が行方不明になったり、炎症が袋の破れた真上を中心に出来るため、開口部とは離れたところに新しく穴が開いてしまう事が挙げられます。意外にもこの事を知らずに手術してしまう形成外科の先生も多いため、再発率があがってしまいます。なので炎症の際にはかなり経験が問われます。炎症の時には開口部がほとんどの場合でズレていることを強く意識しなければいけません。
傷跡が残る理由は炎症の強さと程度がそのまま色素沈着や傷跡になってしまうからです。強くダメージを受けた皮膚はそれだけ強く治ろうとするため、硬く、ひきつれて治ります。体質や場所によってはケロイドになってしまう事もあります。炎症を早く治めるためにも早めに手術をすることが大事だと考えています。炎症が治まってから手術をすることが一般的とはされていますが、抗生剤はあまり効かないことが多く、炎症が進行し、皮膚に穴を開けて、大きな傷跡になってしまう事も多々あります。切開排膿のみの場合でも中に老廃物は沢山残っているため、炎症はなかなか治まりません。毎日洗浄処置という辛い処置が待っています。
炎症の際に麻酔が効かない理由は炎症により㏗がずれることだと言われています。そのため、麻酔薬が広がらず、効きにくくなります。また、炎症により体は緊急事態宣言を発令するため、痛み物質を大量に放出します。そのため、少し触られるだけでも痛くなります。
話はズレましたが症例を紹介します。今回の症例は大きいですが、炎症のないピュアな状態で非常にシンプルで簡単に手術を行う事ができました。
これは局所麻酔をした後の画像です。
局所麻酔にはボスミンが入っているため、血管収縮作用により皮膚の血流が止まり、組織が白くなっています。
局所麻酔にボスミンが入っている理由は
➀血管収縮作用により、術中の出血を減らせる
➁組織の血流を止めることにより、麻酔薬が長く留まり、持続時間が伸びる
③麻酔薬には極量といって使用できる量が体重で決まっているのですが、そこに長く麻酔薬が留まることにより、極量が増やすことができます。
これらも意外に知らずに麻酔を使用している先生も多いですが、非常に重要なポイントになります。また当院では麻酔の痛みを和らげるためにメイロンを混ぜることで、phを調節し、体への負担を軽減しています。
中身の老廃物を排出することで袋を小さくしています。
それにより小さな穴から、袋を取り出すことが出来ます。
袋の切除画像です。
創部の縫合です。粉瘤が大きくなってしまい、皮膚の余剰はありますが、これくらいなら時間とともに皮膚は目立たなくなります。
耳などの皮膚の薄い場所では余剰皮膚を同時に切除しないと、皮膚のたわみが術後に出てしまうため、注意が必要になります。
動画も載せておきます。
形成外科専門医 古林玄
お尻にできた粉瘤の治療/痛み症状あり
10㎝大の臀部(お尻)の粉瘤です。
10年以上放置していたそうですが、粉瘤は少しずつですが確実に大きくなってしまいます。
かなり大きな粉瘤になりますので、くりぬき法では困難になります。
くりぬき法でも取れなくはないのですが、長年皮膚が伸ばされてしまっているため、小さな傷で取った際に、余剰の皮膚が出てきてしまい、皮膚のたわみが出てきてしまいます。
太った人が痩せた時に弛むのと同じ状況ですね。
なので今回は切開法を選択しました。
切開法では余剰皮膚を考慮して、紡錘形の切開ラインをデザインします。丸く切るとdogearと言うものが術後に出来てしまい、切開部位の両端に犬の耳のような盛り上がりが出来てしまいます。
そのため、切開ラインは腫瘍よりも長くなり、15㎝程になってしまいました。
術中の写真です。
腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍の摘出を行います。この症例では癒着はそこまでありませんでしたが、大きいため、底部の剥離がやはり困難でした。一度腫瘍をやぶり、腫瘍を小さくしてから摘出するのも一つですね。今回は一塊の摘出にこだわりましたが、特にこだわる必要はないと考えています。形成外科では袋を破らない事にこだわる先生が何故か非常に多いですが、傷を小さく腫瘍を切除するなら袋を破り、中身を取り出すことは必須です。中身を除去し、腫瘍を小さくすることで、裏面の剥離が容易です。袋を破らないことで、皮下組織との境界が分かりやすくはなりますが、あまりメリットはないです。
今回の症例では余剰皮膚の切除が必須になり、どうしても傷が大きくなってしまうため、敢えて袋を破らずに切除しました。
大きな腫瘍が取れました。
取るのも大変ですが、大きい腫瘍はここからが大変です。
それは創部の縫合です。腰に近いため、動きやすい部分でもあるため、しっかりと皮下縫合を加え、閉創する必要があります。簡単そうに見えますが、非常に時間がかかります。
傷の縫合は形成外科専門医の先生でも意外に適当な先生も多いです。
特にいい師匠に出会ってない場合や、医局によってはかなり縫合の上手さに差があります。
傷を丁寧に縫うことで保険点数が上がるわけでもないので、そこは形成外科自身のこだわりになる事が多いですね。
がん研有明病院や聖路加国際病院で、上司の先生に恵まれたので、非常に沢山の事を教えていただきました。縫合もちゃんと自信がついたのは形成外科をして4年目くらいからかもしれません。
偉そうに言いましたが私もまだまだ勉強中です。
動画も最後に載せておきますので、手術に興味のある人は観てください。苦手な人は控えて下さいね。
形成外科専門医 古林玄
耳のケロイド治療/日帰り治療
東京院で耳のケロイドの手術を行いました。約2cm大とかなり大きいサイズのケロイドでした。
耳のケロイドと粉瘤は別物ですが粉瘤と間違えて来院される患者様も多く、毎日2〜3件は手術を行っています。もちろん当院では粉瘤だけ取っているわけではなく、腫瘍全般の摘出を行っていますので当日日帰り手術で対応させて頂いております。保健診療での治療が可能です。
ケロイドとは
まずケロイドとは火傷やニキビの炎症、外傷から線維芽細胞がコラーゲンを作り、過剰に増殖することにより健常組織を侵食します。
場所によって出来やすいところや、体質によって出来やすい人がいます。特に胸の中心、肩、下腹部など動かす場所や皮膚の緊張が強い場所に出来やすいです。傷が治る時に過度な緊張が掛かると皮膚は過剰な治癒を行いケロイドになってしまいます。
体質もかなり関係しています。白人のような皮膚の柔らかい人種では出来にくい傾向にありますが、日本人のようなアジア人である黄色人種は皮膚の緊張も強く、ケロイド体質を持っている人が多いです。極端な体質の人では少し掻いただけや、ニキビが出来ただけでケロイドになってしまいます。日本人の1割くらいがケロイド体質を持っているとも言われています。
盛り上がっているくらいいいかと思う患者様もいらっしゃいますが、ケロイドには痛み、痒みが伴うため、日常生活に支障をきたす方もおられます。
耳のケロイドはほとんどがピアスが原因になります。金属アレルギーや傷により炎症が持続すると皮膚は頑張って治そうとします。それがきっかけで過剰な治癒が起こり、放っておくと大きなケロイドになってしまいます。
ピアスを付けて赤くなっても、その赤みを逆にピアスで隠そうとすることが多く、炎症が持続する傾向にあります。そのため、ケロイドが出来てしまうため、赤くなった際には出来るだけ早くピアスをやめる必要があります。
耳のケロイドの治療
基本的にはケロイドは手術をしても再発したり、悪化してしまう場合もあります。手術の侵襲が原因になることがあるからです。
但し、耳の場合にはピアスによる持続的な炎症という別の原因が加わってできるため、手術によって切除することで治療することができます。
但し、やはり再発も考えて術後の対応をする必要があります。
それが術後の圧迫です。
そもそもケロイドは基本的には圧迫に弱いです。過剰な治癒も圧迫し酸素を減らすことで成長できなくなります。腹部のケロイドでも下着のゴムの力でその部位を圧迫することでケロイドが軽度で済む場合もあります。
胸部や肩などは圧迫が難しいですが、耳は圧迫用のイヤリングを使用することで簡単に圧迫処置することが出来ます。なので当院では2週間後から圧迫用のイヤリングを使用し、3ヶ月間の圧迫を続けています。
ネットでの購入が可能です。
手術は耳の形態を考えながら行う必要があり、粉瘤よりも難しくなります。
耳は他の部位に比べて立体的な部位でもあるので皮弁作成術や、Z形成術、W形成術を利用し、手術を行います。また問題となるのがケロイドが健常組織を侵食してしまっているところが難しさの原因になります。耳は複雑な形態をしているため、過剰にケロイドを切除してしまうと、形態も維持できず、耳たぶなどは小さくなってしまう場合もあります。
コツとしては一部のケロイドを残しながら、ケロイドを利用しながら形態を整えることになります。一度で綺麗に形が整わないこともありますが、取りすぎは絶対に注意なので、修正として2度手術することもあります。またやはり再発もあるためリザベンを内服してもらうこともあります。
リザベンはアレルギーを抑える薬でもありますが、傷の治りはアレルギーの反応に近いこともあり、炎症を抑え、ケロイドの痒みも改善します。しかし魔法の様な薬ではないので効果としては気持ち程度のこともあります。
ケナコルトの注射
ケナコルトはステロイドを含む製剤で炎症を抑えたり、コラーゲンの産生を抑えて、ケロイドの赤みの改善、痒み、盛り上がりの改善を見込めます。約1ヶ月ごとの注射で効果が出ますが、効果は強過ぎることおり、周囲が凹んだり、血管拡張が見られたりするので、注意深く打つ必要があります。また、完全にケロイドが消えるわけではなく、痕も残るので、耳は手術をお勧めします。
胸部や肩のケロイドでは再発の可能性も高いため、ケナコルトの注射の方が効果的かと思います。やはり全く綺麗になるわけではないですが、盛り上がりや、痛み、痒みの改善が見込めます。
形成外科専門医 古林玄
デリケートゾーンの粉瘤(しこり、できもの)治療について専門医が徹底解説
女性の股に出来るしこりやデキモノの中で女性特有の粉瘤があります。
それが女性のデリケートゾーンに出来る粉瘤です。
当院では毎日のように女性の股の部位の粉瘤(しこり、できもの)手術を行っています。それだけ沢山の女性の患者様がこの部位の粉瘤で悩まされています。
女性はデリケートゾーン部の分泌腺が多く、男性よりも皮膚に老廃物が溜まりやすく、しこりができてしまいます。特に下着で擦れたり、内股で歩く女性が多いため、角質が肥厚し、老廃物が溜まってしまいます。
人間は皮膚の中に老廃物が溜まると、炎症を起こして外部に出そうとします。ニキビも同様です。皮膚は扁平上皮という組織で出来ており、垢や汗、油などの老廃物を今日も明日も明後日も死ぬまで出し続けます。人間は自分で作った老廃物ですが吸収することができないので、上手に排泄出来ない場合に炎症を起こし、皮膚に爆弾を投げ、穴を開け、老廃物を出します。
特に股の部位は皮膚が薄いため、炎症が大きく波及し、腫れあがります。その際は激痛のため、座ることもままならなくなります。
元々は小さな粉瘤ですが、何度も炎症を繰り返すと、破壊と治癒が繰り返し、瘢痕となります。皮下でばい菌の巣のようなものが出来てしまうと広い範囲で切除する必要も出てきます。小さな間は小さく腫瘍を摘出することができます。
予防
上手く老廃物を排泄出来ない理由は肌のターンオーバーの遅れや、擦れることでの角質の肥厚などが挙げられます。
角質が肥厚すると、分泌腺に蓋が出来てしまい、溜まってしまいます。
予防としては下着を擦れにくいものに変えることや、ピーリングを行うことで角質を除去します。私は患者様にピールバーによる角質除去を勧めています。値段も安く、毎日のケアとして長く使用することができます。一度ピーリングをすれば終わりではなく、継続することが非常に大事になります。その他にも予防法や対策はありますのでお気軽にご相談ください。
形成外科専門医 古林玄
東京での粉瘤治療 くりぬき法/切開法について専門医が徹底解説
粉瘤の取り方いついて動画で解説しています。
主な粉瘤の取り方はくりぬき法と切開法に分かれます。
くり抜き法
生検用パンチを使用し、手術をします。そのため、小さな傷から大きな粉瘤をとることが出来ます。
生検用パンチで粉瘤の開口部から腫瘍にアプローチを行い、粉瘤の中身を取り出します。中身は主に皮膚の老廃物です。
中身を除去することにより腫瘍自体が小さくなるため、小さな創部から腫瘍を取り出します。その結果、小さな傷から腫瘍が摘出出来ます。傷も目立ちにくくなります。
しかし、手術自体は難しくなるため、再発のリスクが上がってしまいます。
主に顔などの人目につく部位や炎症が何度も起こっていない部位で適応になります。
何度も炎症を繰り返している症例でも手術は可能ですが、粉瘤の原因の範囲が広がってしまったり、瘢痕で硬く、ケロイドになっている場合には切開法の方がよいこともあります。
切開法
- 切開法を極端に嫌がる患者様もいらっしゃいますが、切開法もとても良い手術法ですし、炎症を何度も繰り返したり、再発を繰り返している症例には適応になります。
特に鼠径部や耳の裏、腋窩、臀部の炎症を繰り返している症例ではよく使用する方法です。
女性の股の部分、耳の裏、腋窩では分泌腺自体が多くなり、一部を切除するだけでは繰り返す場合が多くなってしまいます。そのため、出来るだけしっかりと原因の部分を切除し、今後、炎症が繰り返さないようにすることが必要になります。
炎症を繰り返すと、皮膚が肥厚し、分泌腺から老廃物の排出が難しくなるため、更に炎症を繰り返してしまうこともあります。いわゆる炎症のスパイラルが起こります。
そうなると耳周囲の皮膚全体を切除したり、股の広い範囲を切除することになり、傷痕も残しやすくなります。
形成外科専門医 古林玄
頭にできた粉瘤の治療 外毛根鞘性嚢腫/くり抜き法
今回は東京院の症例です。
頭部に粉瘤ができ、大きくなり過ぎて一部ハゲができてしまっています。腫瘍事態が毛根に影響を与えてしまい、毛根が死滅しています。腫瘍切除する事で一部の毛根から毛が生えることはありますが、長い期間が経ってしまうとハゲになってしまいます。
更に炎症が起こってしまうと、毛根は更に死滅してしまい、禿髪の範囲が広がります。炎症の程度や期間によって毛根が残るかは変わってきますが、炎症前の切除が非常に大事になります。
今回はハゲてしまっている部位の切除を行いました。更に小さな傷から腫瘍切除は可能でしたが、術後に毛髪のない部位が残ってしまうので、大きく切除しています。
切除した組織です。袋の中身は水分も含まれており、一部漏れ出てしまっていますが、皮膜を丸ごと摘出しています。
腫瘍は4cm大であったため、腫瘍切除部位には死腔という空洞が出来てしまいます。術後に血腫が溜まってしまう可能性もあるため、16Gサーフロー(点滴用に使用する管)を挿入し、創部は圧迫します。
基本的には毛に隠れて術後から傷はそんなにも目立ちません。
術後は1ヶ月から3ヶ月で創部周囲の毛髪も生えてくるため、更に傷は気にならなくなります。
また炎症が起こっている症例では炎症により毛根が死滅してしまっているが、手術時には毛髪だけが残っている場合もあるため、術後から毛がない部位も出てきてしまうことがあります。術後に創部がハゲてしまった場合には再度毛髪のない部位を切除することによりハゲをなくすこともできます。あまりにも毛のない範囲が広い場合には植毛になることもあります。少なくとも術後3ヶ月は様子を診てから手術を考慮するべきだと考えます。
形成外科専門医 古林玄
炎症性の粉瘤治療について専門医が徹底解説
背部の炎症性粉瘤です。
この症例では既に皮膚の破壊が起こり中身が出てきてしまっています。
カラダは自分の中に異物があると何とかそれを除去しようと、異物反応を起こします。感染によって炎症が起こっていると考える先生が多数ですが、実は異物反応がほとんどだと言われています。
粉瘤は言い方は少し悪くなりますが、ゴミが綺麗なゴミ袋に包まれている状態です。粉瘤のある部位がどこかにぶつかったりして、ゴミ袋が破れると、カラダの中にゴミが撒き散らされます。その時にカラダは汚いもの皮膚の中にあるので、びっくりして異物を除去しようとします。それが異物反応です。その際に炎症を起こし、皮膚に穴を開け、ゴミを排除しようとします。皮膚に穴を開け、膿を出し終わると一度は炎症はおさまりますが、まだゴミ袋は残った状態なので再度大きくなってきます。炎症のせいで痛みを伴い、色素沈着を残し、傷跡も大きく残ってしまいます。
また更に問題なのは炎症で皮膚に穴が開いた場合に、粉瘤の原因となっている開口部とは全然違う部位に穴が開いてしまうという点です。ほとんどの場合でこれがズレてしまっているため、炎症のある部位からゴミ袋を除去すると原因が除去できずに再発してしまいます。
これは実は形成外科専門医でも分かっている先生が少ないために、炎症の際に手術をすると再発しやすいと言う問題が起こってしまいます。
手術の際によく確認すれば開口部が見つかるので注意深く検索する必要があります。ただそれでも開口部が見つからない場合もあります。
今回の症例では青線の部位が実は開口部になります。
富士山で例えると頂上から噴火せずに、横から噴火した状態です。
歴史的にも必ずしも頂上ばかりから噴火するわけではないみたいですね。
話はズレてしまいましたが、炎症すると痛み、再発、傷跡のリスクが上がってしまうので、炎症する前に対応することが大事です。
また炎症しても抗生剤はほとんど効かないことが多いので出来るだけ早く手術で対応する方が炎症を早く治めることができ、痛みは早く改善し、傷跡も小さくできます。
基本的には切開排膿を勧めるドクターが多いですが、中のゴミやゴミ袋が取りきれてないため、なかなか炎症は治りません。ドクターが忙しいせいもあって、切開排膿のみで済ませてしまうこともあります。そして切開排膿のみの場合は毎日、外来に通院して激痛の外来処置が待っており、地獄の日々が続きます。
当院では出来るだけ炎症が起こっている場合には当日手術で対応させて頂いています。手術した日から炎症は治り、抜糸までは特に外来通院は必要ありません。血腫などの合併症はありますがその都度対応させて頂きます。
痛くなったらお早めに相談して下さい。
今回の症例の術後写真です。
炎症後のため、綺麗ではありませんが、中に血腫ができると感染の可能性もあるため、傷は軽く寄せておくくらいに留めています。感染が強い場合には創部を開けたままの場合もあります。
炎症している傷は炎症していない症例に比べ治癒が遅れますので、お風呂はガーゼに滲出液が付かなくなってからになります。約1週間から3週間掛かりますがシャワーは手術当日から可能です。
形成外科専門医 古林玄