粉瘤と間違えやすい腫瘍【石灰化上皮腫】症状/治療法
今回の症例は石灰化上皮腫です。最後に動画を貼り付けています。
石灰化上皮腫(毛母腫:pilomatorixoma)とは
名前の通り、皮膚の一部に石灰化が起こり硬い石のような塊が出来る良性腫瘍の一つです。毛母腫と言われることもあります。毛根にある毛母細胞を起源とする良性付属器腫瘍です。原因は分かっていませんが、若年者の腕や頸などに発生することが多く、女性に少し多い傾向があります。
症状
皮膚に硬いしこりを触れることで気づきます。基本的には痛みなどはありませんが、押すと痛みが出たり、痒みを感じることもあります。腫瘍が小さい場合には気づかない場合もありますが、大きくなると、皮膚が薄い部位では青黒い色に見えることもあります。カラダの中で作ったられたものになりますが、感染や異物反応を起こすことがあり、その際には痛みや痒みが強くなり、時には皮膚に穴が開いてしまう事もあります。また腫瘍は少しずつ大きくなり、自然になくなることはありません。
診断
診断は主にエコーで行います。皮下に高輝度エコーを認め、その下に音響陰影が見られるのが特徴です。炎症を起こしてしまうと音響陰影が消えてしまう場合があり、診断が難しくなる場合もあります。エコーでも診断できない場合もあり、粉瘤やその他の腫瘍と間違われやすく、手術を行い診断に至る場合もあります。レントゲンを行うことでも確認は出来ますが基本的にはエコーの方が簡便で侵襲もありません。部位によってはCTやMRIを使用する場合もあります。
術後の病理組織は石灰沈着を伴い、核部分が抜けた好酸性細胞集団(shadow cell)が認められます。
治療
外科的切除になります。内服や塗り薬、レーザーなどで治療することはできません。また悪性腫瘍との鑑別が必要な場合もありますので、術後は病理検査にて診断が必要になります。
今回の症例では約2.5㎝程の腫瘍でした。エコーで術前に石灰化上皮腫と判断し、手術を行いました。
石灰化上皮腫は石の塊なので、小さい穴で取り出すことは少し難しくなります。時には小さく穴を開け、石を小さく砕きながら摘出する場合もありますが、皮下に腫瘍が撒き散らされ、すべて取れないこともあります。そのため、その腫瘍が取り出せる範囲の切開を行い手術を行いました。
腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍を一塊で摘出することが出来ました。
炎症が起こっている場合には腫瘍が一部溶けてしまい、摘出しにくくなることがあります。
皮下は空洞になっており、血腫が出来る可能性もあるため、皮下に16Gのサーフローを挿入し、閉創しました。
創部を閉創し、手術を終了としています。
形成外科専門医 古林玄
炎症した粉瘤 の症状/治療について専門医が徹底解説
炎症の起こった粉瘤について解説します。動画も一番下に載せているので苦手でなければ観てください。
今回の症例では炎症によって皮膚に大きな穴が開いてしまっています。粉瘤は皮膚の中に老廃物が溜まっている状態です。老廃物の溜まった袋が壊れると、ヒトは自分で作った老廃物であっても、異物と認識するため、異物反応を起こします。それが炎症です。
炎症はヒトが老廃物をカラダの外に出す方法ですが、その際は皮膚に爆弾を投げた状態になります。爆弾は皮膚だけではなく皮下組織にも影響を及ぼし、色々なものを壊していきます。
そのため、大きな破壊により皮膚が赤くなり、最終的には皮膚に穴が開きます。老廃物を少し出すことができ、炎症は収まりますが、完全には出すことは出来ずまた再発してしまいます。また炎症のせいで、皮膚は大きく傷つけられ、傷跡と色素沈着が大きく残ってしまいます。また頭部など毛髪の生えている部位で炎症が起こると毛根が死んでしまいハゲになってしまう事もあるので注意が必要です。
今回の症例でも炎症で穴が開いてはいますが、中身はすべて出きらずに、中に溜まった状態で炎症が収まり、色素沈着が残った状態になっています。
なかなか難しい症例ですが、開口部を探しながら原因の袋を摘出していきます。
中身を取り出した状態です。ここから袋も摘出していきますが、炎症のせいで、袋の癒着が強く、摘出が非常に困難でした。粉瘤はものによっては取れやすいものと、取りにくいものがあります。特に触らずに刺激がなく、大きくなった症例は皮膜の癒着が少なく、簡単に摘出出来ます。一方で自分でよく触ったり、中身を押し出そうとしていたもの、炎症が何度も繰り返している粉瘤では皮膜の癒着が強く、取りにくくなります。また押し出そうとする行為は炎症の原因にもなるため、注意が必要です。
開口部をが2か所あったため、2か所のくりぬきを行っています。開口部は取らなければ再発してしまうので、出来るだけ摘出する必要があります。
開口部は炎症すると分からなくなることもあります。そして炎症するところは皮膚の開口部ではないということがとても大事なポイントになります。ほとんどの炎症した症例で開口部がずれて、皮膚の炎症を起こします。これを知らない先生も多いので炎症している症例には再発が多くなります。私ももちろん再発させることはあります。
創部の縫合した状態です。炎症した症例は縫わない事も多いのですが、今回はある程度、炎症が収まっているので縫合しています。それぞれの傷の状態によって色々工夫はしていますが、炎症している場合の方がトラブルがどうしても多くなります。
炎症している時の創部は破壊に向かっています。その際に縫合しても傷は寄らずに創部が開いてしまいます。創部を一部開けたりすることで、内部の出血や感染を抑えながら直すことで治療していきますが、治癒には2-3週間はかかる場合があります。
治るのに時間が掛かるせいで、傷跡が残りやすく、場所によってはケロイドが出来ます。破壊が強い場合には傷の過剰の治癒が起こりやすくなるからです。特に胸部、肩の粉瘤はケロイドが出来やすくなるので注意が必要です。また体質も強く影響します。
ケロイドについてはこちらに詳しく載せていますので参照ください。
形成外科専門医 古林玄
首にできた粉瘤治療について/くりぬき法
首の粉瘤提出について解説します。動画は下に載せておきますので苦手でなければ観てください。
今回は約1.5㎝程の粉瘤です。2年程前からしこりが首に触れていたようです。徐々に大きくなり当院へ来院されました。
今回の症例では炎症が過去に起こっていなかったため、非常に取りやすい状態でした。自分でいじってしまったり、ぶつけやすい部位に出来ると炎症が起こってしまうので注意が必要です。
炎症が起きる理由のほとんどは自分でいじったり、ぶつけたりすることで粉瘤の袋が破れ、異物反応を起こすことが挙げられます。炎症を起こすと、痛みが出て、色素沈着と瘢痕を残してしまいます。できるだけ袋を壊さないように生活することが大事なので早く取ってしまう事をお勧めします。
まずは局所麻酔をします。炎症していない症例では表面に少し打つだけで麻酔は効いてしまいます。
今回の症例でも少量ですがもう少し少なくても問題ないでしょう。
パンチを使用し、開口部を含めて切除します。炎症していると開口部が見つからない場合もあるので注意が必要です。
圧迫を行い、腫瘍の袋の中に溜まった老廃物を取り出します。
袋が小さくなったところで腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍を摘出します。
症例により袋が柔らかかったり、丈夫に出来ていたりします。臀部などでは袋が分厚く硬いこともあり、炎症せずに大きくなることが多いです。
首は比較的柔らかく、壊れやすい膜になっています。また炎症すると袋の膜も壊れてしまい、非常に摘出するのが難しくなります。
今回は小さかったですし、炎症も起きていなかったため、簡単に腫瘍を摘出することが出来ました。大きくなったり、炎症が起きると切開法により手術をすることになり、傷跡も目立ちやすくなります。見つけた際には触らずに、大きくなる前に病院を受診することが大事になります。
しこりが気になり、皮膚科を受診して『気にしなくていいよ』と言われて放置した結果、炎症を起こした患者様が当院にも沢山来院されます。手術が苦手な先生や忙しい先生は切除してくれない事も非常に多いため、形成外科を受診することをお勧めします。
形成外科専門医 古林玄
顔面にできた粉瘤の治療 日帰り/くり抜き法
顔の粉瘤手術の紹介をします。動画も最後にありますので苦手でなければ観てください。
顔も比較的、粉瘤の出来やすい部位です。皮膚は頭の先から足の先まであり、人体最大の臓器ともいわれています。皮膚についてはまた今度、詳しく解説しますが、皮膚は垢を出したり、脂を出したり、汗を出したり、毛髪を生やしたりと、毎日たくさんの老廃物を出します。美容外科の高須先生は『皮膚は肛門です』と斬新なことをおっしゃっていましたが、私も本当にその通りだと思います。
皮膚自体は化粧水などで何か栄養を吸収させれるようなところではありません。常に老廃物を出しており、自然に体の外に出るようになっています。しかし、肌のターンオーバーの遅れがあると肌に老廃物が詰まってしまいます。詰まった老廃物をヒトは吸収することは出来ないため、炎症を起こして、皮膚を破壊します。その結果、老廃物がやっと外に出ることになります。
しかしその際に肌を強く破壊してしまうため、傷跡が残ったり、色素沈着が残ります。
一番大事なことは老廃物を上手に出せるような肌を作る事になります。これについても、今度まとめようと思います。
顔の皮膚は比較的多くの老廃物を出す部位であるため、ニキビや粉瘤などが出来やすくなります。そしてニキビも炎症を起こすと大きく腫れあがり、炎症後にはしこりが残るため、よく粉瘤と間違えて来院される患者様も多くいます。しかし、ニキビが悪化して繰り返している場合には切除をすることもあります。皮膚の老廃物を出す能力が炎症により壊れてしまい、結果的に粉瘤のように老廃物をためて粉瘤のように炎症を更に繰り返します。その際にはしっかりと壊れた皮膚を切除することがあるため、切開により切除することが多くなります。炎症を繰り返す前に何らかの手を打つことが大事になります。
今回の症例は今まで腫れたこともない症例であるため、比較的摘出しやすい症例でした。
局所麻酔を行い、3mmパンチを使用し、皮膚に穴をあけます。
しっかりと中身を絞り出し、粉瘤の袋を小さくします。
小さくなった袋を取り出すことで3mmの穴から腫瘍を取り出すことが出来ました。
創部を縫合し、手術を終了しています。
顔は人に見られる部位でもあるため、出来るだけ小さな傷で取る事を意識しなければいけません。くりぬき法は炎症の起こっていない腫瘍には非常に有用なやり方になりますが、何度も炎症を繰り返してしまうと、切開法による手術を選択することもあります。また4㎝を越えた症例でも切開を考えなければいけません。
もう一つの考え方としては再発覚悟で小さい穴から腫瘍を取り出し、再発してしまった場合に、また小さい穴から腫瘍を取り出す方法です。顔などで大きな腫瘍ができてしまい、どうしても傷を小さくして、腫瘍を取りたい場合には選択の一つになるかと思います。診察の際に手術方法についてはそれぞれの患者様に一番適した方法を紹介させて頂きますのでお気軽にご相談ください。
形成外科専門医 古林玄
耳にできた粉瘤(アテローム)の治療 日帰り/切開法
耳裏に出来た粉瘤の摘出について解説します。最後に動画も貼り付けていますので苦手でなければ観てください。
耳は粉瘤の比較的出来やすい場所です。
耳の周りは脂腺が多く、たくさんの脂が出ます。体質にもよりますが男性に多い傾向にあります。
また耳はヒトのカラダの部位でも特に立体的な部分でもあり、老廃物が溜まりやすいことも原因になります。耳の裏面から頚部にかけてが特に粉瘤が出来やすい部位になります。
耳の皮膚は薄いため、背部のように皮膚の下でこっそりと大きくならずに、浅い皮膚の下で大きくなるため、比較的大きくなった際にすぐに見つけられます。
大きくなると皮膚を拡張してしまうため、くりぬき法で皮膚を残して摘出すると、皮膚が余り、術後に形態が悪くなってしまいます。
そのため、皮膚の浅い部位である程度大きくなってしまった粉瘤は切開により余剰皮膚を切除しながら、腫瘍の摘出をする必要があります。
そのため、余剰皮膚をある程度計算に入れながら切開ラインをデザインします。デザインを行い、消毒をした後に局所麻酔を打ちます。耳は元々鈍感な部位であるため、比較的麻酔の痛みも少なく手術ができます。
メスで切開を行い、腫瘍の周囲の剥離を行います。
今回の症例では粉瘤の開口部は表側にあったため、表の開口部を2㎜パンチでくりぬき、表側は出来るだけ傷が目立たないように処理しています。開口部は必ず切除しないと再発してしまうので、術中によく確認しなければいけません。しかし、炎症を繰り返している時には開口部が行方不明になることもあり、再発の要因になることもあります。また、元々開口部がない症例もあります。
開口部を摘出できたところで、腫瘍を摘出します。
腫瘍を摘出した後は創部の止血を確認します。術後に出血があると創部内に血腫ができるため、注意が必要になります。血腫が出来ると感染の原因になったり、傷の治りが遅れたりするため、創部に大きな空洞(死腔)が出来る場合にはドレーンという管を挿入する場合もあります。
また術後に運動をすることで血圧が上がり、血が出ることもあるので基本的には術後は安静が必要になります。心臓にステントが入っている患者様はバイアスピリンなどの抗凝固剤を飲んでいる場合があるため、血腫の可能性が上がってしまいます。小さな腫瘍を摘出する場合にはそのまま当日手術をすることが出来ますが、大きな脂肪腫を摘出する場合などにはバイアスピリンを術前に中止する必要がある場合もあります。
十分に止血を確認後に創部の縫合を行います。
術前に余剰皮膚をある程度は計算しますが最終的には微調整が必要になります。耳の裏側でも皮膚が薄い部位は術後にドッグイヤーが目立つこともあるため、皮膚を調節しながら縫合します。結果的には傷は長くなってしまいますが、腫瘍により皮膚の緩みがある部位は比較的、綺麗に治癒することができます。
基本的に抜糸は約1週間後としています。糸を長く放置してしまうと、細い糸でも糸の痕が残ってしまいます。
そして、術後は軟膏処置をしっかりして頂いています。術後に軟膏が塗れていないと糸がバイ菌の感染源になり、炎症により傷痕が残りやすくなります。術後の1週間は傷が治る上では1番大切な時期であるため、炎症を起こさずに治癒させることが非常に大事になります。
抜糸後はテープ固定とヒルドイドによる処置を1ヶ月から3ヶ月の間していただいています。
一般的な傷の治癒として術後1ヶ月は傷は硬くなり、3−6ヶ月かけて少しずつ柔らかくなります。意外に傷が治るのには時間がかかってしまいます。
また今度、傷の治癒についてもブログをアップさせてもらいますね。
形成外科専門医 古林玄
粉瘤のエコー所見について東京(新宿)の専門医が徹底解説
今日は粉瘤のエコー所見について説明します。
エコーは腫瘍を見極める上で非常に有用な検査になります。当院では皮膚に様々な腫瘍を持った患者様が来院されます。見ただけで腫瘍の種類が分かる患者様もいらっしゃいますが、皮膚の下に出来た腫瘍では見ただけで腫瘍の診断をすることは出来ません。そのためエコー検査を使用した診察が必要になります。
エコーとは超音波というヒトが聞くことを目的としない音を利用しています。音の高さは周波数で表され、単位はヘルツです。ヒトの聞こえる音は20Hz〜20k Hzですが、エコー装置で使われる音の範囲は2M Hz〜14M Hzと非常に高い音になります。音響インピーダンスという組織固有の超音波に対する特性、周波数の違いを利用して、皮膚の下の組織を表していきます。
エコーはシコリにプローべを当てるだけの非常に簡単な検査になりますが、検査者の習熟度により結果に大きな影響を与えます。検査者は基本的知識を十分に把握し、正確な病変や評価を行わなければなりません。
大学病院など大きな施設では検査を資格を持った技師さんにお願いしていることも多く、不慣れな先生も沢山います。しかし、小さな病院やクリニックではドクター自身がエコーを当て、しっかり診断した上で手術に望む必要があります。
腫瘍自体は本当に無数にあるため、エコーだけで診断することは出来ない場合もあります。その場合にはCTやMRI検査を加え、手術可能なのか全身麻酔が必要なのかの判断を行います。そして手術を行い、病理検査により確定診断に至ります。
粉瘤はよく見る腫瘍ですが、血管腫や石灰化上皮腫、脂肪腫、皮膚線維腫などと間違えやすく、やはり術前のエコーが非常に重要になります。開口部が明らかで、小さな粉瘤の場合には簡単な診察のみで手術を行いますが、開口部がなく、大きな腫瘍の場合には他の腫瘍を除外する必要があります。
粉瘤の主なエコー所見です。
①内部エコー不均一
②微細な高エコースポット
③血流なし
④外側低エコー領域あり
⑤後方エコー増強
と以上のような所見が挙げられます。
しかし、実際に診療をしてみると炎症がある場合では全く別のエコー所見を呈します。様々な知識を持った上で手術の適応があるかを判断する必要があります。
最近では携帯型エコーなどエコーもスマホのよう容易に使用することができ、非常に便利になってきています。しかし解像度では大きなエコーには負けてしまうので、難しい症例では大きなエコーで診察する場合もあります。
形成外科専門医 古林玄
背中にできた粉瘤の治療 日帰り/くり抜き法
背部の粉瘤の摘出です。
大きさは3.5㎝程あります。皮膚の浅い部位に出来たため、大きく膨らんでしまっています。約3,4年前から腫瘍を認めていましたが、大きくなるまで放置していました。
大きくなると、袋がなんらかの形で破れてしまい、異物反応が始まります。それが炎症です。
炎症が起こると3つの嫌な事が起こります。
➀術後の再発率が上がる
➁傷跡が残りやすい
③麻酔の際に痛みが強い
炎症時の術後の再発率が上がる理由は開口部が行方不明になったり、炎症が袋の破れた真上を中心に出来るため、開口部とは離れたところに新しく穴が開いてしまう事が挙げられます。意外にもこの事を知らずに手術してしまう形成外科の先生も多いため、再発率があがってしまいます。なので炎症の際にはかなり経験が問われます。炎症の時には開口部がほとんどの場合でズレていることを強く意識しなければいけません。
傷跡が残る理由は炎症の強さと程度がそのまま色素沈着や傷跡になってしまうからです。強くダメージを受けた皮膚はそれだけ強く治ろうとするため、硬く、ひきつれて治ります。体質や場所によってはケロイドになってしまう事もあります。炎症を早く治めるためにも早めに手術をすることが大事だと考えています。炎症が治まってから手術をすることが一般的とはされていますが、抗生剤はあまり効かないことが多く、炎症が進行し、皮膚に穴を開けて、大きな傷跡になってしまう事も多々あります。切開排膿のみの場合でも中に老廃物は沢山残っているため、炎症はなかなか治まりません。毎日洗浄処置という辛い処置が待っています。
炎症の際に麻酔が効かない理由は炎症により㏗がずれることだと言われています。そのため、麻酔薬が広がらず、効きにくくなります。また、炎症により体は緊急事態宣言を発令するため、痛み物質を大量に放出します。そのため、少し触られるだけでも痛くなります。
話はズレましたが症例を紹介します。今回の症例は大きいですが、炎症のないピュアな状態で非常にシンプルで簡単に手術を行う事ができました。
これは局所麻酔をした後の画像です。
局所麻酔にはボスミンが入っているため、血管収縮作用により皮膚の血流が止まり、組織が白くなっています。
局所麻酔にボスミンが入っている理由は
➀血管収縮作用により、術中の出血を減らせる
➁組織の血流を止めることにより、麻酔薬が長く留まり、持続時間が伸びる
③麻酔薬には極量といって使用できる量が体重で決まっているのですが、そこに長く麻酔薬が留まることにより、極量が増やすことができます。
これらも意外に知らずに麻酔を使用している先生も多いですが、非常に重要なポイントになります。また当院では麻酔の痛みを和らげるためにメイロンを混ぜることで、phを調節し、体への負担を軽減しています。
中身の老廃物を排出することで袋を小さくしています。
それにより小さな穴から、袋を取り出すことが出来ます。
袋の切除画像です。
創部の縫合です。粉瘤が大きくなってしまい、皮膚の余剰はありますが、これくらいなら時間とともに皮膚は目立たなくなります。
耳などの皮膚の薄い場所では余剰皮膚を同時に切除しないと、皮膚のたわみが術後に出てしまうため、注意が必要になります。
動画も載せておきます。
形成外科専門医 古林玄
お尻にできた粉瘤の治療/痛み症状あり
10㎝大の臀部(お尻)の粉瘤です。
10年以上放置していたそうですが、粉瘤は少しずつですが確実に大きくなってしまいます。
かなり大きな粉瘤になりますので、くりぬき法では困難になります。
くりぬき法でも取れなくはないのですが、長年皮膚が伸ばされてしまっているため、小さな傷で取った際に、余剰の皮膚が出てきてしまい、皮膚のたわみが出てきてしまいます。
太った人が痩せた時に弛むのと同じ状況ですね。
なので今回は切開法を選択しました。
切開法では余剰皮膚を考慮して、紡錘形の切開ラインをデザインします。丸く切るとdogearと言うものが術後に出来てしまい、切開部位の両端に犬の耳のような盛り上がりが出来てしまいます。
そのため、切開ラインは腫瘍よりも長くなり、15㎝程になってしまいました。
術中の写真です。
腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍の摘出を行います。この症例では癒着はそこまでありませんでしたが、大きいため、底部の剥離がやはり困難でした。一度腫瘍をやぶり、腫瘍を小さくしてから摘出するのも一つですね。今回は一塊の摘出にこだわりましたが、特にこだわる必要はないと考えています。形成外科では袋を破らない事にこだわる先生が何故か非常に多いですが、傷を小さく腫瘍を切除するなら袋を破り、中身を取り出すことは必須です。中身を除去し、腫瘍を小さくすることで、裏面の剥離が容易です。袋を破らないことで、皮下組織との境界が分かりやすくはなりますが、あまりメリットはないです。
今回の症例では余剰皮膚の切除が必須になり、どうしても傷が大きくなってしまうため、敢えて袋を破らずに切除しました。
大きな腫瘍が取れました。
取るのも大変ですが、大きい腫瘍はここからが大変です。
それは創部の縫合です。腰に近いため、動きやすい部分でもあるため、しっかりと皮下縫合を加え、閉創する必要があります。簡単そうに見えますが、非常に時間がかかります。
傷の縫合は形成外科専門医の先生でも意外に適当な先生も多いです。
特にいい師匠に出会ってない場合や、医局によってはかなり縫合の上手さに差があります。
傷を丁寧に縫うことで保険点数が上がるわけでもないので、そこは形成外科自身のこだわりになる事が多いですね。
がん研有明病院や聖路加国際病院で、上司の先生に恵まれたので、非常に沢山の事を教えていただきました。縫合もちゃんと自信がついたのは形成外科をして4年目くらいからかもしれません。
偉そうに言いましたが私もまだまだ勉強中です。
動画も最後に載せておきますので、手術に興味のある人は観てください。苦手な人は控えて下さいね。
形成外科専門医 古林玄
耳のケロイド治療/日帰り治療
東京院で耳のケロイドの手術を行いました。約2cm大とかなり大きいサイズのケロイドでした。
耳のケロイドと粉瘤は別物ですが粉瘤と間違えて来院される患者様も多く、毎日2〜3件は手術を行っています。もちろん当院では粉瘤だけ取っているわけではなく、腫瘍全般の摘出を行っていますので当日日帰り手術で対応させて頂いております。保健診療での治療が可能です。
ケロイドとは
まずケロイドとは火傷やニキビの炎症、外傷から線維芽細胞がコラーゲンを作り、過剰に増殖することにより健常組織を侵食します。
場所によって出来やすいところや、体質によって出来やすい人がいます。特に胸の中心、肩、下腹部など動かす場所や皮膚の緊張が強い場所に出来やすいです。傷が治る時に過度な緊張が掛かると皮膚は過剰な治癒を行いケロイドになってしまいます。
体質もかなり関係しています。白人のような皮膚の柔らかい人種では出来にくい傾向にありますが、日本人のようなアジア人である黄色人種は皮膚の緊張も強く、ケロイド体質を持っている人が多いです。極端な体質の人では少し掻いただけや、ニキビが出来ただけでケロイドになってしまいます。日本人の1割くらいがケロイド体質を持っているとも言われています。
盛り上がっているくらいいいかと思う患者様もいらっしゃいますが、ケロイドには痛み、痒みが伴うため、日常生活に支障をきたす方もおられます。
耳のケロイドはほとんどがピアスが原因になります。金属アレルギーや傷により炎症が持続すると皮膚は頑張って治そうとします。それがきっかけで過剰な治癒が起こり、放っておくと大きなケロイドになってしまいます。
ピアスを付けて赤くなっても、その赤みを逆にピアスで隠そうとすることが多く、炎症が持続する傾向にあります。そのため、ケロイドが出来てしまうため、赤くなった際には出来るだけ早くピアスをやめる必要があります。
耳のケロイドの治療
基本的にはケロイドは手術をしても再発したり、悪化してしまう場合もあります。手術の侵襲が原因になることがあるからです。
但し、耳の場合にはピアスによる持続的な炎症という別の原因が加わってできるため、手術によって切除することで治療することができます。
但し、やはり再発も考えて術後の対応をする必要があります。
それが術後の圧迫です。
そもそもケロイドは基本的には圧迫に弱いです。過剰な治癒も圧迫し酸素を減らすことで成長できなくなります。腹部のケロイドでも下着のゴムの力でその部位を圧迫することでケロイドが軽度で済む場合もあります。
胸部や肩などは圧迫が難しいですが、耳は圧迫用のイヤリングを使用することで簡単に圧迫処置することが出来ます。なので当院では2週間後から圧迫用のイヤリングを使用し、3ヶ月間の圧迫を続けています。
ネットでの購入が可能です。
手術は耳の形態を考えながら行う必要があり、粉瘤よりも難しくなります。
耳は他の部位に比べて立体的な部位でもあるので皮弁作成術や、Z形成術、W形成術を利用し、手術を行います。また問題となるのがケロイドが健常組織を侵食してしまっているところが難しさの原因になります。耳は複雑な形態をしているため、過剰にケロイドを切除してしまうと、形態も維持できず、耳たぶなどは小さくなってしまう場合もあります。
コツとしては一部のケロイドを残しながら、ケロイドを利用しながら形態を整えることになります。一度で綺麗に形が整わないこともありますが、取りすぎは絶対に注意なので、修正として2度手術することもあります。またやはり再発もあるためリザベンを内服してもらうこともあります。
リザベンはアレルギーを抑える薬でもありますが、傷の治りはアレルギーの反応に近いこともあり、炎症を抑え、ケロイドの痒みも改善します。しかし魔法の様な薬ではないので効果としては気持ち程度のこともあります。
ケナコルトの注射
ケナコルトはステロイドを含む製剤で炎症を抑えたり、コラーゲンの産生を抑えて、ケロイドの赤みの改善、痒み、盛り上がりの改善を見込めます。約1ヶ月ごとの注射で効果が出ますが、効果は強過ぎることおり、周囲が凹んだり、血管拡張が見られたりするので、注意深く打つ必要があります。また、完全にケロイドが消えるわけではなく、痕も残るので、耳は手術をお勧めします。
胸部や肩のケロイドでは再発の可能性も高いため、ケナコルトの注射の方が効果的かと思います。やはり全く綺麗になるわけではないですが、盛り上がりや、痛み、痒みの改善が見込めます。
形成外科専門医 古林玄
デリケートゾーンの粉瘤(しこり、できもの)治療について専門医が徹底解説
女性の股に出来るしこりやデキモノの中で女性特有の粉瘤があります。
それが女性のデリケートゾーンに出来る粉瘤です。
当院では毎日のように女性の股の部位の粉瘤(しこり、できもの)手術を行っています。それだけ沢山の女性の患者様がこの部位の粉瘤で悩まされています。
女性はデリケートゾーン部の分泌腺が多く、男性よりも皮膚に老廃物が溜まりやすく、しこりができてしまいます。特に下着で擦れたり、内股で歩く女性が多いため、角質が肥厚し、老廃物が溜まってしまいます。
人間は皮膚の中に老廃物が溜まると、炎症を起こして外部に出そうとします。ニキビも同様です。皮膚は扁平上皮という組織で出来ており、垢や汗、油などの老廃物を今日も明日も明後日も死ぬまで出し続けます。人間は自分で作った老廃物ですが吸収することができないので、上手に排泄出来ない場合に炎症を起こし、皮膚に爆弾を投げ、穴を開け、老廃物を出します。
特に股の部位は皮膚が薄いため、炎症が大きく波及し、腫れあがります。その際は激痛のため、座ることもままならなくなります。
元々は小さな粉瘤ですが、何度も炎症を繰り返すと、破壊と治癒が繰り返し、瘢痕となります。皮下でばい菌の巣のようなものが出来てしまうと広い範囲で切除する必要も出てきます。小さな間は小さく腫瘍を摘出することができます。
予防
上手く老廃物を排泄出来ない理由は肌のターンオーバーの遅れや、擦れることでの角質の肥厚などが挙げられます。
角質が肥厚すると、分泌腺に蓋が出来てしまい、溜まってしまいます。
予防としては下着を擦れにくいものに変えることや、ピーリングを行うことで角質を除去します。私は患者様にピールバーによる角質除去を勧めています。値段も安く、毎日のケアとして長く使用することができます。一度ピーリングをすれば終わりではなく、継続することが非常に大事になります。その他にも予防法や対策はありますのでお気軽にご相談ください。
形成外科専門医 古林玄