耳にできた大きなケロイドの治療/日帰り
今回の症例は耳のピアス後のケロイドです。動画は下に載せています。
耳のケロイドについてはこちらに症例と伴に詳しく載せています。
今回の症例は今まででは一番大きいケロイドでした。
耳垂の表と裏、耳介に約4㎝程のケロイドがあり、耳介の方のケロイドは数か月経過してから手術をすることとなりました。
耳垂も大きく、耳たぶの形態を維持するのが非常に難しい症例でした。
ケロイドは前回の説明部位にも書きましたが、過剰な治癒になります。ピアスの金属に対するアレルギーや異物反応によりカラダはピアスを排除しようとします。炎症を起こし、赤くなりますが、排除が出来ないために、更に炎症を続けます。大体の患者様は赤くなっても、むしろ、それを隠すようにピアスを付けてしまいます。そのため、更に炎症により組織の破壊が進んでしまいます。
その結果、過剰な治癒が起こり、正常組織を塗りつぶすようにケロイドが広がってしまいます。
手術を難しくするのは正常組織がケロイドに置き換わってしまっているという点です。
そのため、ケロイドをすべて切除すると、大きなケロイドであればあるほど形態が変形します。出来るだけ組織を残しながら切除し、形態を整える工夫が必要になります。
耳はカラダの中でも最も形態が特殊で立体的な部位であるため、手術は非常に難しくなります。また手術が上手くいったとしてもケロイド体質が強ければ再発してしまうこともあります。
そのため、術後の圧迫も非常に大事になります。術後の圧迫用にイヤリングが非常に有用です。
今回の症例ではケロイドを一部残して、形態を整えることは非常に困難でしたので、局所麻酔後に耳垂のケロイドを残さずに切除しました。
そのため、縫合にかなり苦慮しました。
シュミレーション後に、一度、横方向に縫合を行い、形態を確認しましたが、耳垂の形態に違和感が出てしまったため、一度糸を外し、縦方向で縫合し直しました。
それでも多少の左右差は出てしまいますが、現状ではこれが限界となります。
大きなケロイドは次回手術となります。
大きいですが根っこの部位は小さいため、形態異常もほとんどなく、手術が可能となると思います。
形成外科専門医
古林玄
首にできた粉瘤の治療/日帰り
今回の粉瘤は頸部の4㎝大の粉瘤です。動画は下に載せています。
炎症もしており、少し取り辛いことを予想して手術を行います。
また頸部は大血管の走行している部位であり注意が必要です。
術前にしっかりとエコーで血流を確認し、腫瘍との位置関係を明確にします。
炎症も強いため、血管との癒着には注意が必要です。
そのため、腫瘍上に小さい切開を加えることで手術を開始しました。
内容物を取り出します。
被膜の剥離を行いますが、やはりかなり癒着が強く、切除が困難な状態になっていました。少しずつ癒着を剥離し、腫瘍を摘出します。
腫瘍を取った内部は大きな空洞(死腔)が出来るため、16Gサーフローを利用したドレーンを作成し、挿入します。血腫予防になります。
ドレーンは問題なければ翌日抜去します。自己抜去も可能です。
翌日ドレーンを抜去してからシャワーが可能になります。
創部は軟膏をしっかり塗布して、一週間後に抜糸となります。
袋はかなり破れてしまいましたが、残りの袋がないか、最後に確認しています。癒着が強かった証拠ですね。
形成外科専門医 古林玄
粉瘤と間違えやすい腫瘍【外毛根鞘性嚢腫】症状/治療法
外毛根鞘性嚢腫とは
ほとんどが頭部にできます。粉瘤と同様に少しずつ大きくなり、被膜が破れ、内容物が皮膚の中で漏出すると異物反応が起こり、炎症が始まります。診察では粉瘤と区別することは出来ません。
病理組織は最外層壁は基底細胞様細胞が棚状配列し, 内層壁は層状構造を示し, 顆粒層がなく、角化を認める。
腫瘍自体はほとんどが良性です。女性に比較的多く、40-50歳代で多くなります。
腫瘍が大きくなると毛根に影響を与えてしまい、毛髪がチヂレたり、ハゲになったりします。炎症した場合には毛根のダメージは大きくなり、大きなハゲを作ってしまう場合もあります。
まれに、悪性腫瘍がみつかる場合もあるので注意が必要です。
原因
粉瘤同様にはっきりとは分かっていません。
診断
エコーにて診断できます。特徴は、皮下に存在する境界明瞭、辺縁整な低~無エコー腫瘤。内部に石灰化を疑う高エコースポットを認める。
炎症が起こるとエコーでの臨床像に変化が起こります。大きい場合にはCTやMRI検査を行う場合もあります。
鑑別疾患
粉瘤、外骨腫、石灰化上皮腫、脂肪腫など
治療
手術による摘出を行います。くりぬき法で摘出することが出来ます。炎症を繰り返す場合には切開による摘出を考慮します。
毛髪が失われている場合には注意が必要です。腫瘍を摘出し、約半年は毛髪の経過を診ます。腫瘍を摘出することで、毛髪が正常になる部位があるからです。それでも生えない場合には再手術を行い、ハゲの部位を切り取ります。そうすることで創部は目立たなくなります。
今回の症例ではくりぬき法で毛髪に影響を与えている部位をくり抜きました。
内容物を圧排し、腫瘍を小さくします。
外毛根鞘性嚢腫の場合には粉瘤に比べると、被膜がかなりしっかりしている場合が多いです。そのため、腫瘍がしっかりと一塊で摘出出来ます。
創部を縫合して手術を終了します。
形成外科専門医 古林玄
デルモイドシストの症状/治療を専門医が徹底解説
デルモイドシスト(dermoido cyst:皮様嚢腫)とは
粉瘤と間違えやすい腫瘍としてデルモイドシストが挙げられます。
デルモイドシストは胎生期の遺残物で目の上、鼻周囲、耳の裏などの骨縫合部などに出来やすく、腫瘍の内容物は黄色の液体(皮脂、角質)と毛髪が貯留している。約半数で出生時より腫瘍を認める。
男女比は特にありません。
汗腺や皮脂腺の発達する思春期に急速増大を認め、その際に見つかることもある。
症状
基本的には特にありません。ぶつけたり触ったりすることで腫瘍の嚢胞が破れると異物反応が起こり、炎症が起きることがあります。炎症が起きると疼痛があり、瘢痕が残ります。
原因
原因ははっきり分かりませんが、発生過程で骨と骨が癒合する際に,外胚葉組織の迷入が生じるためと考えられています。
診断
ほとんどはエコーで診断がつきますが、大きい腫瘍ではCTやMRIを撮影する場合もあります。
鑑別疾患
粉瘤、奇形種、石灰化上皮腫、類表皮腫、神経線維腫、毛髪嚢腫、など
治療
手術による摘出が必要になります。
粉瘤とは違い骨の癒合部位から発生しているため、手術は粉瘤の摘出よりは格段に難しくなります。また、腫瘍は筋層より深くなるため、術後の血腫や神経損傷にも気を付ける必要があります。基本的には切開による腫瘍摘出になります。
小児では全身麻酔が必要な場合もあります。
今回の症例では眉下に切開を加える事で出来るだけ術後の傷跡が目立ちにくいようにします。
腫瘍は眼輪筋の下にあり、少し出血が多くなります。
腫瘍を骨膜の癒着部位から剥離し、腫瘍を摘出します。
腫瘍を摘出し、十分にバイポーラを使用し、止血します。
創部は眉毛下に重なり、毛髪も生えてくるため、傷は目立ちにくくなります。
腫瘍を切開し、中身を確認しました。
内容物はやはり毛髪と皮脂、角質になります。皮脂が黄色く見えています。
成人になるにつれ、どんどん大きくなってしまうため、早期の摘出をお勧めします。大きくなれば大きな切開が必要になります。
形成外科専門医 古林玄
大腿部にできた大きな粉瘤治療/日帰り
今回は16㎝大と非常に大きな粉瘤の症例です。動画は下に載せています。
一度に切除するか悩みましたが、あまりに大きいため、一度に腫瘍を切除せずに粉瘤の内容物を出し、腫瘍が一度小さくなったところで再度切除する方針としました。
一度に手術しなかった理由
大きな腫瘍を一度ですべて切除してしまうと、切開部位が非常に大きくなってしまいます。今回は大腿部であるため、動いてしまうと血腫が出来たり傷が開いてしまうリスクが大きくなります。手術をするにしても入院が必須でしたが患者様の都合もあり、入院が難しいため、日帰りでの手術を希望されました。
また、大きな腫瘍を摘出すると、大きな空洞が皮下に出来てしまいます。それが死腔(dead space)です。ここに術後血腫などが出来やすくなってしまいます。16㎝大の腫瘍を取るとかなり大きな死腔が出来てしまい、また、術後の歩行によりトラブルが起こる可能性が高くなってしまいます。
内容物のみを除去するデメリット
内容物のみを出して腫瘍が小さくなったところで手術することも実はデメリットが存在します。
内容物を残して手術を終えるため、術後に感染をしてしまうことです。また内容物が皮下に漏れ出ることで異物反応が起こり、炎症が起きることもあります。そのため、術後は傷を開けた状態で帰宅してもらい、自宅で洗浄処置を継続してもらうことでしっかりと感染予防を行う必要があります。
感染コントロールがうまくいき、腫瘍が小さくなれば、切除を小さくして手術をすることができます。
2度目の手術は3か月後くらいを予定しています。
経過はまた後日アップします。
形成外科専門医 古林玄
おでこの脂肪腫治療/切開
今回は前額部の脂肪腫摘出です。下に動画も貼り付けています。
粉瘤と間違えて来院する患者様もいらっしゃいますが、脂肪腫は粉瘤とは全く別の腫瘍です。
カラダのどこにでも出来ますが、前額部、肩、後頚部に出来る事が多いです。原因ははっきりとは分かりませんが、脂肪腫には血管脂肪腫(angiolipoma)の良性のものから脂肪肉腫などの悪性のものまで存在します。6cm以上のものや筋肉内にあるものは悪性を考慮して切除する必要があります。
前額部には外骨腫という腫瘍も出来やすく、小さいものでは間違える場合があります。
術前のエコー検査で診断を行い手術を行いますが、エコーに慣れていないと、開けてビックリすることもあります。外骨腫であってもノミとツチさえあれば切除出来るので特に問題はありません。
正確な検査ではCTやMRI検査があげられます。分かりにくい腫瘍の場合には術前に画像検査をする場合もあります。
症例の続きです。
手術はオデコのシワに沿って切開を加えます。
腫瘍の直上に切開を加え、アプローチします。
前額部の脂肪腫で注意することは頭の感覚を支配する神経(眼窩上神経、滑車上神経)を傷つけない事、脂肪腫が前頭筋下にあり骨上にあることです。
腫瘍が神経と絡んでいる場合には、神経を切らないと腫瘍を取れないこともあり、術前に説明が必要になります。
腫瘍は骨上にある事がほとんどなので、慣れていない場合には筋肉上の腫瘍をずっとさがしてしまい、筋肉を大きく傷つけてしまう場合があります。腫瘍が見つけられず、筋肉を切除して終わる先生もいます。
腫瘍を切除した状態です。
創部を縫合し、手術を終了しています。
今回は中縫いだけで創部を縫合しています。
この辺りは形成外科でも賛否両論ありますが、中縫いだけで創部が綺麗にあった場合には、それが一番キレイになるとも言われています。外縫いは中縫いが合わなかったときに補助的に高さを合わせるためでもあるので、創部の高さが合っている場合には必要ないこともあります。また外縫いを強く縫いすぎると糸の痕が残ってしまう場合もあります。線路のような傷跡になります。中縫いだけで創部を合わせるのは高い技術が必要になります。
また吸収糸がいいのか、ナイロンのような吸収しない糸で縫うのがいいのかも答えは出ていません。患者様は吸収糸がいいと思い込んでいる場合もありますし、先生でも吸収糸がいいと考えている先生も多いですが、一概には言えません。これについてはまたお話します。
最後に動画を貼り付けておきます。
形成外科専門医 古林玄
皮膚線維腫の原因/治療について専門医が徹底解説
皮膚線維腫とは
成人女性に多く、腕、大腿部や脚などに現れる硬く隆起性の腫瘍です。時折、痛みや痒みを生じますが無症状な事も多いです。
原因
原因ははっきりしていませんが、虫刺されや外傷に反応して発生することもあります。
治療
基本的には外科的切除になります。大きいものや、増加傾向にあるものは、まれにDFSP(隆起性皮膚線維肉腫)という悪性腫瘍との鑑別が必要なため、顕微鏡による検査(病理検査)を行います。大きくないものや症状のないものは経過観察とすることもあります。
病理組織では真皮内に豊富な膠原線維の増加と線維芽細胞の増殖が認められます。周辺では太い膠原線維束間への浸潤様増殖を示し、表面にメラニン沈着を有する表皮肥厚を伴います。
鑑別疾患
先ほど上げたDFSP(隆起性皮膚線維肉腫)、結節性黄色腫、母斑細胞母斑、青色母斑、悪性黒色腫などが鑑別にあげられます。また、炎症した後の粉瘤も硬く、隆起し、色素沈着を伴うことから間違えることもあります。粉瘤では硬くなってしまった場合には炎症が起こった後であり、痛みを伴っている事が多く、経過を聞くことで判別も出来ます。
その他の皮膚線維腫
背部の皮膚線維腫
足背の皮膚線維腫
形成外科専門医 古林玄
粉瘤と間違えやすい腫瘍【石灰化上皮腫】症状/治療法
今回の症例は石灰化上皮腫です。最後に動画を貼り付けています。
石灰化上皮腫(毛母腫:pilomatorixoma)とは
名前の通り、皮膚の一部に石灰化が起こり硬い石のような塊が出来る良性腫瘍の一つです。毛母腫と言われることもあります。毛根にある毛母細胞を起源とする良性付属器腫瘍です。原因は分かっていませんが、若年者の腕や頸などに発生することが多く、女性に少し多い傾向があります。
症状
皮膚に硬いしこりを触れることで気づきます。基本的には痛みなどはありませんが、押すと痛みが出たり、痒みを感じることもあります。腫瘍が小さい場合には気づかない場合もありますが、大きくなると、皮膚が薄い部位では青黒い色に見えることもあります。カラダの中で作ったられたものになりますが、感染や異物反応を起こすことがあり、その際には痛みや痒みが強くなり、時には皮膚に穴が開いてしまう事もあります。また腫瘍は少しずつ大きくなり、自然になくなることはありません。
診断
診断は主にエコーで行います。皮下に高輝度エコーを認め、その下に音響陰影が見られるのが特徴です。炎症を起こしてしまうと音響陰影が消えてしまう場合があり、診断が難しくなる場合もあります。エコーでも診断できない場合もあり、粉瘤やその他の腫瘍と間違われやすく、手術を行い診断に至る場合もあります。レントゲンを行うことでも確認は出来ますが基本的にはエコーの方が簡便で侵襲もありません。部位によってはCTやMRIを使用する場合もあります。
術後の病理組織は石灰沈着を伴い、核部分が抜けた好酸性細胞集団(shadow cell)が認められます。
治療
外科的切除になります。内服や塗り薬、レーザーなどで治療することはできません。また悪性腫瘍との鑑別が必要な場合もありますので、術後は病理検査にて診断が必要になります。
今回の症例では約2.5㎝程の腫瘍でした。エコーで術前に石灰化上皮腫と判断し、手術を行いました。
石灰化上皮腫は石の塊なので、小さい穴で取り出すことは少し難しくなります。時には小さく穴を開け、石を小さく砕きながら摘出する場合もありますが、皮下に腫瘍が撒き散らされ、すべて取れないこともあります。そのため、その腫瘍が取り出せる範囲の切開を行い手術を行いました。
腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍を一塊で摘出することが出来ました。
炎症が起こっている場合には腫瘍が一部溶けてしまい、摘出しにくくなることがあります。
皮下は空洞になっており、血腫が出来る可能性もあるため、皮下に16Gのサーフローを挿入し、閉創しました。
創部を閉創し、手術を終了としています。
形成外科専門医 古林玄
炎症した粉瘤 の症状/治療について専門医が徹底解説
炎症の起こった粉瘤について解説します。動画も一番下に載せているので苦手でなければ観てください。
今回の症例では炎症によって皮膚に大きな穴が開いてしまっています。粉瘤は皮膚の中に老廃物が溜まっている状態です。老廃物の溜まった袋が壊れると、ヒトは自分で作った老廃物であっても、異物と認識するため、異物反応を起こします。それが炎症です。
炎症はヒトが老廃物をカラダの外に出す方法ですが、その際は皮膚に爆弾を投げた状態になります。爆弾は皮膚だけではなく皮下組織にも影響を及ぼし、色々なものを壊していきます。
そのため、大きな破壊により皮膚が赤くなり、最終的には皮膚に穴が開きます。老廃物を少し出すことができ、炎症は収まりますが、完全には出すことは出来ずまた再発してしまいます。また炎症のせいで、皮膚は大きく傷つけられ、傷跡と色素沈着が大きく残ってしまいます。また頭部など毛髪の生えている部位で炎症が起こると毛根が死んでしまいハゲになってしまう事もあるので注意が必要です。
今回の症例でも炎症で穴が開いてはいますが、中身はすべて出きらずに、中に溜まった状態で炎症が収まり、色素沈着が残った状態になっています。
なかなか難しい症例ですが、開口部を探しながら原因の袋を摘出していきます。
中身を取り出した状態です。ここから袋も摘出していきますが、炎症のせいで、袋の癒着が強く、摘出が非常に困難でした。粉瘤はものによっては取れやすいものと、取りにくいものがあります。特に触らずに刺激がなく、大きくなった症例は皮膜の癒着が少なく、簡単に摘出出来ます。一方で自分でよく触ったり、中身を押し出そうとしていたもの、炎症が何度も繰り返している粉瘤では皮膜の癒着が強く、取りにくくなります。また押し出そうとする行為は炎症の原因にもなるため、注意が必要です。
開口部をが2か所あったため、2か所のくりぬきを行っています。開口部は取らなければ再発してしまうので、出来るだけ摘出する必要があります。
開口部は炎症すると分からなくなることもあります。そして炎症するところは皮膚の開口部ではないということがとても大事なポイントになります。ほとんどの炎症した症例で開口部がずれて、皮膚の炎症を起こします。これを知らない先生も多いので炎症している症例には再発が多くなります。私ももちろん再発させることはあります。
創部の縫合した状態です。炎症した症例は縫わない事も多いのですが、今回はある程度、炎症が収まっているので縫合しています。それぞれの傷の状態によって色々工夫はしていますが、炎症している場合の方がトラブルがどうしても多くなります。
炎症している時の創部は破壊に向かっています。その際に縫合しても傷は寄らずに創部が開いてしまいます。創部を一部開けたりすることで、内部の出血や感染を抑えながら直すことで治療していきますが、治癒には2-3週間はかかる場合があります。
治るのに時間が掛かるせいで、傷跡が残りやすく、場所によってはケロイドが出来ます。破壊が強い場合には傷の過剰の治癒が起こりやすくなるからです。特に胸部、肩の粉瘤はケロイドが出来やすくなるので注意が必要です。また体質も強く影響します。
ケロイドについてはこちらに詳しく載せていますので参照ください。
形成外科専門医 古林玄
首にできた粉瘤治療について/くりぬき法
首の粉瘤提出について解説します。動画は下に載せておきますので苦手でなければ観てください。
今回は約1.5㎝程の粉瘤です。2年程前からしこりが首に触れていたようです。徐々に大きくなり当院へ来院されました。
今回の症例では炎症が過去に起こっていなかったため、非常に取りやすい状態でした。自分でいじってしまったり、ぶつけやすい部位に出来ると炎症が起こってしまうので注意が必要です。
炎症が起きる理由のほとんどは自分でいじったり、ぶつけたりすることで粉瘤の袋が破れ、異物反応を起こすことが挙げられます。炎症を起こすと、痛みが出て、色素沈着と瘢痕を残してしまいます。できるだけ袋を壊さないように生活することが大事なので早く取ってしまう事をお勧めします。
まずは局所麻酔をします。炎症していない症例では表面に少し打つだけで麻酔は効いてしまいます。
今回の症例でも少量ですがもう少し少なくても問題ないでしょう。
パンチを使用し、開口部を含めて切除します。炎症していると開口部が見つからない場合もあるので注意が必要です。
圧迫を行い、腫瘍の袋の中に溜まった老廃物を取り出します。
袋が小さくなったところで腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍を摘出します。
症例により袋が柔らかかったり、丈夫に出来ていたりします。臀部などでは袋が分厚く硬いこともあり、炎症せずに大きくなることが多いです。
首は比較的柔らかく、壊れやすい膜になっています。また炎症すると袋の膜も壊れてしまい、非常に摘出するのが難しくなります。
今回は小さかったですし、炎症も起きていなかったため、簡単に腫瘍を摘出することが出来ました。大きくなったり、炎症が起きると切開法により手術をすることになり、傷跡も目立ちやすくなります。見つけた際には触らずに、大きくなる前に病院を受診することが大事になります。
しこりが気になり、皮膚科を受診して『気にしなくていいよ』と言われて放置した結果、炎症を起こした患者様が当院にも沢山来院されます。手術が苦手な先生や忙しい先生は切除してくれない事も非常に多いため、形成外科を受診することをお勧めします。
形成外科専門医 古林玄