デルモイドシスト(dermoido cyst:皮様嚢腫)とは
粉瘤と間違えやすい腫瘍としてデルモイドシストが挙げられます。
デルモイドシストは胎生期の遺残物で目の上、鼻周囲、耳の裏などの骨縫合部などに出来やすく、腫瘍の内容物は黄色の液体(皮脂、角質)と毛髪が貯留している。約半数で出生時より腫瘍を認める。
男女比は特にありません。
汗腺や皮脂腺の発達する思春期に急速増大を認め、その際に見つかることもある。
症状
基本的には特にありません。ぶつけたり触ったりすることで腫瘍の嚢胞が破れると異物反応が起こり、炎症が起きることがあります。炎症が起きると疼痛があり、瘢痕が残ります。
原因
原因ははっきり分かりませんが、発生過程で骨と骨が癒合する際に,外胚葉組織の迷入が生じるためと考えられています。
診断
ほとんどはエコーで診断がつきますが、大きい腫瘍ではCTやMRIを撮影する場合もあります。
鑑別疾患
粉瘤、奇形種、石灰化上皮腫、類表皮腫、神経線維腫、毛髪嚢腫、など
治療
手術による摘出が必要になります。
粉瘤とは違い骨の癒合部位から発生しているため、手術は粉瘤の摘出よりは格段に難しくなります。また、腫瘍は筋層より深くなるため、術後の血腫や神経損傷にも気を付ける必要があります。基本的には切開による腫瘍摘出になります。
小児では全身麻酔が必要な場合もあります。
今回の症例では眉下に切開を加える事で出来るだけ術後の傷跡が目立ちにくいようにします。
腫瘍は眼輪筋の下にあり、少し出血が多くなります。
腫瘍を骨膜の癒着部位から剥離し、腫瘍を摘出します。
腫瘍を摘出し、十分にバイポーラを使用し、止血します。
創部は眉毛下に重なり、毛髪も生えてくるため、傷は目立ちにくくなります。
腫瘍を切開し、中身を確認しました。
内容物はやはり毛髪と皮脂、角質になります。皮脂が黄色く見えています。
成人になるにつれ、どんどん大きくなってしまうため、早期の摘出をお勧めします。大きくなれば大きな切開が必要になります。
形成外科専門医 古林玄