今回は16㎝大と非常に大きな粉瘤の症例です。動画は下に載せています。
一度に切除するか悩みましたが、あまりに大きいため、一度に腫瘍を切除せずに粉瘤の内容物を出し、腫瘍が一度小さくなったところで再度切除する方針としました。
一度に手術しなかった理由
大きな腫瘍を一度ですべて切除してしまうと、切開部位が非常に大きくなってしまいます。今回は大腿部であるため、動いてしまうと血腫が出来たり傷が開いてしまうリスクが大きくなります。手術をするにしても入院が必須でしたが患者様の都合もあり、入院が難しいため、日帰りでの手術を希望されました。
また、大きな腫瘍を摘出すると、大きな空洞が皮下に出来てしまいます。それが死腔(dead space)です。ここに術後血腫などが出来やすくなってしまいます。16㎝大の腫瘍を取るとかなり大きな死腔が出来てしまい、また、術後の歩行によりトラブルが起こる可能性が高くなってしまいます。
内容物のみを除去するデメリット
内容物のみを出して腫瘍が小さくなったところで手術することも実はデメリットが存在します。
内容物を残して手術を終えるため、術後に感染をしてしまうことです。また内容物が皮下に漏れ出ることで異物反応が起こり、炎症が起きることもあります。そのため、術後は傷を開けた状態で帰宅してもらい、自宅で洗浄処置を継続してもらうことでしっかりと感染予防を行う必要があります。
感染コントロールがうまくいき、腫瘍が小さくなれば、切除を小さくして手術をすることができます。
2度目の手術は3か月後くらいを予定しています。
経過はまた後日アップします。
形成外科専門医 古林玄