今日は粉瘤のエコー所見について説明します。
エコーは腫瘍を見極める上で非常に有用な検査になります。当院では皮膚に様々な腫瘍を持った患者様が来院されます。見ただけで腫瘍の種類が分かる患者様もいらっしゃいますが、皮膚の下に出来た腫瘍では見ただけで腫瘍の診断をすることは出来ません。そのためエコー検査を使用した診察が必要になります。
エコーとは超音波というヒトが聞くことを目的としない音を利用しています。音の高さは周波数で表され、単位はヘルツです。ヒトの聞こえる音は20Hz〜20k Hzですが、エコー装置で使われる音の範囲は2M Hz〜14M Hzと非常に高い音になります。音響インピーダンスという組織固有の超音波に対する特性、周波数の違いを利用して、皮膚の下の組織を表していきます。
エコーはシコリにプローべを当てるだけの非常に簡単な検査になりますが、検査者の習熟度により結果に大きな影響を与えます。検査者は基本的知識を十分に把握し、正確な病変や評価を行わなければなりません。
大学病院など大きな施設では検査を資格を持った技師さんにお願いしていることも多く、不慣れな先生も沢山います。しかし、小さな病院やクリニックではドクター自身がエコーを当て、しっかり診断した上で手術に望む必要があります。
腫瘍自体は本当に無数にあるため、エコーだけで診断することは出来ない場合もあります。その場合にはCTやMRI検査を加え、手術可能なのか全身麻酔が必要なのかの判断を行います。そして手術を行い、病理検査により確定診断に至ります。
粉瘤はよく見る腫瘍ですが、血管腫や石灰化上皮腫、脂肪腫、皮膚線維腫などと間違えやすく、やはり術前のエコーが非常に重要になります。開口部が明らかで、小さな粉瘤の場合には簡単な診察のみで手術を行いますが、開口部がなく、大きな腫瘍の場合には他の腫瘍を除外する必要があります。
粉瘤の主なエコー所見です。
①内部エコー不均一
②微細な高エコースポット
③血流なし
④外側低エコー領域あり
⑤後方エコー増強
と以上のような所見が挙げられます。
しかし、実際に診療をしてみると炎症がある場合では全く別のエコー所見を呈します。様々な知識を持った上で手術の適応があるかを判断する必要があります。
最近では携帯型エコーなどエコーもスマホのよう容易に使用することができ、非常に便利になってきています。しかし解像度では大きなエコーには負けてしまうので、難しい症例では大きなエコーで診察する場合もあります。
形成外科専門医 古林玄