10㎝大の臀部(お尻)の粉瘤です。
10年以上放置していたそうですが、粉瘤は少しずつですが確実に大きくなってしまいます。
かなり大きな粉瘤になりますので、くりぬき法では困難になります。
くりぬき法でも取れなくはないのですが、長年皮膚が伸ばされてしまっているため、小さな傷で取った際に、余剰の皮膚が出てきてしまい、皮膚のたわみが出てきてしまいます。
太った人が痩せた時に弛むのと同じ状況ですね。
なので今回は切開法を選択しました。
切開法では余剰皮膚を考慮して、紡錘形の切開ラインをデザインします。丸く切るとdogearと言うものが術後に出来てしまい、切開部位の両端に犬の耳のような盛り上がりが出来てしまいます。
そのため、切開ラインは腫瘍よりも長くなり、15㎝程になってしまいました。
術中の写真です。
腫瘍の周囲を剥離し、腫瘍の摘出を行います。この症例では癒着はそこまでありませんでしたが、大きいため、底部の剥離がやはり困難でした。一度腫瘍をやぶり、腫瘍を小さくしてから摘出するのも一つですね。今回は一塊の摘出にこだわりましたが、特にこだわる必要はないと考えています。形成外科では袋を破らない事にこだわる先生が何故か非常に多いですが、傷を小さく腫瘍を切除するなら袋を破り、中身を取り出すことは必須です。中身を除去し、腫瘍を小さくすることで、裏面の剥離が容易です。袋を破らないことで、皮下組織との境界が分かりやすくはなりますが、あまりメリットはないです。
今回の症例では余剰皮膚の切除が必須になり、どうしても傷が大きくなってしまうため、敢えて袋を破らずに切除しました。
大きな腫瘍が取れました。
取るのも大変ですが、大きい腫瘍はここからが大変です。
それは創部の縫合です。腰に近いため、動きやすい部分でもあるため、しっかりと皮下縫合を加え、閉創する必要があります。簡単そうに見えますが、非常に時間がかかります。
傷の縫合は形成外科専門医の先生でも意外に適当な先生も多いです。
特にいい師匠に出会ってない場合や、医局によってはかなり縫合の上手さに差があります。
傷を丁寧に縫うことで保険点数が上がるわけでもないので、そこは形成外科自身のこだわりになる事が多いですね。
がん研有明病院や聖路加国際病院で、上司の先生に恵まれたので、非常に沢山の事を教えていただきました。縫合もちゃんと自信がついたのは形成外科をして4年目くらいからかもしれません。
偉そうに言いましたが私もまだまだ勉強中です。
動画も最後に載せておきますので、手術に興味のある人は観てください。苦手な人は控えて下さいね。
形成外科専門医 古林玄