粉瘤(しこり、できもの)は痛い?
粉瘤は痛いかどうか聞かれることが多いですが、粉瘤が痛いときは炎症をしている時です。
粉瘤は炎症していない時には特に痛みがありません。しかし、内部で袋が破れたり、感染したりすると炎症が起きます。
炎症はカラダを守るための大事な免疫システムですが、過剰に働くとカラダにとってマイナスに働くことがあります。
炎症が起きると免疫システムとしてヒスタミンやプロスタグランジンなどの化学伝達物質を放出します。これにより痛みと痒みが起こります。同時に毛細血管も拡張し、赤みを生み、血管透過性が増大することで毛細血管から血漿が漏れだし、腫れてきます。
炎症が悪化すると皮膚組織の破壊が起こり、皮膚に壊死が起こります。こうなると皮膚に穴が開いてしまいます。穴があることで内容物が出て、炎症が少し治まりますが、大きな傷が出来てしまい、傷跡が残ってしまいます。
出来るだけ炎症が起きる前に腫瘍を取り除く事が大事になります。
基本的に炎症は血流のある腫瘍では起こりませんが、粉瘤や石灰化上皮腫、外毛根鞘性嚢腫、脂腺嚢腫などの内部に血流を持たない腫瘍(しこり、できもの)は炎症が起こってしまいます。
炎症が起こらないようにするためには、出来るだけ、腫瘍を触らない事!! 袋が壊れることで、カラダは異変に気付き、免疫システム、つまり炎症を起こし始めてしまいます。
形成外科専門医
古林玄
粉瘤とニキビの違い
よく患者様にこのデキモノ、しこりは粉瘤なのかニキビなのかと聞かれます。
実はかなり判断が難しいものも沢山あります。
粉瘤は基本的にはヘソと呼ばれるような穴があり、そこから皮膚組織が皮膚の中に埋入している状態です。そのため、皮膚の中に老廃物が溜まり、しこりを触れます。
またニキビも毛穴の中にある皮脂腺から皮脂が分泌され、老廃物が詰まった状態です。ここから炎症が起きると、皮膚の破壊が進み、時には大きく腫れあがり、硬い芯のあるしこりを触れるようになります。
そのため、粉瘤もニキビもしこりを触れてしまうのです。
粉瘤も中にはヘソのないものも存在するため、区別が難しくなります。
そもそも粉瘤もニキビも皮膚の中で炎症が起こる機序は変わりません。皮膚の中に老廃物が溜まると、ヒトはなんとかしてその中身を出そうとします。それがヒトの持つ防衛反応の一つだからです。
ニキビも炎症を繰り返すと皮膚の破壊と治癒を繰り返し、皮膚に陥凹が起こったり、皮膚の形態が悪くなるため、老廃物のたまりやすい状態となります。そうなると、何度も同部位でニキビを繰り返したりしてしまい、結果的に粉瘤となってしまいます。
ニキビを繰り返すことで皮膚が埋入してしまい、粉瘤になってしまいます。
そのため、何度も繰り返すニキビは外科的に切除する必要があります。
そうならない為にも、ニキビの予防は非常に重要になります。
肌の角質化がニキビの主な原因であるため、現在ではピーリング作用のある塗り薬や、殺菌作用のある塗り薬が保険適応としてよく使われています。角質をとることで皮膚の老廃物が溜まりにくくなり、皮膚の状態を正常化することができます。様々な治療がありますが、まずは保険診療の治療をお勧めします。
肘の腫瘍(しこり、できもの) /形成外科医が徹底解説
肘にも様々な腫瘍(しこり、できもの)が出来ます。
粉瘤や脂肪腫、血管腫はどこにでも出来ますが、滑液包炎という特徴的なしこりが出来る部位でもあります。他には痛風結節も出来やすい部位になります。
いずれも良性腫瘍の場合が多いですが、エコーやMRIなどで検査を行い、腫瘍を摘出し、悪性との鑑別を行うことがあります。
滑液包炎とは
滑液包は簡単に説明すると、カラダの中にあるクッションです。日常生活でよくこすれる部位(肘、お尻、筋肉、腱、靭帯)に存在し、液体状の平たい袋です。
これが日々の習慣で肘を長時間ついていたり、滑液包のある部位を酷使し過ぎた場合に炎症を起こします。皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌が感染する場合もあります。また痛風、偽痛風、関節リウマチ、ケガで出来ることもあります。
滑液包炎は炎症が起こっているため、当然、痛みを伴います。動かすと痛みがあるため、安静も大事です。時には炎症が強くなり、皮膚を突き破ることもあります。そのため、炎症性粉瘤と間違われることがあります。
治療は主に安静、痛み止め、抗炎症薬を使用して経過をみるか、ケナコルト注射を行い炎症を鎮める場合もあります。しかし、それでも治療が難しい場合には外科的切除も考慮します。感染している場合には切開排膿を行ったり、抗生剤の内服や点滴を考慮します。
形成外科専門医
古林玄
粉瘤(しこり、できもの)を自分でつぶしてはいけない理由/形成外科医が徹底解説
先に結論を言いますと、粉瘤(しこり、できもの)は自分で潰してはいけません。
ふとネットなどで粉瘤を検索すると、『粉瘤 自分で潰す方法』、『粉瘤 自分で針』、『粉瘤 自分で摘出』、『粉瘤 潰し方』などのキーワードが多く出てくるのを目にしました。
何かあれば自分でまず何とかしなければ、と思うのは当然の判断です。
しかし、それが思わぬトラブルを生んでしまいます。
まずは粉瘤をしっかりと理解しましょう
粉瘤は簡単にいうとゴミ袋の中にゴミが詰まっている状態です。
※粉瘤の詳細は詳しくコチラに載せています。またはブログにも多数症例を載せています。
ゴミは自分の皮膚が作り出してしまった老廃物です。垢や脂などの老廃物を皮膚は作り出します。
普段は大人しくしている粉瘤ですが、ごみ袋が破れると、皮膚の中にゴミが撒き散らされてしまいます。
カラダはゴミが撒き散らされることでびっくりしてしまいます。
それが異物反応であり、炎症です。
自分で頑張って潰したりすると、このゴミ袋が破れて、異物反応が始まります。
※炎症性粉瘤はコチラで解説しています。
カラダはなんとか皮膚からゴミを排出するために、炎症を起こし、皮膚に穴を開けようとします。これはヒトが持つ防衛反応です。
しかし、炎症が起こることで組織の破壊が進み、皮膚、脂肪、筋肉などが壊されます。皮膚を破壊し、中身のゴミを外に出せれば炎症は落ち着きます。
背中は皮膚が分厚いため、なかなか皮膚に穴を開ける事が出来ないため、カラダの中で炎症が続くとばい菌が全身に回り、発熱を起こすこともあります。こうなれば抗生剤の点滴が必要になることもあります。
炎症すると、手術は難しくなり、傷跡も残り、色素沈着も出ます。
なぜなら、そこで起こっている事は大きな破壊だからです。
袋はマッサージ中に壊れることもありますし、何かにぶつけて壊れることもあります。
粉瘤の炎症を感染だと判断する先生も多いですが、始まりはゴミ袋が壊れて起きる異物反応によるものである事を理解しなければいけません。
自分で潰さずに早めに手術をすれば痛みも少なく、小さな傷で取ることが出来ます。
炎症すると痛みも強くなります。カラダがここがヤバいよーと教えてくれているのですが、少し迷惑な状況になってしまいます。
皮膚科の先生も潰される方もいらっしゃいますが、基本的に組織を潰す事は私はおススメできません。
形成外科専門医
古林玄
大腿部の脂肪腫治療/日帰り
本日の症例は大腿部の脂肪腫です。約10㎝程の大きな腫瘍です。動画は下に載せています。
脂肪腫についてはこちらを参照して下さい。
脂肪腫が背部にあるか腹側にあるかで取りやすさが変わります。
背部か腹側の大きな差は寝るときに圧迫されているか、されていないかです。脂肪腫は背部や圧力が加わる場所にあると、長い年月を掛けて組織の破壊が起こります。
それによる修復と破壊を繰り返し、腫瘍は癒着が強くなってしまいます。そうなると、手術時に切開範囲を広げたり、癒着部を切除する際に出血があったりして、血腫の可能性も上がってしまいます。要は合併症の確率が上がり、傷も大きくなります。
同様に腫瘍をマッサージしている人も癒着が強くなります。そのため、出来る限り腫瘍をマッサージするのはやめてください。
今回の腫瘍は体の表側にあり、刺激があまり加わっていないため、癒着は少なそうな印象です。
腫瘍に切開ラインは大きくデザインしましたが、実際の切開範囲は2,5㎝程です。
癒着が少ない場合には指が入れば、容易に摘出が出来ます。
腫瘍を指で剥離するのは出来るだけ無理な切除を避け、出血を少なくするためです。
今回も容易に摘出することが出来ました。
創部は念のため血腫予防のために16Gサーフローを挿入します。
5-0吸収糸で創部を縫合して、手術を終了しています。
形成外科専門医 古林玄
腰にできた粉瘤(しこり、できもの)の治療 日帰り/くり抜き法
今回の症例は腰部の粉瘤です。動画は下に載せています。
大きさは約5㎝です。
少し大きく、余剰皮膚も出る可能性もあったため、紡錘形に1.5㎝程切開ラインをデザインし、手術を行いました。
今回の症例では粉瘤によく見られる開口部が見つけられませんでした。元々ない症例もありますし、炎症を繰り返した場合に分からなくなる場合があります。
開口部を取り残すと必ず再発します。麻酔を打つことで小さな開口部が拡大し、見つけられる事もありますし、敢えて腫瘍の中に麻酔を打つことで開口部より噴水のように麻酔が噴き出し、開口部を見つけられる事もあります。
今回はありませんでしたので、開口部はないものとして治療を終えましたが、隠れている場合は再発します。
炎症のない症例でしたので麻酔は切開部位だけ行います。カラダの中は意外に痛みがありません。痛みがあればその都度、追加します。
内容物はかなり多かったです。10年近くはあったようです。
腫瘍を皮膜ギリギリで剥離することで出血を最小限に抑えます。無理やりとると出血が多くなりますが、綺麗に膜の部位だけを剥離します。ハサミで切る場合もありますが、ハサミの先を膜と組織の間に滑りこませながら腫瘍を摘出します。
一部破れていますが、しっかりと切除出来ました。
創部を縫合し、手術を終了しています。
形成外科専門医 古林玄
お尻のしこり、できもの(粉瘤)治療/炎症あり
本日の症例は炎症性の粉瘤です。動画は下に載せています。
10年前からお尻に粉瘤があり、ある日、痛みを伴い炎症を起こしてしまいました。
大きな粉瘤の方が大きな炎症が起きるので注意が必要です。今回の腫瘍も置いておくと、更に炎症は広がり、組織の破壊が進み、皮膚が壊死します。場合によっては筋肉の方まで組織の破壊が進み、大きな血流に細菌が投げれ込むと、発熱が起こり、入院が必要なこともあります。
粉瘤はごみ袋のような袋に包まれており、中にはゴミが詰まっています。何か物理的な刺激が加わり、ごみ袋が破れると、カラダの中にゴミが撒き散らされます。それにカラダはびっくりしてしまい、炎症を始めます。これは主に異物反応です。そこに皮膚にある常在菌が更に広がり感染が起こります。
いきなり感染が起こると考えている先生も多いですが、ほとんどは異物反応から炎症が起こります。そのため、抗生剤だけで炎症を治めることは少し難しくなります。異物反応の原因を取り除く事が一番のポイントになります。
そのため、炎症が起こった際には抗生剤で粘るのではなく早期の手術を勧めます。炎症が持続することで皮膚の壊死は進み、組織の破壊も進みます。結果的に傷跡も残りやすくなってしまいます。
手術:炎症性の粉瘤の場合には痛みが強いため、局所麻酔をしっかり打つ必要があります。
麻酔を十分に打ったところでパンチでくり抜きます。
炎症のため、内容物に膿瘍が混じっています。まだ炎症が起こり日が浅いため、内容物がはっきりしていますが、炎症が進むと、すべて膿瘍になってしまいます。
皮膜も溶けてしまいますが、今回はある程度はっきりした状態で摘出出来ました。
皮膜が薄い人や炎症で溶けてしまうと摘出が難しくなります。一部でも残してしまうと腫瘍は再発してしまいます。
炎症を切開排膿のみで経過を見る場合もありますが、内容物が残るため、炎症がなかなか治まらず、毎日洗浄という地獄の日々を過ごす事になるため、全摘出をお勧めします。
創部は炎症が強いため、一針の縫合で終了しました。創部の炎症が強すぎる場合には創部は開けたままにしないと、血腫などにより、感染が持続することもあり、注意が必要です。
形成外科専門医 古林玄
首の脂肪種治療/日帰り
今日の症例は脂肪腫です。 脂肪腫の治療や検査についてはこちらに詳しく載せています。動画は下に載せています。
脂肪腫の大きさは約3㎝大で皮膚科さんで粉瘤と言われ当院へ来院された患者様です。脂肪腫によっては硬さがしっかりしている場合や膨らみがある場合には粉瘤と間違えることもあるかもしれません。
エコーを術前にすることで腫瘍の性状や血流を確認することで粉瘤などと鑑別することが出来ます。
腫瘍直上に切開ラインをデザインします。患者様の術後の傷を考慮して、出来るだけ小さい傷で切除するように試みます。
粉瘤ぼ場合には中身を抜くことで腫瘍を小さくしてから切除できるため、小さな傷で摘出することが出来ますが、脂肪腫は少しだけ切らなければなりません。
局所麻酔を行い、メスで切開を行います。
麻酔も脂肪腫の場合には切開部位をするだけで摘出することが出来ます。
ヒトは皮膚に感覚はありますが、脂肪の中は鈍感なため、あまり多く打つ必要はありません。しかし筋肉や血管には神経が通っているため、深い部位や大きな腫瘍の場合には奥に麻酔を打つことも非常に大事になります。筋肉痛はよく言いますが、『脂肪痛いわー』という人がいないのは脂肪に神経がほとんど通っていないためです。
なので大概の脂肪腫は全身麻酔ではなくても十分に摘出出来ます。
今回の症例では癒着が強い部位がありましたが問題なく摘出することができました。一部出血している部位があったため、バイポーラを使用し、止血しています。
脂肪腫は比較的、血腫ができやすいため、16Gサーフローを挿入し、血抜きの管を挿入しています。これをドレーンといいます。
創部は5-0PDSで皮下のみの縫合としました。表皮縫合は皮下縫合のみでしっかりと傷を合わせることが出来れば必要ありません。
脂肪腫は徐々に大きくなってくるため、早めに切除するのをお勧めします。脂肪腫は背部にある場合、マッサージなどを行うと癒着が強くなり、切除が困難になります。また困難になると血腫もできやすくなり、合併症の確率もあがります。出来るだけ腫瘍を見つけた場合には触らないようにする方が良いです。粉瘤も触ってしまうと袋が破れて異物反応を起こし、炎症し始めます。触らぬ神に祟りなしです。
監修:形成外科専門医 古林玄
肩にできた粉瘤(しこり、できもの)の治療 日帰り/切開法
今回の症例は肩の大きな粉瘤です。約10㎝大の粉瘤になります。動画も下に載せています。
くり抜き法でも手術は可能かもしれませんが、余剰皮膚が出そうな症例でしたので切開法による手術を選択しました。
腫瘍上に紡錘形に切開ラインをデザインします。
局所麻酔を注射し、メスで切開を行います。局所麻酔には麻酔薬による痛みを軽減するためにメイロンを混ぜています。これについてはまたどこかでブログに載せます。
腫瘍に切開を加え、腫瘍の周囲を丁寧に剥離を行います。
腫瘍は皮膜ぎりぎりで剥離を行うことで出血を抑えることができます。また、組織をうまく剥離できれば、指だけで腫瘍を切除できます。
今回は膜の非常に薄い部位があり、圧力がかかり、一部破れてしまいました。無念。
ただ、正直なところ、皮膜を破らずに取るか取らないかは形成外科医のエゴです。
膜を破らずに取れと、若い時は上級医に教わりましたが、全くその必要はありません。
膜を破り、小さくなったところを切除する方が遥かに腫瘍は容易に切除できます。今回でも内容物が出てから容易に裏面を剥離することが出来ました。
腫瘍が大きいままだと、小さな切開では裏面の剥離が非常に困難になってしまいます。
もちろん、内容物が内部に漏れてしまうと炎症のリスクがあるので、内容物が漏れた場合にはしっかりと洗浄する必要があります。
摘出された腫瘍です。綺麗には取れませんでしたが、再発のないようにしっかりと腫瘍の切除を行い、創部を洗浄しています。
創部に16Gドレーンを挿入し、閉創します。
監修:形成外科専門医 古林玄
おでこにできたデキモノ 外骨腫の治療/日帰り
今回の症例はおでこの外骨腫です。外骨腫についてはこちらで詳しく解説ししています。
オデコのしこり、デキモノの中には外骨腫という腫瘍があります。
外骨腫はあまり聞きなれない腫瘍かもしれませんが、粉瘤や脂肪腫と非常によく間違えられやすい腫瘍です。
外骨腫は非常に硬く粉瘤や脂肪腫とは全然硬さが違いますし、可動性も全くありません。しかし、触診だけでは皮膚自体がよく動くため診断に苦慮します。
場合によってはCT検査を行い、精査する場合もあります。
今回の症例もおでこの1㎝程の小さな腫瘍ですが、見た目ではかなりくっきり膨らみが出てしまいます。ほとんどが良性ですが整容面的にも切除を希望する場合が多いです。
動画は下に載せています。
腫瘍より少し上から切開を加え、前頭筋を剥離し、骨膜上までアプローチします。その際に神経には気を付けなければいけません。骨膜にアプローチが出来れば、エレバラスパを使い、骨膜下の剥離を行います。
十分に剥離を終えたところでツチとノミを使用し、腫瘍の切除を行います。
やってる事は大工さんと同じです。
コンコンすると腫瘍が簡単に切除できます。
とてもきれいに摘出できました。
創部を縫合し、手術を終了します。出血もほとんどなく日帰りで手術出来てしまいます。
これくらいの腫瘍であれば局所麻酔で十分に出来てしまいます。
術後
術後は軟膏処置またはバイオヘッシブで固定を行い、1週間後に抜糸します。
形成外科専門医 古林玄