2023.11.21

良性の粉瘤は悪性化する?鑑別方法や治療方法を解説します

粉瘤の多くは良性腫瘍

粉瘤(アテローム)は表皮嚢腫とも呼ばれ、多くは良性の腫瘍です。

粉瘤の中身は老廃物

粉瘤の内容物は、皮脂や垢などの老廃物です。何らかの理由で皮膚の下に袋状の組織が形成され、そこに皮脂や垢などの老廃物が溜まることで発生します。
打撲や外傷に伴って発生する場合やニキビの痕にできることがありますが、原因を特定することは困難です。
また、脂肪細胞の良性腫瘍である脂肪腫と混同されますが、発生する原因や腫瘍の内容物が異なるため全くの別物です。

痛みや腫れを伴う場合は炎症性粉瘤

粉瘤を発症してすぐは、目立たず気にならないほどです。しかし皮脂や垢などの老廃物が溜まり、徐々に大きくなってくると独特の臭いが発生します。
状態によっては痛みや腫れを生じます。
このような場合、細菌感染により炎症を引き起こしている可能性があるため早期治療が必要です。

粉瘤の悪性化

粉瘤は良性の腫瘍ですが、まれに悪性化することがあります。ここでは良性と悪性の鑑別方法や粉瘤が悪性化したもので多い有棘細胞がんについて解説します。

良性と悪性の鑑別方法

身体にできた粉瘤が良性か悪性なのか鑑別するには、以下の項目を参考にしてください。
● 腫瘍が赤色に変化している
● 腫瘍が急速に大きくなっている
● 腫瘍の表面がかさついて硬くなっている
● 腫瘍がまだらに盛り上がり、しこりができている
● 腫瘍にただれや潰瘍(傷ができてえぐれている)ができている
● 腫瘍から液体が染み出している
● 腫瘍から悪臭がする
このような症状がある場合、粉瘤が悪性化している可能性があります。
なお、正確な判断をするためには皮膚の一部を切り取り、生検組織診断と呼ばれる専門的な検査が必要です。

粉瘤の悪性化「有棘細胞がん」

粉瘤が悪性化したもので多いのが有棘細胞がんです。有棘細胞がんは表皮の細胞が悪性化する中で、基底細胞がんに次いで発生頻度の高い皮膚がんです。
他にも、広範囲のやけど痕や慢性的な皮膚炎から発症しやすいといわれています。
また、日光にさらされやすい顔や頭皮などが好発部位です。有棘細胞がんが皮膚の表層部にとどまっていれば、他の部位に転移することはほとんどありません。
しかし、皮膚の深いところまで浸出するとリンパ節に転移しやすくなります。さらに肺や肝臓、脳にまで転移することもあります。

有棘細胞がんの治療法

有棘細胞がんの治療方法は、主に以下の3つの方法があります。

単純切除

有棘細胞がんの治療は、手術で切除するのが一般的です。単純切除術では、悪性化した部分を完全に切除することが重要です。
また、周囲の皮膚も一緒に切除する必要があります。
切除した皮膚は病理検査で詳しく調べられ、転移の可能性が疑われる場合には追加手術が必要になることもあります。
また切り取った皮膚の部分が広範囲の場合には、皮膚の再建術や他の部位から皮膚を移植することもあります。

放射線治療

がんが進行し内臓などに転移している場合は、手術適応になりません。
また切除が難しい場所に、がんが発生したケースや合併症などの理由で手術に耐えられない場合には放射線治療が適用されます。
放射線治療の副作用としては、疲労感や倦怠感、食欲不振、皮膚状態の変化があります。

化学療法

化学療法は、進行が著しく手術が難しい場合に適用されます。その他にも、がん細胞が血管やリンパ管を通して他の臓器や部位に移動した際にも積極的に選択されます。
また一般的に化学療法は手術前に行うことはありませんが、有棘細胞がんは化学療法でがんが小さくなる効果が期待できます。そのため、単純切除と併用されることもあります。

良性の粉瘤であっても放置してはいけない理由

粉瘤は良性の腫瘍ですが、放置すると身体に悪影響を及ぼします。

悪性化する場合がある

粉瘤の初期は痛みや腫れがないことや、皮脂や垢などの老廃物が溜まることで発生する良性腫瘍のため、放置していても健康を大きく損なうことはありません。
しかし、発症し長い年月が経過しているものや炎症を繰り返す粉瘤は有棘細胞がんなどに移行する可能性があります。

● 腫瘍が赤色に変化している
● 腫瘍が急速に大きくなっている
● 腫瘍の表面がかさついて硬くなっている
● まだらに盛り上がり、しこりができている
● ただれや潰瘍(傷ができてえぐれている)ができている
● 腫瘍から液体が染み出している
● 腫瘍から悪臭がする
このような場合には、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

炎症を起こす可能性がある

粉瘤を放置すると細菌感染をして、炎症性粉瘤に移行することがあります。炎症性粉瘤に移行すると治療期間の延長や、治療費の増大が予想されます。炎症性粉瘤は、皮脂や垢の溜まった袋状の組織が周囲の皮膚と癒着するため、完全に摘出するのが難しいからです。
袋状の組織が少しでも体内に残ると再発の可能性が高くなり、治療期間の延長や治療費の増大につながります。炎症が強い場合は、抗生物質の内服や溜まった内容物を切開して排膿するなどして炎症が落ち着いてから手術します。
そのため治療を終えるまでに数ヶ月かかることもあり、治療費も高くなる傾向にあります。また炎症の程度には個人差があり、痛みが強くなると日常生活に支障をきたすこともあります。

粉瘤は自然治癒しない

粉瘤はニキビやふきでものと異なり、放置していても治癒することはありません。皮脂や垢が溜まった袋状の組織を取り除かなければ、再発するからです。袋状の組織を取り除く方法は、くり抜き法と切開法の2種類の手術方法があります。
くり抜き法はトレパンという特殊な器具を使って施術するため傷跡が小さく、短時間で手術することができます。
切開法はメスを使用し皮膚を切開し、粉瘤を丸ごと摘出するため再発する可能性が極めて低いという利点があります。
どちらの手術方法にするかは、事前にカウンセリングを行った上で選択します。

まとめ

袋状の組織に皮脂や垢が溜まって発症する粉瘤は、基本的に良性の腫瘍ですが悪性化することもあります。
良性と悪性の鑑別方法を参考にし、当てはまる項目があれば早めに専門の医療機関を受診することをおすすめします。また良性の粉瘤であったとしても、放置すると炎症性粉瘤や悪性の有棘細胞がんに移行する可能性があります。
炎症性粉瘤は治療期間の延長や治療費が増大する可能性があり、有棘細胞がんになると最悪の場合、命に関わることもあるでしょう。どちらにしても、粉瘤ができた時点で専門の医療機関を受診するようにしましょう。

当院は粉瘤治療専門のクリニックです。経験豊富な医師によるカウンセリングや、患者さまに寄り添った治療を提供しています。粉瘤ができて不安な方は、お気軽にお問い合わせください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.08.03

粉瘤は悪性腫瘍に変異する?悪性のリスクと適切な治療方法を解説

はじめに

基本的に粉瘤は良性腫瘍ですが、悪性に変異するケースもあります。
しかし粉瘤が悪性になった場合、激しい痛みや破裂の恐れなど様々なリスクを伴うため、注意が必要です。
適切な治療を行えば比較的簡単な手術で済む場合が多く、粉瘤に気づいた時には早めの治療をおすすめします。
本記事では粉瘤の悪性変異について解説するとともに、粉瘤の手術や流れについて紹介します。

粉瘤は悪性に変化する可能性がある

粉瘤は良性腫瘍の可能性が高い疾患ですが、ごく稀に悪性へと変化する恐れがあります。悪性に変異した腫瘍とは、「ガン」のことです。はっきりとした原因は判明していませんが、長期間の放置や炎症を繰り返すことで悪性化すると言われています。粉瘤が悪性化した場合は、有棘細胞がんであることが多く、稀に基底細胞がんを発生しているケースもあります。有棘細胞がんは、腫瘍部分が赤っぽい色をしており出血しやすく、悪臭を放つこともあります。一方基底細胞がんは、黒っぽくほくろのような腫瘍です。病状が進行すると、潰瘍化する危険性もあるため注意しましょう。粉瘤は放置しても自然に治癒しないと言われており、早めの治療が重要です。

粉瘤が悪性に変化した場合のリスク

粉瘤が悪性化すると下記のようなリスクがあります。
● 潰瘍化する恐れがある
● 激しい痛みを伴うケースがある
● 腫瘍が急速に肥大化し、破裂の危険性がある

潰瘍化する恐れがある

粉瘤が悪性に変化すると、皮膚が炎症を起こし潰瘍化する恐れがあります。潰瘍化とは皮膚の一部が炎症を起こし、皮下組織が露出しえぐれたような状態になることです。潰瘍化すると、激しい痛みや出血を伴うことがあります。他にも潰瘍化により感染リスクが高まり、さらに悪化する恐れもあるため注意が必要です。粉瘤は悪性化した時だけでなく、良性腫瘍の場合でも潰瘍化することもあるため、粉瘤の放置には気を付けるようにしましょう。粉瘤に気付いた際は、早めに専門医に相談し、適切な治療を行うことが大切です。

激しい痛みを伴うケースがある

粉瘤が悪性化すると炎症や化膿する恐れが高まり、激しい痛みに襲われることがあります。粉瘤は、通常、粉瘤は痛みを伴わないことが多いとされていますが、悪性化や長期間の放置によって痛みが強く現れることもあるため、注意が必要です。炎症が起きると、患部は赤く腫れあがったり、触れたりしただけで痛みを感じることがあります。粉瘤に痛みが出現すると炎症している可能性が高く、迅速なケアが必要です。しかし粉瘤の切除は、炎症が収まってから行われることが一般的で、完治までに時間がかかってしまいます。痛みや炎症が出ている場合は、粉瘤が悪化している恐れもあるため早めに診察を受けることが重要です。

腫瘍が急速に肥大化し、破裂の危険性がある

粉瘤は時間の経過とともにゆっくり大きくなりますが、悪性に変異した場合急速に肥大化することがあります。肥大化した腫瘍は、破裂の危険性が高く注意が必要です。もし破裂してしまった場合、炎症や感染を引き起こす可能性があります。他にも破裂した際に膿が溜まり、悪臭を放つケースも多数報告されています。粉瘤は悪性になると破裂の恐れだけでなく、発熱や倦怠感など体全体に様々な症状が現れるため、早めのケアが肝心です。

粉瘤は再発率が高く適切な処置が必要

粉瘤は適切な処置を行わなければ、再発の危険性が高い疾患です。手術を行った場合でも、腫瘍の袋が残ったままの状態になり、再び粉瘤ができてしまうことも少なくありません。粉瘤の手術は奥が深く、病院によって治療内容や手術内容が異なるため、病院選びは慎重に行いましょう。また粉瘤の治療には手術を伴うケースが多く、傷跡がどうしても残ってしまいます。そのため治療には、粉瘤を専門に扱う病院での治療をおすすめします。

粉瘤は日帰り手術が可能!2つの治療方法

粉瘤の治療には、2種類の手術法があります。
● くりぬき法
● 切開法
それぞれの特徴とともに、手術内容を紹介します。

くりぬき法

くりぬき法は、内部に蓄積した老廃物を押し出し、残った組織を引き抜いて取り除く手法です。手術時間は5分から20分と短く、体への負担も少ない手術方法と言えます。皮膚に穴を空ける際は、特殊な器具を使用しています。そのため小さな穴から老廃物を摘出が可能になり、傷が小さく、術後の回復が早いことが特徴です。しかし切開法と比べ、組織が残ってしまうリスクがあり再発のリスクも高まります。再発を繰り返している方や大きな腫瘍の場合、くりぬき法を採用しないケースが多いです。

切開法

切開法は、皮膚を切り開き、粉瘤の部分を完全に切り取る手法です。くり抜き法では摘出できない大きな腫瘍や炎症を繰り返した粉瘤には、切開法を採用するケースが多くあります。切開法では、腫瘍部分を完全に摘出できるため、再発の可能性が低いことが特徴です。しかし皮膚を切開するため、くりぬき法と比べると、傷跡が大きく残るリスクがあります。

診察から手術・術後の流れ

ここでは、粉瘤の手術を受ける時の流れについて紹介します。手術と聞くと不安に思う方も多いですが、早めのケアが体の負担軽減に繋がるでしょう。

診察で治療法を決定

まずは実際に診察を行い、疾患を確認します。腫瘍が粉瘤であると診断されれば、患者と相談した上で適切な治療方法について決めます。そして治療内容や手術のリスクについて説明を受けますが、心配なことがあれば伝えておくようにしましょう。安心して治療を受けるためにも、事前に不安を解消し、早めに粉瘤治療を始めることをおすすめします。

手術で根本的な治療

基本的には日帰りで手術を行い、粉瘤を根本的に摘出します。しかし粉瘤の大きさや状態によっては日帰りでの手術が不可能なケースもあるため、事前に確認しておきましょう。手術には局所麻酔を使用し、痛みや恐怖を最小限に抑えられているため、初めて手術を受ける方でも安心できます。摘出後は傷跡が残りにくいように、切開部分を丁寧にデザインしていきます。縫合後、しっかり止血が確認できれば、手術は完了です。

術後は経過観察

手術が終われば患部をガーゼで保護をし、帰宅します。手術後は経過観察を行い、数日間は毎日ガーゼの交換が必要です。また手術後は感染の可能性があるため、抜糸までは入浴ができません。傷跡は2~3週間程度で硬くなり、1ヶ月程度経てば傷跡は目立たなくなっていきます。しかし体質によっては、傷跡がケロイドになることもあり、不安な方は主治医に相談するようにしましょう。

まとめ

粉瘤は良性腫瘍である場合が多いですが、ごく稀に悪性へと変化する疾患です。悪性に変異すれば、激しい痛みや化膿、潰瘍する恐れがあるため、注意しましょう。そして粉瘤は自然治癒しないため、適切な治療を行う必要があります。初期の段階であれば日帰りによる処置が可能となるため、粉瘤に気づいた際は早めの受診をおすすめします。そして摘出手術をした際、細胞が残ってしまうと再発の危険性が高い疾患です。良性腫瘍・悪性腫瘍問わず、粉瘤の治療には、専門医である当院にお任せください。専門医が丁寧に診断し、皮膚腫瘍(良性・悪性)に対して適切な治療をご提供します。

良性のイボ・腫瘍・粉瘤でも放置せず早めの対応で健康を維持しましょう。さらに、皮膚の健康は全身の健康に直結しています。悪性腫瘍の可能性がある場合は特に注意が必要です。
当院では最新の医療技術を駆使し、悪性かどうかの判断を迅速に行います。また、患者様の負担を最小限に抑えた治療方法を提案いたします。疑わしい皮膚の変化が見られたら、自己判断せずに専門医の診断を受けることが重要です。ぜひご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.08.03

腕にできた膨らみの正体は?粉瘤の原因と治療方法について徹底解説

はじめに

粉瘤とは、角質や皮脂などの老廃物が袋状に溜まってできた腫瘍のことです。
良性の腫瘍であることが多いが、溜まってしまった腫瘍は自然に排出されることはありません。
時間の経過とともに大きくなり、炎症や痛みを伴う場合があります。また粉瘤は再発率が高く、治療には摘出手術を行う必要があります。
本記事では粉瘤の注意点と適切な治療方法について紹介します。

粉瘤の主な症状

粉瘤は、しこりのような膨らみが腕や体の皮膚にできる疾患です。角質や皮脂などの老廃物からできており、時間の経過とともに大きく変化していきます。初期の段階では、白色や肌色で痛みを感じることは少なく、粉瘤に気づかずに放置してしまう人も多く存在しています。悪化が進むと、黒色や黄色に変化し、痛みを伴う場合もあります。注意すべきポイントとして粉瘤は、自然に治癒することがない点です。早めに治療を行うことで悪化を防ぎ、手術をする場合にも体への負担を減らすことが可能です。粉瘤に気付いた時には、早めに診察することをおすすめします。

粉瘤ができる原因

粉瘤ができる原因は、明確には判明していません。考えられる原因として、粉瘤は老廃物からできていることもあり、不衛生な状態であることが挙げられます。しかし清潔を保っていても粉瘤ができる人もおり、一概に衛生面だけが原因ではないとされています。他にも外傷により粉瘤ができるケースも稀にありますが、はっきりとした原因がわかっていないため、未然に防ぐことが困難な疾患です。

粉瘤かも?と思ったら注意すべき3つのポイント

粉瘤に気付いた時は、下記の3つに注意しましょう。
● 自分で腫瘍を潰さない
● 放置は危険!炎症を引き起こす原因に
● 悪化する前に早めの病院受診

自分で腫瘍を潰さない

粉瘤を自分で潰してしまうと、細菌の感染のリスクがあります。初期の小さな粉瘤は、できものやニキビと間違いやすく、自分で潰してしまう人もいるでしょう。しかし粉瘤はできものやニキビと違い、潰すと細菌に感染してしまう恐れがあります。細菌に感染してしまうと、化膿したり腫れたり、痛みの原因に繋がりかねません。自己判断で潰すことはしないようにしましょう。

放置は危険!炎症を引き起こす原因に

粉瘤を放置すると炎症し、悪化の原因に繋がります。粉瘤は自然治癒しないと言われており、時間とともに腫瘍は大きくなっていきます。そして肥大化した腫瘍は破裂する可能性が高く、破裂すると炎症を起こす危険性があるため注意が必要です。炎症をおこすと大きく腫れたり激しい痛みを伴ったりする場合もあります。また炎症した粉瘤は跡が残りやすく、早めのケアが重要です。

悪化する前に早めの病院受診

「腕に膨らみがある」「徐々に膨らみが大きくなった」と違和感がある場合、自己解決せずに病院の受診をおすすめします。初期の段階では膨らみは小さく、痛みを感じない方も多くいため、粉瘤ができているとは気付きにくいでしょう。しかし悪化してから病院を受診すると、完治までに時間がかかったり治療による体への負担も大きくなったります。少しでも違和感がある際は、早めに病院で相談すると安心です。

粉瘤の治療方法!手術するケースも?

粉瘤の治療は、2種類の手術法を用いて腫瘍を摘出します。
● くりぬき法
● 切開法
ここではそれぞれの手術内容を詳しく紹介します。

くりぬき法

くりぬき法は、皮膚に小さな穴をあけて中の老廃物を絞り出し、残りの組織を引き抜いて摘出する方法です。メリットとしては、キズが小さく手術痕が目立ちにくい手術法と言えます。くりぬき法の手術時間は5分~20分と短く、日帰りによる手術が可能です。しかし炎症を起こしている場合や大きい腫瘍には、くりぬき法の手術ができない場合があります。また切開法と比べると、皮膚に組織が残ってしまうリスクがあるため、デメリットとして再発率が高いことが挙げられます。

切開法

切開法は、皮膚を切開し、粉瘤部分を全て切り取って摘出する方法です。くりぬき法で摘出手術が難しいと判断した場合に、切開法を採用しています。他にも切開法は再発率が低いため、再発を繰り返している方にも切開法で手術を行うケースもあります。切開した部分は、傷跡が残りにくいように丁寧に縫合を行うため、女性の方でも安心です。術後1ヶ月程度で傷が目立たなくなり、半年後には更に目立たない程度に落ち着いていきます。

粉瘤と間違いやすい疾患

粉瘤は見た目で判断しづらいため、他の疾患と間違われやすくなっています。ここでは4種類の類似疾患を解説します。
● 脂肪腫
● 外毛根鞘のう腫
● 石灰化上皮腫
● ガングリオン

脂肪腫

脂肪腫は、皮下に脂肪の塊が溜まる疾患です。腫瘍の大きさは様々で、数mmから10㎝以上に及ぶこともあります。特に肌の色に変化はなく、触るとブヨブヨしているのが特徴です。脂肪腫は体のどの部分にもできる疾患ですが、背中や肩、頸部にできるとこが多いとされています。見た目では良性と悪性の判断が難しく、精密検査が必要な場合があります。

外毛根鞘のう腫

外毛根鞘のう腫は、頭部にできることが多い腫瘍であり、見た目は粉瘤とさほど変わりません。大きな違いとしては、外毛根鞘のう腫は毛包峡部由来、粉瘤は毛包漏斗部由来であることです。触ると粉瘤より少し硬めな場合が多いとされています。腫瘍が大きくなると、一部がハゲてしまうことや髪質が変化する可能性もあります。外毛根鞘のう腫のほとんどが良性腫瘍ですが、悪性腫瘍に変異する恐れもあるため注意しましょう。

石灰化上皮腫

石灰化上皮腫は、石のように硬い腫瘍が特徴的な疾患です。顔や腕、首にできることが多く、ほとんどの方は痛みを感じません。肌の色は大きく変化しませんが、黄色っぽく見えることや黒っぽく見えることがあります。実際に触ってみると表面は凸凹しており、腫瘍と皮膚の境界がはっきりとしています。腫瘍が小さい段階では、石灰化上皮腫と粉瘤が区別しにくく、超音波検査やレントゲンで検査を行うことが一般的です。

ガングリオン

ガングリオンはゼリー状の塊が溜まった腫瘍であり、関節部分にできることが多い疾患です。大きさや硬さは様々で、無症状であることがほとんどです。しかし大きく変化すると神経を圧迫し、痛みや手足が動かしにくいと感じる人も存在しています。ガングリオンができた手や足は、よく動かすことで肥大化を促進する恐れがあります。ガングリオンは自然治癒することもありますが、自己判断による放置は危険であり、早めに専門医に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は粉瘤の症状や注意点、治療方法について解説しました。粉瘤は自然に治癒することは少なく、放置すると炎症を引き起こす危険性があります。また自己判断で潰したり放置したりすると悪化の原因に繋がるため、注意が必要です。粉瘤の治療には、手術を行うケースが多いため、信頼できる病院選びが重要と言えます。粉瘤でお悩みの方は、粉瘤専門医である当院にお任せください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.08.03

粉瘤が突然できた… 見分け方と治療法について解説

はじめに

粉瘤が突然できて、痛みが出ているとどうすればよいかわからないと思う方もいるかもしれません。
粉瘤は、放置すると大きくなったり、炎症したりする可能性があるため早めに病院を受診する必要があります。
この記事では、粉瘤と他の疾患との見分け方や治療法について解説します。記事を読めば、粉瘤が突然できて痛みが出ているときの対処方法がわかります。

粉瘤(アテローム)の特徴

粉瘤とは、皮膚の下に袋状の構造物が生成され、その中にはがれ落ちるはずの角質や皮脂がたまってできた腫瘍の総称のことです。粉瘤は他に転移しない「良性腫瘍」であり、初めは肌色~白色をしており、炎症を起こさなければ痛みもかゆみもありません。目立った症状がないので、病院を受診しない方が多いのが現状です。ただ、炎症を起こすと変色し、痛み、発赤、腫脹の症状が出現します。この状態は「炎症性粉瘤」と呼ばれ、すぐに治療が必要です。
粉瘤は体のさまざまな場所に突然発生しますが、特に背中、頭、顔面などに多くできます。また、中年の男性にできやすいと言われています。
粉瘤の原因は明確になっていませんが、現在考えられる原因は以下のように言われています。
● 毛穴が詰まること
● 外傷が原因で皮膚が炎症を起こしやすい
● ウイルス感染している
原因が明確になっていないため、粉瘤の予防法はありませんが、毛穴が詰まることが原因ということはわかっているため清潔にする必要はあるでしょう。

粉瘤に似た皮膚疾患

粉瘤に似た皮膚疾患はいくつかあり、ここでは代表的なものを紹介します。
● ニキビ
● 脂肪腫
● イボやおでき(せつ・よう)
● ガングリオン
それぞれの疾患との見分け方を解説します。

粉瘤とニキビの見分け方

ニキビは、毛穴に皮脂がつまって炎症を起こして、赤く腫れることがあります。粉瘤は、初期にはしこりがある程度ですが、何かのきっかけで細菌に感染して炎症すると赤くなります。そのため、ニキビと似たような外見になる可能性があるでしょう。粉瘤とニキビを見分けるポイントは以下の通りです。
粉瘤には開口部(黒い点)がある
粉瘤は悪臭がする
粉瘤はニキビの市販薬では治らずに徐々に大きくなる
粉瘤には、開口部と呼ばれるものが中央にあり、黒い点に見えます。粉瘤は、中にある老廃物から悪臭がします。また、ニキビは大きくなっても数ミリ程度にしかなりませんが、粉瘤はそのままにしていると徐々に大きくなり数センチ以上になることがあります。粉瘤は自分で治療することはできないので、サイズが徐々に大きくなっている場合には粉瘤を疑って病院を受診するようにしましょう。

粉瘤と脂肪腫の見分け方

脂肪腫は、脂肪細胞の増殖によってできる良性の腫瘍で、柔らかい「しこり」です。脂肪腫は、粉瘤と比べて柔らかく、皮膚の下で動きます。粉瘤は弾力がある硬い「しこり」であり皮膚にくっついて動くため、脂肪腫と区別しやすいでしょう。また、粉瘤はそのままにしていると徐々に大きくなりますが、脂肪腫は長年サイズが変わらないことが多いと言われています。脂肪腫と考えられる腫瘍であって瘍の可能性があるためすぐに受診する必要があります。粉瘤は放置していても治らないため、サイズが小さいうちに病院を受診しましょう。、急に大きくなった場合は悪性腫

粉瘤とイボとおでき(せつ・よう)との見分け方

イボには多くの種類がありますが、ウイルス性によるものと、加齢や紫外線が原因のものに分けられます。外見は、皮膚にできた表面がブツブツした1㎝程度の隆起であり、多くが集まって発生します。一般的には、痛みやかゆみもなく、粉瘤とは外見が異なるため判別しやすいでしょう。おできは、黄色ブドウ球菌などの細菌に感染することで、初期から炎症を起こして痛みを伴います。脇や鼠径部、お尻などにできることが多く、初期からしこりに厚みがあります。粉瘤は、初期から炎症していることは少ないため、初期段階の症状で区別できるでしょう。

粉瘤の治療法

粉瘤は他に転移しない「良性の腫瘍」ですが、サイズが大きくなったり、悪臭を放つようになったりすると治療する必要があります。また、粉瘤が炎症を起こして痛みや腫れがひどくなり重度になった場合は膿を外に出す切開排膿処置します。その後、炎症が落ち着いたら、粉瘤を取り出す手術をする必要があるでしょう。
ここでは、抗生剤治療、手術法のくりぬき法、切開法について解説します。

抗生剤治療

粉瘤の中でも3㎜以内で小さいものや、炎症があって軽い場合には抗生剤を投与し、炎症の鎮静化を図ります。ただ、抗生剤治療による効果は限定されており、根治できないと考えられています。炎症が中等度の場合には抗生剤の投与ではほとんど効果がなく、痛みが続く場合があるでしょう。
手術をすぐに行うことで痛みが長引くことはないため、抗生剤治療をおすすめしていない医師もいます。抗生剤の治療後には、手術にて粉瘤の構造物や袋そのものを取り除くことが必要です。

くりぬき法

特殊な器具(トレパン)で粉瘤の中心に4~5㎜程度丸く切開し、そこから構成物(膿、皮脂、角質)を取り除きます。粉瘤を構成している壁まで全て取り除く手術法であり、炎症がある場合にも粉瘤を完全に取りきれます。また、傷口が小さいため縫合する必要がなく、後述する「切開法」と比較して傷跡が目立ちにくいでしょう。手術時間も、短時間で終了するため、患者への負担も少ないと言われています。くりぬき法のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
● 炎症があっても手術可能
● 傷跡が小さい
● 手術は1回で終わる
● 5~20分程度で終わる
● 炎症の引きが早く、回復が早い

デメリット
● 大きな腫瘍(5㎝以上)には適応していない
● 炎症を何度も繰り返している硬い粉瘤には適応していない
● 周囲との癒着が強い粉瘤には適応していない
● 癒着している場合に取り残しが発生することがある
● 取り残した場合には再発のリスクがある
● 熟練した技術が必要

手術後は、3~5日程度は傷に少量の出血があるため、ガーゼ保護や絆創膏を貼りかえる処置する必要があります。傷に問題がなければ、翌日からシャワー可能であり、傷は石けんをつけて優しく洗い流しましょう。傷は、通常1~2週間で治ります。自分の粉瘤がくりぬき法の適応になるかどうかは病院を受診して判断してもらいましょう。

切開法

メスで粉瘤の周囲を切開し、中に溜まった膿や皮脂、垢などを丸ごと取り除きます。ただ、粉瘤の壁の部分は皮膚に残ったままなので、いずれは再手術する必要があるでしょう。また、粉瘤の壁部分が残っていると、炎症反応は続き痛みが引くまでには時間がかかると考えられています。粉瘤の大きさに傷を切開するため、くりぬき法よりも傷が大きくなります。切開法のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット
● 手技が簡単

デメリット
● くりぬき法よりも傷が大きくなる
● 粉瘤の壁があるため、炎症が続く
● 再手術する必要がある

傷が落ち着いてから2~3ヶ月後に再度手術をします。日本では昔から最も多く行われている手術法ですが、経過が長くなるためできるだけくりぬき法を行い、1回で済ませる方がよいでしょう。

まとめ

粉瘤が突然できて、痛みが出てきた場合には、炎症を起こしている可能性が高いでしょう。そのため、なるべく早く他の疾患と見分けて、すぐに治療を開始する必要があります。病院を受診して、粉瘤の炎症程度に応じた治療を選択するようにしましょう。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.08.03

粉瘤はなぜできるの?できものの専門医が徹底解説!

はじめに

粉瘤ができていて、このままにして良いのか不安に思っていませんか?粉瘤は良性の場合が多いですが、放置しておくリスクもあるためなるべく早く病院を受診する必要があるでしょう。当記事では、粉瘤のできる原因や症状、粉瘤に似た皮膚疾患や治療法について紹介します。記事を読めば、粉瘤ができた時にどのように対応すればよいかがわかります。

粉瘤(アテローム)とは

粉瘤とは、皮膚下に袋ができて、その中に垢や皮脂がたまってできた腫瘍の総称のことです。腫瘍というと「癌」を想像するかもしれませんが、粉瘤は他に転移しないと言われる「良性腫瘍」です。外見は半円上にもり上がった「しこり」であり、中央に黒い点があります。初期に自覚症状はなく、かゆみや痛みはありません。しかし、細菌が侵入すると炎症を起こして痛みや腫れが出てくることもあります。

粉瘤はなぜできるのか

粉瘤がなぜできるかについては、現在のところ明確になっていませんが、考えられているものは以下の通りです。
● ケガや炎症で皮膚が化膿しやすくなる
● 垢や皮脂により毛穴が詰まる
● ウイルス感染している
毛穴が詰まることが原因の1つと考えられているため、不潔にするとできると思われていますが、できやすい体質の人がいることはわかっています。

粉瘤ができやすい人の特徴

粉瘤は中年男性にできやすく、男性の発生率は女性の約2倍という論文があります。中年男性の人は、粉瘤ができやすいため注意が必要です。

粉瘤の予防法

粉瘤を予防する方法は、粉瘤の発生原因が明らかになっていないため、現在のところ明確に判明していません。ただ、毛穴の詰まりや皮膚が炎症を起こすることが原因とわかっているため、できる限り皮膚の状態を清潔にする必要があるでしょう。

粉瘤の特徴

次に粉瘤の症状やできやすい部位、リスクについて分けて解説します。粉瘤ができて気になっている人は、参考にしてください。

粉瘤の症状

粉瘤の症状にはさまざまなものがあり、特有な症状がいくつかあります。
● 中央部に皮膚表面につながる開口部(小さな黒い点)がある
● でき始めの小さな粉瘤は肌色や白色である
● 開口部を押すと、ドロドロとした臭いものが出てくる
● 時間が経つにつれて膨らんでくる
● サイズが膨らんでくると色が変わることがある(青、黒、黄色)
● 感染や炎症によって赤く腫れて、痛むことがある
● 放置していてもなくならない
放置していてもなくならないため、このような症状がある場合には、病院を受診するようにしましょう。

できやすい部位

粉瘤は、体のさまざま部位にできる可能性があり、粉瘤の約60%が首・背中・顔面にできると言われています。そのため、皮脂の分泌が関与している可能性があるようです。また、足の裏に発生する場合もあり、その場合は若年者(20歳±10.2歳)に多いと言われています。

粉瘤のリスク

粉瘤は他に転移しない「良性の腫瘍」と言われており、リスクは少ないと言われています。しかし、放置していると以下のようなリスクがあります。
老廃物がたまって大きくふくらんでくる
悪臭がする
細菌が入り込んで炎症を起こして膿が出てくる
症状のところでも述べましたが、時間が経つと粉瘤の中身が増えて大きくふくらむ可能性があります。また、老廃物の貯留により悪臭を放つようです。さらに、細菌が入り込むと感染し炎症を起こし痛みが出てきて、膿がでるようになります。
また、まれですが、経過が非常に長くサイズの大きなものや炎症を繰り返したものは悪性化(がん化)したという事例があります。中高年男性のおしり、頭部、顔面に生じたものが悪性化したというものです。「粉瘤が長い期間ある」、「急にサイズが大きくなった」、「皮膚に炎症を繰り返している」などという症状がある場合には、病院を受診するようにしましょう。

粉瘤に似た皮膚疾患

粉瘤に似た皮膚疾患は、以下のようなものがあります。
ニキビ
脂肪腫
せつ(おでき)
ガングリオン

ニキビ

ニキビは、ホルモンバランスの乱れによって起こると言われています。できる部位は背中や胸などであり、粉瘤ができる部位と似ています。しかし、ニキビは10㎝以上になることはなく、悪臭がすることはありません。ニキビの薬を塗っても治らない場合には、粉瘤であることを疑いましょう。

脂肪腫

脂肪腫は、皮膚と癒着しておらず皮膚の下で動く腫瘍です。粉瘤は固くて弾力がありますが、脂肪腫はやわらかい「しこり」であり、触った感覚が異なります。また、粉瘤のように炎症を起こしたり、痛みや匂いがしたりすることはありません。

せつ(おでき)

せつ(おでき)は菌の感染によってでき、高齢者・糖尿病患者・肥満者にできる皮膚の疾患です。初期は「しこり」のようであるため粉瘤と似ていますが、せつは初期から痛みが出やすい特徴があります。初期に痛みのない粉瘤と区別できるでしょう。

ガングリオン

ガングリオンは、ゼリー上の粘液が貯留してできた「しこり」で、関節の周囲にできやすいと言われています。20~50歳に多く、若い女性に見られ、痛みは出ません。ただ、ガングリオンが神経を圧迫すると痺れや痛みを起こすことがあります。

どの疾患も粉瘤と症状は異なりますが、自分で判断できない場合には病院を受診するようにしましょう。

粉瘤の治療法

粉瘤は良性の腫瘍と言われているので、治療が絶対に必要というわけではありません。本人が気になっておらず、粉瘤が小さければ、何も処置しない場合もあります。
ただ、粉瘤の内部に老廃物がある限り完全に治ることはなく、飲み薬や塗り薬で治すことはできません。そのため、基本的に手術による治療が必要です。
炎症している粉瘤の場合は、膿を覆っている袋が周囲とくっついているため、そのまま取り除くことはできません。この場合には、袋から菌を除去する治療から行います。菌を除去する方法は、塗り薬で小さくしたり、抗生剤の内服をしたりします。また、切開して膿を外に出し菌を除去する方法です。
以下では、炎症が軽度の場合や炎症がない場合の手術法である「くりぬき法」と「切開法」について紹介します。

くりぬき法

特殊な器具(トレパン)で粉瘤の中心を4~5mmほど丸く切開し、構造物を絞り出し、取り除く手術方法です。なるべく小さな切開により腫瘍を摘出でき、手術時間も5分~20分で可能です。傷の部分も縫わないため、傷跡も目立たず、顔面などに適しています。
後述する「切開法」よりも傷跡が小さく目立ちにくいと言われていますが、袋の周囲の癒着が強い粉瘤ではすべてを取りきれない場合もあります。取り切れない場合には、再発するリスクがあるため注意が必要です。

切開法

粉瘤の周りを切開し粉瘤を切除して縫合するため、再発のリスクは軽減できますが、傷跡が残るデメリットがあります。局所麻酔をした後に真ん中の皮膚を切り取り、粉瘤の壁に沿って構造物を摘出し、止血後に傷を縫合します。
なるべく傷あとを残さないように切開を小さくしていますが、粉瘤の大きさと同じ長さの線の傷跡が残るため、傷跡を残したくない人にはおすすめできません。

まとめ

粉瘤は出来始めには自覚症状もなく、痛みもありません。しかし、放置するとサイズが大きくなったり、イヤな臭いを発したりする可能性があります。また、悪性化する事例もまれにあるため、粉瘤ができて気になっている方は、早めに病院を受診するようにしてください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.05.29

小さい粉瘤でも放置は厳禁!早めの対策が必要な理由

はじめに

粉瘤(アテローム)とは、皮膚にできる良性腫瘍のひとつです。
「小さいから大丈夫だろう」と放置してしまうと、さまざまなリスクがあります。粉瘤は、ニキビや脂肪腫などと勘違いされやすい症状ですが、自然治癒することはありません。市販の薬では自力で治すこともできないため、早めに病院を受診することをおすすめします。粉瘤は、小さいうちに取り除くことが最適だからです。
本記事では、粉瘤ができてしまった場合の注意点や対処方法を紹介します。粉瘤ができてしまって、どのように処置すればよいのか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

粉瘤(アテローム)とは?

粉瘤とは、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が皮膚内に袋状に溜まった「しこり」のことです。良性の腫瘍で、ドーム状に膨らみ中央に黒点が見えることもあります。老若男女問わず誰にでもでき、全身のどこにでも発症します。
老廃物が溜まることにより、独特のにおいを発するのが特徴です。
体質にもよりますが、ひとつできてしまうと他の場所にもできてしまうことはよくあります。
また、悪化すると全身に菌がまわり、発熱する可能性もあるので注意が必要です。
一番してはいけないのが、気になっていじったり自分でつぶしてしまったりすることです。細菌感染によって炎症を起こすきっかけになるので、絶対にしてはいけません。炎症を起こすと、自身が辛いだけでなく治療もしづらくなってしまいます。

粉瘤は自然治癒しない

粉瘤を根治させるためには、外科手術が必要です。
最初の段階では痛みも感じないため気づきにくいことも多いですが、放置していると徐々に大きくなり、赤く腫れあがり痛みを伴います。手術の際は、老廃物のたまった袋を完全に取り出さなければいけません。少しでも取り残してしまうと再発の可能性があり、大きくなってから治療すると痕が残りやすくなるため、小さいうちに手術で取り除くのが最善な治療方法です。

粉瘤の原因

粉瘤が炎症を起こしてしまう原因は、明確には分かっていません。症状の程度は、人によって異なります。
炎症を引き起こす原因が明確ではないため、効果的な予防方法も分からないのが現状です。
そのなかでも、考えられる原因は以下の通りです。

細菌感染による炎症

人の皮膚には、さまざまな細菌がいます。目には見えないこの菌を、「常在菌」と呼びます。
常在菌は、人の肌を守る役割があるため必要な菌です。普段は悪さをすることはありませんが、粉瘤のなかで菌が増えてしまうと、人間の体は防衛反応を示します。防衛反応が働くことによって、炎症を引き起こしてしまうのです。

異物反応による炎症

圧力を受けるなど、外部からの刺激によって炎症を起こすことを「異物反応」と呼びます。
外部からの刺激を受けることによって、粉瘤の袋が破けてしまい、結果として炎症を引き起こします。炎症を起こした粉瘤は、ぶつけたり擦れたりするなどの些細な衝撃でも破裂しやすくなります。
粉瘤が炎症を起こす原因は、異物反応による炎症のケースが多いことが分かっています。

粉瘤を放置することのリスク

粉瘤は、自然治癒することはありません。薬で治すこともできません。
何もせず、粉瘤を放置してしまうと炎症を起こし悪化してしまいます。はじめは小さな粉瘤でも、次第に大きくなり症状によっては膿んでしまい、強い痛みが生じます。痛みの程度は個人差がありますが、なかには日常生活に支障をきたすほどの痛みを感じる方もいます。繰り返し炎症を起こしていると、最悪の場合、元の状態に戻らなくなることもあります。
まれに悪性腫瘍になることもあるので、小さいからといって放置するのはおすすめできません。

また、粉瘤は小さいうちに取り除くことが良いとされています。
粉瘤が大きくなると傷跡も大きくなるためです。小さいうちに取り除けば、傷跡も小さく済みます。
粉瘤を取り除くためには、外科手術が必須です。粉瘤は、袋ごと完全に取り除かなければ完治しません。手術の際に少しでも取り残しがあったり、何もせずに放置したりすると何度でも再発してしまうのです。繰り返す痛みは辛いものです。粉瘤を放置しておくメリットはひとつもありません。

粉瘤と間違えやすい症状

粉瘤と見分けづらく、間違えやすい症状を紹介します。
自分で判断できない場合は、早めに病院を受診しましょう。

ニキビ

ニキビは、毛穴に皮脂が詰まることによって炎症を起こし赤く腫れる症状で、よく粉瘤と勘違いしやすい代表例です。
粉瘤の初期段階では見分けやすいですが、炎症を起こしてしまうと、ニキビと見分けづらくなります。ニキビの場合、市販の外用薬などで症状は改善されますが、粉瘤の場合、外用薬では効果を得られません。
また、ニキビは、炎症を起こし腫れてしまっても数ミリ程度です。粉瘤の場合は、徐々に大きくなり数センチに及ぶこともあります。
また、においも見分けるポイントです。粉瘤は、つぶれていなくても独特なにおいを発する場合があります。

脂肪腫

脂肪腫は、皮膚の下に脂肪細胞が増えて発生する良性腫瘍で、粉瘤とよく似ています。
粉瘤は、ドーム状に膨らんだ開口部の中央に黒点が見えることがありますが、脂肪腫の場合、肌の色は変わりません。
脂肪腫は触ると動き、やわらかいしこりを感じます。一般的に、かゆみや痛みを伴いません。

粉瘤の治療法

粉瘤は、サイズに関係なく薬で治すことができません。必ずしも取り除かなければいけないわけではありませんが、放置しておくと大きくなり炎症を起こしてしまう可能性があるので、小さい段階で取り除くことが望ましいとされています。
まれに粉瘤ではなく、悪性腫瘍の場合もあるため、「小さいから」といって放置しておくのはおすすめできません。
粉瘤を取り除くには外科手術が必須で、健康保険が適用されます。
粉瘤の手術方法は、以下の通りです。

くり抜き法

粉瘤のサイズが小さい場合に行われる手術方法です。
皮膚に小さな穴を開け、袋ごと取り出します。傷跡が小さく、縫合が不要なケースが多いので痕に残りづらいのが特徴です。
手術時間も短いため、患者様への負担が少なく済みます。
サイズが大きくなってしまうと、くり抜き法で行えない場合があります。

切開法

粉瘤のサイズが大きい場合に行われる手術方法です。
皮膚を切開し、粉瘤をまるごと取り出します。再発する可能性は低くなりますが、くり抜き法に比べると傷跡が目立ちます。手術の際は局所麻酔をしますが、日帰りも可能です。

粉瘤の状態にもよりますが、手術痕が全く残らないということはありません。しかし、小さいうちに手術をすれば傷跡も小さく済むのも事実です。
できるだけ早い段階での手術を推奨しています。

まとめ

粉瘤は、小さくても放置してはいけません。
放置していると赤く腫れあがり、痛みを伴った炎症を引き起こします。悪化してしまうと自身が辛いだけではなく、手術の痕も大きくなってしまうため、早めの治療に越したことはありません。
自然治癒することはないので、気になるできものができた場合は、我慢せずに早めに専門医に相談しましょう。
当院では、患者様の症状に合わせ適切な手術方法を選択しています。手術の際に、極力痛みを感じない方法もご提案しております。他の症状と見分けがつかない方も、お気軽にご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.05.29

粉瘤(アテローム)が痛い!炎症の原因と治療法を解説

はじめに

粉瘤(アテローム)は、体のどこにでもできる袋状の良性腫瘍です。
最初は小さく、痛みも感じないため気づかないこともよくあります。粉瘤は自分で治すことができず、自然治癒もしません。放置していると悪化してしまう可能性があるので、粉瘤ができた場合は、痛みを感じていなくても早めに専門医に相談することが大切です。特に、赤く腫れていて痛みを伴う症状がある方は要注意です。
本記事では、粉瘤ができる原因や治療方法について解説します。

粉瘤(アテローム)とは?

粉瘤とは、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が皮膚内に袋状に溜まった「しこり」のことです。良性の腫瘍なので、他の場所に転移することはありません。老若男女問わず、誰にでも起こりうる症状で、顔や首、背中など全身のどこにでもできます。
粉瘤は、初期段階ではあまり目立ちません。触れると小さなしこり程度に感じます。炎症を起こしていない場合、痛みやかゆみを感じることはありません。しかし、炎症を起こすと赤く腫れあがり、さまざまな問題を引き起こします。程度は人によってさまざまですが、日常生活に支障をきたすほどの痛みを伴うこともあります。
粉瘤は、ドーム状に膨らんでいて、開口部の中央に黒い点が見えることがあり、つぶれていなくても独特のにおいを発することもあります。

粉瘤は自然に治らない

ニキビと勘違いされやすい粉瘤ですが、ニキビと大きく異なるのは「自然治癒しない」ということです。粉瘤は、袋状の腫瘍を外科手術によって除去しなければ完治することはありません。仮に症状が落ち着いていても、老廃物が溜まることによって再発します。
また、無理につぶしたりいじったりすると症状は悪化し、まわりの皮膚との癒着も起きやすくなります。悪化してから専門医で処置をしても、痕が残ってしまうこともあります。
粉瘤は、自力で治すことはできないので早めに専門医に相談することが最適です。

粉瘤が炎症を引き起こす原因

粉瘤は、炎症を起こすと赤く腫れあがり痛みが生じます。炎症の程度は、人によって異なります。
炎症を起こしてしまう原因は明確には分かっていませんが、考えられる原因は以下の通りです。

細菌感染による炎症

人の皮膚には、目に見えないさまざまな細菌がいます。この菌を、「常在菌」と呼びます。
常在菌は人の体に必要な菌で、肌を守る役割があるため日ごろは問題を起こしません。しかし粉瘤のなかで細菌が増えると、人間の体は防衛反応を示します。防衛反応が働くことによって、炎症を引き起こしてしまうのです。

異物反応による炎症

摩擦や圧力を受けるなど、外部からの刺激によって炎症を起こすことを「異物反応」と呼びます。外部から圧力を受けることによって、粉瘤の袋が潰れてしまい、結果として炎症を引き起こします。
これまでは、粉瘤が炎症を引き起こす主な原因は細菌感染であると考えられていました。しかし最近では、異物反応によって炎症を引き起こすケースが多いと考えられています。

もしかして粉瘤?痛みを伴うしこりができたときに考えられる症状

しこりに痛みがある場合、粉瘤の可能性が考えられます。
さらに痛みを伴い赤く腫れあがってしまった場合、炎症性粉瘤の可能性があります。

炎症性粉瘤

炎症性粉瘤とは、痛みを伴い粉瘤が赤く腫れあがった状態のことです。
痛みの程度は人によってさまざまですが、日常生活に支障をきたすほどの痛みを感じることもあります。また、全身に菌がまわり発熱することもあります。
炎症性粉瘤は、炎症が進行するにつれて皮膚が柔らかくなり熱を持ってきます。そのため、些細な衝撃で破裂してしまうことが多いのです。
粉瘤ができると、気になって触ったりつぶしたりしたくなりますが、決してしてはいけません。膿が溜まり、粉瘤が破れてしまうと周りの組織にも膿が広がり、さらに症状が悪化する悪循環に陥ります。炎症が長引くと、皮膚の組織を破壊し壊死してしまうケースもあるので注意が必要です。色素沈着によって痕が残ってしまう可能性もあるので、早期の治療が最善です。
粉瘤は、自然治癒することはありません。大切なのは、「放置をしないこと」です。炎症を起こしている場合は、破裂する前に病院を受診し適切な処置をしてもらいましょう。

粉瘤の治療法

粉瘤は、自然治癒することはなく薬で治すことができません。必ずしも取り除かなければいけないわけではありませんが、放置していると大きくなってしまったり炎症を起こしてしまったりする可能性があります。そのため、小さい段階で取り除くことが望ましいとされています。
まれに粉瘤ではなく、悪性腫瘍の場合もあるため、小さいからといって放置しておくのはおすすめできません。
粉瘤を完全に取り除くには外科手術が必要で、健康保険が適用になります。
手術の際は、局所麻酔をするため痛みを感じることはほとんどありません。しかし、局所麻酔は注射で行うため、麻酔時は痛みが発生してしまいます。医療技術の進化によって、痛みを軽減する工夫をしている病院も多くあります。
粉瘤の手術方法は、以下の通りです。

くり抜き法

粉瘤のサイズが小さい場合に行われる手術方法です。
皮膚に小さな穴を開け、袋ごと吸い出します。傷跡が小さく済み、縫合が不要なケースが多いので痕が残りにくいのが特徴です。
手術時間は、5〜20分と短いため患者様への負担が少なく済みます。
サイズが大きい粉瘤や、炎症を繰り返していて癒着の強い粉瘤の場合、くり抜き法で行えない場合があります。

切開法

粉瘤のサイズが大きい場合に行われる手術方法です。
粉瘤の周辺に局所麻酔を行い、メスで皮膚を切開し、粉瘤をまるごと取り出します。再発する可能性が低い手術方法です。症状によっては、切開方法が望ましい場合があります。

手術後は、毎日ガーゼを交換し傷口を清潔に保ちます。
日帰り手術の場合でも、術後の飲酒や運動は避けましょう。
傷跡は、2〜3週間後1度硬くなりますが、その後徐々に柔らかくなっていきます。粉瘤の状態にもよりますが、手術痕が全く残らないということはありません。可能な限り目立たない方法で手術を行いますが、体質によってはケロイドや肥厚性瘢痕で傷跡が赤く盛りあがることがあります。
また、炎症の期間が長く症状が悪化している場合、1度に摘出できない場合があります。全て摘出できなかった場合、再発のリスクがあります。
そのため、できるだけ早い段階での手術を推奨しています。

また、抗生物質を使用することもあります。
炎症が軽度の場合は、炎症を治めることができますが、根本的な解決にはなりません。細菌感染が原因でなければ、治療に抗生物質を使っても効果はあまり期待できないためです。
再発の予防のためにも、外科手術での治療を推奨しています。

まとめ

粉瘤は、誰にでも起こりうる症状で顔や首、背中など全身のどこにでもできます。
赤く腫れ痛みを伴う場合は、炎症性粉瘤の可能性が考えられます。また、粉瘤は自然治癒することはありません。小さい段階で取り除くことが望ましく、外科手術が必要になります。
気になるしこりやできものができた場合は、触ったりつぶしたりせずに早めに専門医に相談しましょう。
当院では、日帰り手術が可能です。手術の際には、極力痛みを軽減する配慮を行っております。患者様に合った治療方法をご提案し、不安を解消できるようご相談を大切にしています。繰り返しになりますが、粉瘤は早めの処置が非常に大切です。24時間Web予約も承っていますので、ぜひ1度ご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.05.29

皮膚にできたしこりは粉瘤なの? 特徴や原因について紹介

はじめに

皮膚にしこりのようなものができて不安に感じておられるかもしれません。
それは粉瘤という腫瘍の一種である可能性があります。放置すると悪化する病気でもあるので注意が必要です。
がんとは異なる病気ですが、放置しておくと大きくなって痛みや圧迫感を引き起こすこともあります。ふっくらとして見た目や臭いという表面的な症状としても現れてきます。
粉瘤かもしれないと感じている人は適切な医療機関で診察を受け、医師の決定に基づいた適切な治療が必要です。
そこでこの記事では、粉瘤の特徴や粉瘤ができてしまう原因、また正しい治療法や、完治させるために手術が必要な理由などについて解説していきます。

粉瘤とは?

粉瘤に限らず、初期症状に痛みが伴わない病気は「命の危険がないため、ある程度は放置しても良い」と思われがちです。
しかしその特徴や原因、リスクなどについてわかると、早期に治療した方が良い理由を理解できるでしょう。
そこでまずは「粉瘤とは何か」という点について、詳しく解説していきます。

粉瘤の特徴

「粉瘤」とは、皮膚の下にある袋状の組織に垢や皮脂などの老廃物が溜まることで一部の皮膚が膨れた状態になることです。
粉瘤は身体のどの部分にでもできる可能性があり、触れるとしこり・ふくらみとして目で認識できますが、小さいうちは見逃されることもあります。
しかしこぶが巨大化したり、悪臭を発したり、炎症を起こすなどの症状は特有のものであるため、そこまで進行すると粉瘤だと明確に判別できます。
粉瘤は腫瘍の一種ですが良性腫瘍であるため、それ自体が命の危険につながることはほぼありません。
しかし治療方法に関しては基本的に手術以外に方法がなく、治療を受けるタイミングを逃すとさらに巨大化して治療が困難になることもあります。
非常に少例ながら悪性化したケースもあるため、どちらにしても早期発見・早期治療が重要です。

粉瘤ができる原因

粉瘤はいわば「老廃物の塊」です。人間の皮膚組織は常に古いものから新しいものに入れ替わっています。
その過程においてめくれている皮膚から古い皮脂や角質が入り込み、入り込んだ老廃物が排出されずに袋の中で溜まってしまうことが主な原因とされています。
また、乳頭腫などのウイルスに感染することが原因で生成される場合もあります。
粉瘤自体はほとんど外的要因によりできるものですが、何度も再発する人には「汗っかきである」とか「皮脂の分泌量が多い」などの体質が共通している可能性が高いとされています。

粉瘤が炎症を起こす要因

粉瘤はただ老廃物が溜まるだけでなく炎症を伴う病気であり、炎症を起こす原因についてわかると、適切な治療を早期に行うことの必要性を理解できるでしょう。
そこで次は、粉瘤が炎症を起こす主な2つの原因について解説していきます。

医学的要因

外的要因およびウイルスによって生成されますが、炎症を伴う場合は角質が露出したことで異物反応を引き起こしていることが原因とされています。
粉瘤には一定のライフサイクルがあり、初期の炎症を伴わない粉瘤は放置していても何も問題ありませんが、何らかの原因によって炎症が生じることでこぶが成長し、赤く腫れるといった症状がみられるようになります。
さらに症状が進行すると膿が溜まってこぶが巨大化し、最後には破裂に至る、というライフサイクルになります。
最後に破裂するなら放置しても良いと思われるかもしれませんが、このライフサイクルは繰り返されます。
破裂後にはいったん症状が落ち着きますが、根本の原因を除去できていないため再発してしまいます。
だからこそ手術による「除去」が必要であり、最初から抗生剤を投与する治療法などは効果が低いとされています。

心理学要因

直接的な要因ではありませんが、ストレスなどの心理的影響により、ターンオーバー(皮膚の入れ替わり)の乱れが発生することが、粉瘤が生成される一因となっているという見方もあります。
皮膚の表皮は角層から基底層までの多層構造で成り立っており、数週間かけて基底層から徐々に新しい細胞が古い細胞を押し出すことで、肌のターンオーバーは完了します。
規則正しい生活を続けている限りターンオーバーは正常に肌の交換を行い続けます。
しかし慢性的なストレスや食生活・生活習慣が乱れたり、長時間紫外線に当たったり、肌に合わない化粧品を使うことなどでも、ターンオーバーは容易に乱れます。
粉瘤だけでなく肌のトラブルや皮膚の病気を避けるためには、肌のケアだけでなく体全体のケアが欠かせないといえます。

粉瘤と思われるしこりが出来たときの対処法

粉瘤のようなしこりができた場合、自己判断せずにすぐに医療機関を受診するべきです。粉瘤は大きさが大きければ明らかに異常なしこりだと分かりますが、初期はできもののように小さく、中には「ただ虫に刺されただけ」と勘違いする人もいるでしょう。
また「脂肪腫」と勘違いするケースもあり、初期段階ではこぶが粉瘤なのか分かりにくいことが多いため、不審なしこりを発見したらすぐに医療機関を受診するべきです。
放置すると違和感や痛みが強くなっていくだけですし、破裂が再発を招くリスクも高くなるため、放置するメリットはまったくありません。
くわえて医療機関を選ぶ際は、粉瘤治療において高い実績があるところや経験豊富な専門医がいるところを選びましょう。
また粉瘤治療の設備が整った医療機関を選ぶことで、検査や手術などがスムーズに行えるだけでなく治療後も安定します。
当院はできものを専門としたクリニックであり、粉瘤や脂肪腫、ニキビなどの治療実績が高く、多くの専門医が勤務しています。
気になるできものがあれば、是非相談してみてください。

粉瘤を除去する方法

粉瘤は外的要因やそのライフサイクルにおいて自己破裂することがあります。しかし粉瘤の破裂は病気の終わりを指しておらず、たとえ破裂した後でも適切な治療を行う必要があります。
そこで次は、粉瘤の再発を予防するために重要な、2つの除去手法について解説していきます。

くりぬき法

粉瘤の治療方法の一つである「くり抜き法(へそ抜き法)」とは、その名の通り嚢腫をくり抜くように老廃物および嚢腫を摘出する方法です。
この方法では特殊な器具を用いて皮膚の一部に穴を開け、老廃物と嚢腫を摘出したのちは開放創(自然治癒が可能な傷)にして経過を観察します。
くり抜き法は現状もっとも粉瘤に対して有効な手法で、手術跡が残りにくく再発する可能性も低いというメリットがあります。
ただし再発を重ねたことにより皮膚が瘢痕化している場合などはくり抜き法が使えないため、次に紹介する手法を用いることになります。

切開法

切開法とは、皮膚を切開して直接老廃物を掻き出したのち嚢腫を完全に除去する手法です。
この方法は主にくり抜き法が使用できない、大きなしこりや治療を何度も繰り返している場合に用いられます。
術後はなるべく傷が開かないように過ごすだけでなく、医師の診断に応じて一定期間は入浴を控える必要があります。

粉瘤は治療するのがおすすめ

粉瘤は良性腫瘍ですが放置すると悪化し、見た目にも異常が目立つ病気です。
悪化させないために、できたしこりが粉瘤かどうか分からないような場合にも、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

当院の特徴

「手術するから入院が必要なのでは?」と考える方もいますが、当院では基本的に手術したその日にお帰りいただけます。
痛みや炎症を伴う炎症性粉瘤に移行した場合でも同様です。
ただし粉瘤が大きくなりすぎた場合や炎症が強い場合、悪性化の疑いがある症例には提携している大学病院を紹介させていただくこともあります。
いずれにしても安心して適切な治療が受けられるような支援体制が整っていますので、ご安心ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.05.29

大きい粉瘤は放置しても大丈夫なの? 粉瘤の正しい処置を徹底解説

はじめに

皮膚に大きなしこりができたことで不安に感じている方はいらっしゃるでしょう。それは腫瘍の一種である「粉瘤」の可能性があり、大きい粉瘤を悪化させないためにはすぐにでも治療が必要です。
腫瘍といっても一般的に命にかかわる腫瘍ではありませんが、粉瘤は徐々に大きくなりますし、症状が進行すると中身が漏出したり、漏れ出た膿によって強い悪臭を発したりするようになります。
治療が面倒で放置している方も、健康だけでなく自分の見た目や印象にも影響するとなると、粉瘤が大きくなる前に治療したいと考える方は多いでしょう。
そこでこの記事では、粉瘤の特徴や大きい粉瘤ができる原因、また医療機関で用いられる主な治療法についても詳しく解説していきます。

粉瘤の特徴

皮膚の下にある袋状の組織に皮脂や角質などの老廃物がたまったものが、いわゆる「粉瘤(アテローム)」と呼ばれるものです。
袋の中に溜まる老廃物とは主に垢や皮脂であるため、身体のどの部分にでもできる可能性がありますが、とりわけ顔や背中、手足などはできやすいとされています。
見た目だけは脂肪腫とよく似ていますが、そちらの中身は脂肪であるため実は全く違う病気です。
見た目はこぶのようなものなので、大きくなってからだと判別しやすいですが、小さいうちは全く気付かないこともあります。
虫に刺された、またはできものや水虫ができただけと勘違いして、自分で潰してしまう人もいます。
粉瘤は最終的に破裂しますが、一度破裂しても治らずに再発する可能性が高いです。そのため、膿が大量に溜まり大きくなってしまった粉瘤を除去するためには、基本的には外科的手術が必須となります。

粉瘤の原因

粉瘤ができる主な原因はいまだ完全に解明されていませんが、外的要因が大きいとされています。
もっとも有力なのが、一部の皮膚がめくれることで皮脂や角質が入り込みやすくなり、それらが排出できなくなることによってできる、というものです。
溜まった皮脂や角質が自然と排出されずに袋の中に溜まることで、外から見ると大きなしこりやこぶのように見えるまで成長します。
皮膚にしこりができる病気は、代表的な「痒疹」の他にも「脂肪腫」や「脂腺増殖症」、「ガングリオン」や「鶏眼」などがあるため、自分で見極めるのは難しいです。
基本的にどれだけ大きい粉瘤でも「良性腫瘍」であるため基本的には根本から切除すれば問題ありませんが、ごく稀に悪性腫瘍となり転移するケースがあるため、特に悪性化のリスクが高まる年齢の高い方は決して油断できません。
とりわけ汗をよくかく方や皮脂分泌量が多い方にできやすいとされており、一度できると何度も再発する可能性があります。そのため、根本から粉瘤を取り除くための手術が必要なのです。

粉瘤を放置するとどうなる?

粉瘤は最初小さいサイズであり、できものとほぼ見分けがつかないことも多いです。初期段階ではまだ炎症が発生していないため、特別な治療は必要ありません。
しかし一度炎症が発生することで、そこから症状が進行します。炎症期には赤みや軽度の痛みを伴うようになります。
この段階でもまだ軽度であるため油断して放置すると、やがて膨張期に突入します。膨張期ではさらに症状が進行し巨大化しているため、強い痛みや悪臭を発するようになることもあります。悪臭が発生している段階では、すでにこぶの中に大きな膿が溜まり、硬さも柔らかくなり破裂しやすくなっています。
当然ながら、そこから何をせずとも自然になくなるようなことはなく、やがて破裂します。
破裂すると中身が出てくることがありますが、たとえ中身が出ても根本の原因は解消されないため、破裂してからでもすぐに医療機関へ行くべきです。
また粉瘤でなかったとしても、皮膚のしこりが腎不全や結核など命にかかわる病気である可能性も否定できないため、やはり放置せず早急に受診することが重要です。

大きくなった粉瘤を処置する方法

大きくなった粉瘤を処置する方法は基本的にただ一つ、手術のみです。一度大きくなったしこりは、最終的に中身が破裂しない限り小さくなることはありません。
形が大きくなるだけでなく悪臭を発生するようになり周囲の人に気付かれることもあるため、できるだけ早い段階での切除が肝心です。
中には水虫やできものができたときのように自分でどうにかしようと考える人もいますが、基本的に老廃物が溜まった袋を取り除くためには手術以外に方法がなく、自分で潰したり切除したりしても完全に取り除くことはできません。
自分で潰すと細菌が入り込みさらに悪化させますし、後々手術したとしても手術痕が残りやすくなるというデメリットがあるため、絶対に避けましょう。
大きい粉瘤に気付いたらすぐに医療機関で診療を受け、炎症や感染等の症状を見極めたうえで適切な処置を行ってもらいましょう。

大きくなった粉瘤の治療方法は?

自分だけで取り除くことができない大きい粉瘤は、外科的治療が必須となります。
そこで次は、大きい粉瘤を根底から除去し完治させるための、主な2つの治療方法についてそれぞれ解説していきます。

くり抜き法

粉瘤の代表的な治療法の1つ目は「くり抜き法」です。くり抜き法とは医療器具を用いて皮膚に小さな穴を開けて、その穴から老廃物が溜まっている袋をくり抜くように摘出する方法です。
穴を空ける際には特殊な器具を使用するため、単に皮膚を切除するよりも安全です。
摘出後により小さい穴が開きますが、開放創は上皮化するため、早ければ一週間程度で手術傷が目立たなくなるというメリットがあります。
くり抜き法は現在もっとも一般的であり安全な治療法となりますが、粉瘤が大きすぎる場合は小さな穴から袋が取り出せず再発の原因にもなるため選択できないケースがあります。
その場合は、次に挙げる方法を用いることになります。

切開法

大きさ等の理由でくり抜き法が利用できない場合、皮膚を粉瘤の大きさに合わせて切開する「切開法」が主な治療法となります。
切開法では袋を丸ごと取り出すために皮膚を大きく切開した後、老廃物と一緒に嚢腫を完全に取り除きます。そのため残留物が残らず、再発しにくいというメリットがあります。
ただしこの方法では局所麻酔および大きめの皮膚接合が必要となるため、くり抜き法よりは手術痕が目立ちやすいです。
その他、症状が進行していない段階では抗生剤を投与することもありますが、有効性が低く根本的治療にはならない、との見方が強いです。
また、炎症を抑えるためにステロイドの注入を行い、抗菌剤を投与することもありますが、結局はくり抜き法・切開法いずれかの外科的治療が必要となるケースが多いです。
症状の進行度合いにもよりますが、特に切開法は難しい手術となります。
そのため的確な診断を行ったうえで最適な治療を提案してくれる、実績が高く経験豊富な医師が在籍する医療機関を進んで選ぶことをおすすめします。

粉瘤で気になることがあれば当院にご相談ください

当院ではできもの専門クリニックですので、症状に合った適切な治療を提案します。仕事で忙しくて手術は難しいという方のために、日帰りで除去手術を行える体制を整えています。
粉瘤のような大きいこぶに悩んでいる方は、ぜひ当院の受診をご検討ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.03.27

良性の粉瘤は悪性化する?鑑別方法や治療方法を解説します

粉瘤の多くは良性腫瘍

粉瘤(アテローム)は表皮嚢腫とも呼ばれ、多くは良性の腫瘍です。

粉瘤の中身は老廃物

粉瘤の内容物は、皮脂や垢などの老廃物です。何らかの理由で皮膚の下に袋状の組織が形成され、そこに皮脂や垢などの老廃物が溜まることで発生します。
打撲や外傷に伴って発生する場合やニキビの痕にできることがありますが、原因を特定することは困難です。
また、脂肪細胞の良性腫瘍である脂肪腫と混同されますが、発生する原因や腫瘍の内容物が異なるため全くの別物です。

痛みや腫れを伴う場合は炎症性粉瘤

粉瘤を発症してすぐは、目立たず気にならないほどです。しかし皮脂や垢などの老廃物が溜まり、徐々に大きくなってくると独特の臭いが発生します。
状態によっては痛みや腫れを生じます。
このような場合、細菌感染により炎症を引き起こしている可能性があるため早期治療が必要です。

粉瘤の悪性化

粉瘤は良性の腫瘍ですが、まれに悪性化することがあります。ここでは良性と悪性の鑑別方法や粉瘤が悪性化したもので多い有棘細胞がんについて解説します。

良性と悪性の鑑別方法

身体にできた粉瘤が良性か悪性なのか鑑別するには、以下の項目を参考にしてください。
● 腫瘍が赤色に変化している
● 腫瘍が急速に大きくなっている
● 腫瘍の表面がかさついて硬くなっている
● 腫瘍がまだらに盛り上がり、しこりができている
● 腫瘍にただれや潰瘍(傷ができてえぐれている)ができている
● 腫瘍から液体が染み出している
● 腫瘍から悪臭がする
このような症状がある場合、粉瘤が悪性化している可能性があります。
なお、正確な判断をするためには皮膚の一部を切り取り、生検組織診断と呼ばれる専門的な検査が必要です。

粉瘤の悪性化「有棘細胞がん」

粉瘤が悪性化したもので多いのが有棘細胞がんです。有棘細胞がんは表皮の細胞が悪性化する中で、基底細胞がんに次いで発生頻度の高い皮膚がんです。
他にも、広範囲のやけど痕や慢性的な皮膚炎から発症しやすいといわれています。
また、日光にさらされやすい顔や頭皮などが好発部位です。有棘細胞がんが皮膚の表層部にとどまっていれば、他の部位に転移することはほとんどありません。
しかし、皮膚の深いところまで浸出するとリンパ節に転移しやすくなります。さらに肺や肝臓、脳にまで転移することもあります。

有棘細胞がんの治療法

有棘細胞がんの治療方法は、主に以下の3つの方法があります。

単純切除

有棘細胞がんの治療は、手術で切除するのが一般的です。単純切除術では、悪性化した部分を完全に切除することが重要です。
また、周囲の皮膚も一緒に切除する必要があります。
切除した皮膚は病理検査で詳しく調べられ、転移の可能性が疑われる場合には追加手術が必要になることもあります。
また切り取った皮膚の部分が広範囲の場合には、皮膚の再建術や他の部位から皮膚を移植することもあります。

放射線治療

がんが進行し内臓などに転移している場合は、手術適応になりません。
また切除が難しい場所に、がんが発生したケースや合併症などの理由で手術に耐えられない場合には放射線治療が適用されます。
放射線治療の副作用としては、疲労感や倦怠感、食欲不振、皮膚状態の変化があります。

化学療法

化学療法は、進行が著しく手術が難しい場合に適用されます。その他にも、がん細胞が血管やリンパ管を通して他の臓器や部位に移動した際にも積極的に選択されます。
また一般的に化学療法は手術前に行うことはありませんが、有棘細胞がんは化学療法でがんが小さくなる効果が期待できます。そのため、単純切除と併用されることもあります。

良性の粉瘤であっても放置してはいけない理由

粉瘤は良性の腫瘍ですが、放置すると身体に悪影響を及ぼします。

悪性化する場合がある

粉瘤の初期は痛みや腫れがないことや、皮脂や垢などの老廃物が溜まることで発生する良性腫瘍のため、放置していても健康を大きく損なうことはありません。
しかし、発症し長い年月が経過しているものや炎症を繰り返す粉瘤は有棘細胞がんなどに移行する可能性があります。
● 腫瘍が赤色に変化している
● 腫瘍が急速に大きくなっている
● 腫瘍の表面がかさついて硬くなっている
● まだらに盛り上がり、しこりができている
● ただれや潰瘍(傷ができてえぐれている)ができている
● 腫瘍から液体が染み出している
● 腫瘍から悪臭がする
このような場合には、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

炎症を起こす可能性がある

粉瘤を放置すると細菌感染をして、炎症性粉瘤に移行することがあります。炎症性粉瘤に移行すると治療期間の延長や、治療費の増大が予想されます。炎症性粉瘤は、皮脂や垢の溜まった袋状の組織が周囲の皮膚と癒着するため、完全に摘出するのが難しいからです。
袋状の組織が少しでも体内に残ると再発の可能性が高くなり、治療期間の延長や治療費の増大につながります。炎症が強い場合は、抗生物質の内服や溜まった内容物を切開して排膿するなどして炎症が落ち着いてから手術します。
そのため治療を終えるまでに数ヶ月かかることもあり、治療費も高くなる傾向にあります。また炎症の程度には個人差があり、痛みが強くなると日常生活に支障をきたすこともあります。

粉瘤は自然治癒しない

粉瘤はニキビやふきでものと異なり、放置していても治癒することはありません。皮脂や垢が溜まった袋状の組織を取り除かなければ、再発するからです。袋状の組織を取り除く方法は、くり抜き法と切開法の2種類の手術方法があります。
くり抜き法はトレパンという特殊な器具を使って施術するため傷跡が小さく、短時間で手術することができます。
切開法はメスを使用し皮膚を切開し、粉瘤を丸ごと摘出するため再発する可能性が極めて低いという利点があります。
どちらの手術方法にするかは、事前にカウンセリングを行った上で選択します。

まとめ

袋状の組織に皮脂や垢が溜まって発症する粉瘤は、基本的に良性の腫瘍ですが悪性化することもあります。
良性と悪性の鑑別方法を参考にし、当てはまる項目があれば早めに専門の医療機関を受診することをおすすめします。また良性の粉瘤であったとしても、放置すると炎症性粉瘤や悪性の有棘細胞がんに移行する可能性があります。
炎症性粉瘤は治療期間の延長や治療費が増大する可能性があり、有棘細胞がんになると最悪の場合、命に関わることもあるでしょう。どちらにしても、粉瘤ができた時点で専門の医療機関を受診するようにしましょう。

当院は粉瘤治療専門のクリニックです。経験豊富な医師によるカウンセリングや、患者さまに寄り添った治療を提供しています。粉瘤ができて不安な方は、お気軽にお問い合わせください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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