2024.11.07

化膿性汗腺炎が重症化する原因と対策は?早期発見の重要性

化膿性汗腺炎は、放置していると重症化しやすく、皮膚の深部まで炎症が広がることがあります。

化膿性汗腺炎が重症化すると、QOL(生活の質)が大きく低下し、日常生活に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。そのため、化膿性汗腺炎は早期発見と適切な治療が極めて重要です。

この記事では、化膿性汗腺炎が重症化する主な原因や悪化を防ぐための対策について解説します。

早期の診断と治療の重要性について理解し、症状を悪化させないために自分でできることを確認しましょう。

化膿性汗腺炎の重症度

化膿性汗腺炎は、症状の広がりや程度によって重症度が異なり、「Hurley(ハーレー)分類」と呼ばれるシステムで3つのステージに分類されます。

日本皮膚科学会は、大規模病院で行われた調査にもとづき、それぞれのステージごとの罹患者の割合も発表しました。

ただし、受診する医療機関がすべてHurley分類に則って診察しているとは限りません。医療機関によって異なるケースもあるため注意しましょう。

Hurley分類 症状 日本における罹患者の比率
I期(軽度) しこりや膿瘍が単発的に現れる
瘢痕や瘻孔は形成されない
32%
II期(中等度) 複数のしこりや膿腫が現れる
瘻孔が形成される
38%
III期(重度) トンネル状の瘻孔が複数形成されつながる
瘢痕が残る場合がある
30%

なお、III期の罹患者の比率はフランスで4%、ベルギーで1%と、非常に低い水準となっています。

日本でIII期の罹患者が多く報告されている背景には、調査対象が大学病院など大規模な医療機関に集中していたことが理由と考えられています。高度な医療機関には、より重症な患者が紹介されることが多いためです。

参照:日本皮膚科学会雑誌第131巻第1号[PDF]

化膿性汗腺炎の初期症状から重症化までの過程

化膿性汗腺炎の初期症状から重症化するまでの過程は以下のとおりです。

【1.初期段階】結節(けっせつ)・膿瘍(のうよう)の発生

化膿性汗腺炎の初期段階では、毛穴の周辺が腫れ、結節や膿瘍が発生します。結節は「しこり」、膿瘍は「膿のたまったできもの」のことです。

結節や膿瘍は摩擦や圧迫を受けやすい箇所に好発しやすく、特に脇の下や鼠径部(足の付け根)、乳房の下、臀部などが代表的な発生場所です。痛みを伴うことが多く、特に圧迫された際に痛みが強くなることが特徴です。

【2.中期段階】複数の膿瘍の発生・瘻孔(ろうこう)の形成

中期段階になると、複数の結節や膿瘍が同時に出現し、これらが合体して大きな病変に成長することがあります。また、膿瘍から膿が出たり破裂したりすることで、患部が炎症を起こし症状が悪化します。

炎症が進行すると瘻孔が形成され、皮膚内部で複数の瘻孔がつながることがあります。瘻孔とは、膿瘍同士が皮膚の内部でつながり、トンネル状の組織が形成されることです。瘻孔は非常に治りにくく、慢性化する傾向が強いため、長期的なケアが必要になります。

【3.重症段階】皮膚内部で膿瘍や瘻孔が広範囲に形成

重症段階になると、病変が広範囲に広がり、大規模な炎症を引き起こします。膿瘍や瘻孔が広い範囲で複雑に絡み合い、症状がさらに悪化します。

膿が常に出るようになり、排出された膿は悪臭を発することもあります。慢性的な炎症が続くことで強い痛みが生じ、日常生活に支障をきたすこともあります。

【4.重症段階】瘢痕

1~3の段階を慢性的に繰り返すことで、患部の皮膚が硬化し、縄状の瘢痕が形成されます。病変部分が肥厚し、外見にも明らかな変化が生じます。再発することが多いため、治療を受けていても完全に症状が治まらないケースも少なくありません。

病変が皮膚の可動性を低下させることもあるため、歩行や座るなど、日常的な動作が困難になることもあります。症状が重症化することでQOL(生活の質)が著しく低下するため、身体的な苦痛だけではなく、精神的にも大きな負担となります。

化膿性汗腺炎が重症化する原因

化膿性汗腺炎が重症化する主な原因は、以下のとおりです。

原因 理由
肥満 肥満が進行すると、皮膚の摩擦や汗の量が増加し、炎症や感染のリスクが高まる
喫煙 タバコに含まれる化学物質が炎症反応を悪化させ、皮膚の回復力を低下させる
摩擦や圧迫 衣類や体の動きによって摩擦が生じると、病変が刺激され悪化することがある
適切な治療の遅れ 初期段階で見逃され治療が遅れると病状が進行しやすく、慢性化しやすくなる
精神的ストレス ストレスがホルモンバランスの乱れや免疫機能の低下を招き、症状が悪化することがある

重症化すると治療に時間がかかり、QOLに大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、重症化する前に適切な予防対策を講じることが非常に重要です。

化膿性汗腺炎の治療方法と受診すべき診療科

化膿性汗腺炎の治療方法は、内科的治療(薬物療法)と外科的治療(外科手術)の2種類があります。治療方針は重症度に応じて異なり、それに応じて受診すべき診療科も変わります。

内科的治療

軽度から中等度の化膿性汗腺炎の場合、内科的治療(薬物療法)が一般的に選択されます。抗生物質や抗炎症薬などを使用し、炎症を抑えながら症状をコントロールします。

受診すべき診療科は、「皮膚科」です。皮膚科の医師は、症状の重症度を診察し、適切な治療計画を立てます。外科治療が必要な場合でも、まずは皮膚科での診察を受けることが推奨されます。

外科的治療

症状が進行し、薬物療法では治療が難しい場合は外科的治療(外科手術)が行われます。患部を切開して膿を排出したり、病変組織そのものを切除したりします。慢性的な炎症や感染を軽減し、症状の改善を図ります。

外科治療を行う際に受診すべき診療科は、「形成外科」です。形成外科では、より専門的な技術を用いて手術が行われ、場合によっては皮膚の再建手術を行うこともあります。再建手術は、手術後の機能回復や外見の改善を目的としており、患者のQOLを向上させるために重要な役割を果たします。

化膿性汗腺炎の重症化を防ぐための対策

化膿性汗腺炎の重症化を防ぐための対策は以下のとおりです。

早期診断と治療

化膿性汗腺炎は進行性の病気であるため、初期段階での診断と治療が非常に重要です。症状が軽度のうちに医師の診察を受け、適切な治療を開始することで、病気の進行や重症化を防げます。

症状が軽減したと感じても、自己判断で治療を中断せず、定期的に医師の診察を受けることが大切です。治療の継続は、病状の再発や進行を防ぐために欠かせません。また、定期的なフォローアップにより、病状の変化や新たな症状に早期に対応できます。

生活習慣の見直しと改善

以下のような生活習慣を見直し、改善することも重要です。

項目 ポイント
体重管理 肥満は重症化のリスクを高めるため、バランスの良い食事と適度な運動を取り入れる
禁煙 喫煙が炎症を悪化させる要因となるため、禁煙が推奨される
ストレス管理 ストレスは免疫力に影響を与えるため、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけ、ストレスを軽減させる

生活習慣を見直すことで、症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。症状が軽減されれば、日常生活の質も向上し、精神的な健康も促進されるでしょう。自分自身の健康を意識し、積極的に改善策を取り入れることが大切です。

適切なスキンケアと衛生管理

症状の悪化や二次感染を防ぐためには、適切なスキンケアと衛生管理を徹底することが大切です。特に、感染が多い部位(脇の下や鼠径部など)は清潔に保つことを心がけましょう。

肌を清潔に保つことは重要ですが、強く擦ったり刺激の強い製品を使用したりすると、症状が悪化する原因となるため注意が必要です。また、乾燥を防ぐために、肌を保湿することも忘れないようにしましょう。適切な保湿を行うことで、皮膚のバリア機能を維持し、外的刺激から肌を守れます。

また、摩擦や圧迫を防ぐために、タイトな衣服はできるだけ避け、通気性のよいゆったりとした衣服を選ぶことも効果的です。

まとめ

化膿性汗腺炎は、重症化すると日常生活に大きな支障をきたします。重症化を防ぐためには、症状を見逃さず早期発見することと、適切な治療を受けることが重要です。

また、医師の診察を通じて、生活習慣の見直しや適切なスキンケアなどを心がけることも大切です。少しでも異変を感じた場合は、できるだけ早めに医師に相談しましょう。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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化膿性汗腺炎は自然治癒する?放置の危険性と治療法を解説

化膿性汗腺炎は、繰り返し炎症が起こる慢性的な皮膚疾患です。多くの場合、脇の下やお尻、足の付け根部分に発生します。

見た目は、小さなニキビのようで、赤みや腫れ、痛みを伴うことが特徴です。この病気は、自然に治癒することは少なく、治ったと思っても慢性的に再発しやすいため、注意が必要です。

本記事では、化膿性汗腺炎を放置する危険性と、似ている病気やそれぞれの治療法について解説します。

化膿性汗腺炎について

ここでは、化膿性感染炎の原因と症状について解説します。

原因

化膿性汗腺炎の原因は、明確には判明していません

しかし、発症しやすい人にはいくつかの特徴があることが分かってきました。そのひとつが遺伝的な原因です。家族の中で化膿性汗腺炎を発症したことがある人は、遺伝子による要因が関係していると考えられています。もし、近親者の中に化膿性汗腺炎を患った人がいる場合は、遺伝による原因が考えられるでしょう。

他にも、環境的な原因があると言われています。環境的な要因としては、肥満と喫煙です。肥満は皮膚同士や皮膚と衣類との摩擦が発生しやすく、毛包が閉塞(へいそく)しやすくなります。さらに、喫煙によって毛包の免疫機能が低下することで、細菌感染が引き起こされやすくなることも知られています。

このような要因が重なることで、感染が進行し、化膿性汗腺炎が発症すると考えられています。特に家族に化膿性汗腺炎になったことがある人や肥満の方、喫煙をする方は、発症リスクが高まるため、注意が必要です。

主な症状

化膿性汗腺炎の主な症状としては、痛みを伴うおできのようなしこりができます。特に汗をかきやすい部位にできやすく、脇の下や太ももの付け根、お尻などにできやすいと言われています。初期症状では、皮膚が少し腫れたように感じることが多く、悪化すると膿があるおできのような状態になります。

化膿性汗腺炎は慢性的に発生しやすい病気で、しっかり治療を行わなければ、長期間にわたって繰り返し炎症が続くことが多いです。膿がたまることで瘻孔(ろうこう)ができることもあり、傷跡が残りやすくなってしまいます。さらに悪化すると皮膚が硬くなり、重症の場合、放置すると皮膚がんのリスクも否定できません。

そのため、化膿性汗腺炎が疑わしい場合、早めの治療が非常に重要になるでしょう。

自然治癒するのか?

化膿性汗腺炎は基本的に自然治癒することはありません。軽度の場合は、一時的に自然に改善することもありますが、基本的には慢性的で再発しやすい病気です。

初期の段階では、しこり部分を清潔に保ち、抗菌薬の内服や外用薬で炎症を抑えることが可能な場合もあります。しかし、自然治癒を期待して放置すると、症状が悪化するリスクが高いため、自己判断による放置は避けましょう。悪化して膿がたまると悪臭を伴うケースや傷跡が残りやすくなります。

特に膿がたまっている部分が潰れてしまうと、さらに感染が広がり、治療が難しくなることもあります。特に化膿性汗腺炎は、症状が一度治まったように見えても再発することが多い病気です。放置した場合のリスクが非常に高いため、早めに適切な治療を受けるようにしましょう。

化膿性汗腺炎と似ている病気

化膿性汗腺炎と見た目が似ている病気はいくつか存在しています。ここではよく間違われやすい下記3つの疾患について説明します。

疾患名 痛み できやすい場所
粉瘤 なし 顔、首、背中、耳の後ろ
毛嚢炎 あり 顔、首、背中、太もも、おしり
ニキビ なし(悪化すると痛みあり) 顔、背中など

粉瘤

粉瘤は、別名アテロームと呼ばれ、皮膚の下にできる良性の腫瘍です。袋状のできものができ、そこに角質や皮脂がたまることで発生します。できやすい部位としては、特に顔や背中、首などで、皮膚の表面が盛り上がったように見えます。

大きな特徴としては、盛り上がりの中央に黒い点ができ、自然に消えることはほとんどありません。

そして自然に腫瘍部分が小さくなることはなく、時間と共に大きくなっていくことが一般的です。基本的には痛みを伴わない腫瘍ですが、細菌感染すると赤く腫れ、強い痛みや炎症を引き起こすこともあります。

毛嚢炎

毛嚢炎(もうのうえん)は、毛穴に細菌が感染して起こる皮膚の炎症です。髭剃りやムダ毛処理、掻きむしりなどによって皮膚に傷が付いた際に、細菌が毛穴に侵入することで炎症を引き起こします。症状としては、赤いプツプツした発疹や膿を伴う膿疱ができることがあります。

人によって痛みを感じる方もおられますが、かゆみは軽度であることが多いです。基本的に軽症であれば自然に治ることが多い病気ですが、悪化すると色素沈着や傷跡が残る場合もあるため注意しましょう。

ニキビ

ニキビは、顔の額や頬、あご周り、背中など皮脂が多い場所にできやすい発疹です。

特に思春期から青年期にかけてよく見られますが、年齢や性別問わず多くの方に発生しやすいです。ニキビは「白ニキビ」「黒ニキビ」「赤ニキビ」の3段階に分けられます。初期の段階が白ニキビと言われ、痛みがなく毛穴に皮脂が詰まった状態です。そして、酸化により黒くなった状態を黒ニキビ、細菌の増殖により炎症が悪化した状態が赤ニキビになります。

ニキビは、自然に治る軽度のものから跡が残る重症のものまであります。また炎症を起こすと、場所によっては激しい痛みを伴うケースもあるため、正しいスキンケアを行い予防と対策を行いましょう。

何科を受診する?

おできができた場合、何科を受診するべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

  • ・皮膚科
  • ・形成外科
  • ここでは、症状に合わせた受診先について解説します。

皮膚科

皮膚科は、皮膚や爪、毛髪に関わる病気を診察・治療します。そのため、診察の対象としては頭皮や顔、手足、体全体にわたり、目に見える部位全般になります。

皮膚の赤みやかゆみ、できものなどで受診する方が多く、内科的な治療から外科的な処置まで幅広く対応できます。

しかし得意とする治療としては、外科的な手術より内服薬や塗り薬を用いた治療がメインとなります。薬物療法で治療が可能な場合は、皮膚科での治療が最適です。

形成外科

形成外科は、からだの表面の傷やしこりをきれいに治療します。主に、皮膚の腫瘍やケガ、先天異常、やけど、幅広い病気について相談できます。

特に傷跡をできるだけ目立たないように治療することが得意で、手術や縫合技術に優れています。形成外科では、新生児の赤ちゃんから高齢者までと幅広く、機能的かつ美しくきれいな回復を目指す診療科です。

外科手術を伴う治療に関しては、傷跡が残りにくくきれいに仕上がる形成外科での治療がおすすめです。

治療法

では、実際に受診した際の治療方法について解説します。治療については大きく分けて、下記に2つになります。

  • ・薬を使用した治療
  • ・手術による摘出

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

薬を使用した治療

薬を使用した治療では、飲み薬や塗り薬、注射などが用いられることが多いです。一般的に、ヒュミラと呼ばれる薬が使われ、できものの減少が期待できます。ヒュミラは自分で注射できるタイプになるため、通院の手間を省いて手軽に治療できるメリットがあります。

また、外科的手術を伴わないため、精神的な不安や傷あとの心配もありません。しかしデメリットも存在し、効果が現れるまでに3か月ほどかかってしまいます。

他にも、抗菌薬や外用薬のクリームが併用して処方されるケースもあり、症状に合わせて様々な薬を組み合わせて治療を行っていきます。

手術による摘出

手術による摘出では、麻酔を使用するため痛みの心配はありません。できものができた皮膚を部分的または全て切除して腫瘍部分を摘出していきます。特に化膿性汗腺炎は、がんを発生する可能性も否定できないため、完全に取り除くことが非常に重要です。

膿瘍を出すためには、切開やくり抜き術が行われますが、再発リスクを下げるためには、切開による治療がおすすめです。他にも、体への負担が少ないレーザー治療も選択肢の一つです。手術の内容に関しては、症状の重症度によって異なるため、医師と相談して最適な治療法を見つけましょう。

まとめ

化膿性汗腺炎は、自然治癒が難しく、放置すると症状が悪化しやすい慢性的な病気です。治療には抗菌薬や外用薬、場合によっては手術が行われ、早期の診断と治療が重要になります。このおできは、赤みや痛みを伴う腫れが生じ再発を繰り返すことが多いため、適切な治療を受けるようにしましょう。

当院は、傷をきれいに治すことに特化した形成外科です。日帰りによる治療も行っていますので、肌のトラブルでお悩み方はぜひご利用ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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化膿性汗腺炎はかゆくなる?

2024.05.31

化膿性汗腺炎はかゆくなる?かゆみを伴う似た疾患や治療方法を紹介

脇の下や足の付け根にかゆみや痛みを感じて、赤いできものができたことはありませんか?
繰り返し同じ場所にできるなど、お悩みの方もいるのではないでしょうか?
そのできものは「化膿性汗腺炎」という疾患で、悪化すると炎症部位が大きくなり、傷跡も残ってしまうこともあります。

本記事では、化膿性汗腺炎の症状や原因、治療法を詳しく解説していきます。
また、化膿性汗腺炎によく似た、かゆみを伴う別の疾患も紹介しますので、参考にしてください。

化膿性汗腺炎とは

化膿性汗腺炎とは、毛が生えてくる毛包に炎症が起こり、赤いおできが繰り返しできる疾患のことです。

初期の段階では、かゆみや痛み、腫れをともなう程度ですが、症状が悪化すると膿が溜まった後に炎症が広がり、手術が必要になるケースまで悪化することもあります。
化膿性汗腺炎は、20代〜40代の方が最も発症しやすく、男女ともに見られる疾患です。

症状が現れやすい部位としては以下になります。

・首
・脇の下
・乳房の周り
・足の付け根
・鼠蹊部
・肛門の周り

人に見せるのに抵抗がある部位にできやすいため、恥ずかしさから受診をためらって症状が悪化することがありますので注意が必要です。

化膿性汗腺炎の原因

化膿性汗腺炎の原因は、まだはっきりと解明されていません。

タバコに含まれるニコチンが毛孔閉鎖を引き起こすのではと考えられ、化膿性汗腺炎の原因になる可能性があるのではないかと言われています。

また、肥満により肌が擦れてしまい刺激が与えられることが原因ではないかともいわれています。
他にも、欧米における化膿性汗腺炎の患者全体の30〜40%の方が、家族に同じ疾患を持っていることから、遺伝の関連性もあるのではともいわれています。

参考:日本皮膚科学会ガイドライン『化膿性汗腺炎診療の手引き 2020』

化膿性汗腺炎の症状

化膿性汗腺炎は、放置していると悪化する可能性があります。

悪化してしまうと、患部も広がり傷跡も残ってしまうことにもなりますので、早いうちに治療することをおすすめします。また、症状が悪化するにつれて痛みも激しくなっていきます。

発症する部位は肌がすれるところが多く、頻繁に痛みを感じることになり日常生活にも支障をきたすことにもなります。

ここからは、化膿性汗腺炎の症状5つと、その症状が悪化していく状況を順番に解説していきます。

かゆみを伴う

初期症状としては、漠然としたかゆみを感じるようになります。

化膿性汗腺炎は汗をかきやすい部位に発症することが多く、かゆみを伴い赤く腫れるようになります。

結節

毛穴が詰まり、しこりやコブのようなものができている状態です。

かゆみや痛みをともない、時間が経つにつれて赤く腫れてきます。

腫・膿瘍

おできが発生してきて、その中に膿が溜まった状態が膿腫です。

さらに、膿が溜まって毛を包む袋が破れて、ぷよぷよした状態が膿瘍です。

瘻孔(ろうこう)

複数のおできが発症して、膿の溜まった毛を包む袋が破れて隣同士のおできが皮膚の下で貫通した状態です。

おでき同士に蜂の巣のようなトンネルができ繋がってしまいます。

瘻孔になると、痛みも強くなり完治には時間がかかることになります。

瘢痕(はんこん)

腫瘍の再発を繰り返すことで、皮膚が厚くなり傷跡が残った状態です。

この症状を繰り返すことで、慢性化していくことにつながります。

化膿性汗腺炎の治療法

化膿性汗腺炎は重症度によって治療法も違ってきますが、大きくは投薬治療による内科的治療か、手術による外科的処置の2つになります。

それぞれの治療法について詳しく解説していきます。

手術による治療

化膿性汗腺炎の手術では、患部を切開して中の膿を排出する方法や、患部を皮膚ごと切り取り皮膚移植する方法があります。
かゆみしかない初期の段階など炎症部位が小さい場合は、患部を切開して膿を出し切ることで完治できます。

しかし、炎症部位が広範囲に広がっている場合は、切除する部分が大きいため皮膚ごと切り取り、皮膚移植を行うこともあります。化膿性汗腺炎は、患部が小さいうちに治療することで摘出も簡単であり、傷跡も残りにくくなりますので、早期に治療を受けることが重要です。

どちらの手術も、切除する際に膿を完全に排出することが重要で、取り残しがあればまた再発する可能性もあるため、適切な手術が必要になります。

薬による治療

手術できない部位や、手術による症状の改善がみられない場合は、薬による治療をおこないます。

薬による治療法としては、まず患部を清潔に保ち抗菌薬の内服や抗菌薬軟膏などを使用します。重症度が高い場合は、ヒュミラという薬を皮下注射して治療することもあります。

ヒュミラは、炎症の元になる物質の働きを阻害する薬で、化膿性汗腺炎を減少させる効果があります。しかし、効果が現れるまでには3ヶ月程度かかります。

化膿性汗腺炎と似たかゆみを伴う疾患

化膿性汗腺炎と同じように、かゆみを伴ってしこりやおできができる疾患は他にもあります。

化膿性汗腺炎と似た症状なので間違いやすいですが、治療法も違ってきますのでそれぞれの特徴を解説していきます。

粉瘤

粉瘤とは、皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質といった老廃物が溜まってできる良性の腫瘍のことです。
通常の大きさは、数mm〜数cmほどのドーム状に盛り上がったしこりになり、肌色もしくは白色をしていて、中央部に黒い穴があいていることが多いです。

また、皮膚は隆起するほど大きくなることもあり、臭いを発するのも特徴です。
粉瘤は炎症を引き起こさなければ痛みはなく、少しかゆみがあったり見た目が気になったりする程度で、日常生活には支障はありません。

しかし、放置していても自然に治ることはありませんので、見た目が気になる場合や、炎症を引き起こす可能性があるため、治療することをおすすめします。粉瘤の治療法としては、切開法などの手術で患部の袋を取り出す治療がおこなわれます。

粉瘤も完全に除去しなければ再発することもありますので、適切な手術が必要です。

毛嚢炎

毛嚢炎とは、毛根を包む毛穴の奥の部分が炎症して、赤くなったり膿が溜まったりする疾患です。毛嚢炎は、軽いかゆみや痛みを伴うことがありますが、通常数日〜1週間程度で治ることが多いです。

化膿性汗腺炎と毛嚢炎は、初期の段階では見た目がよく似ていて間違いやすいですが、症状は大きく異なり、対処法を間違えると悪化してしまいますので注意が必要です。

こうしたことから、見た目だけで自己判断するのは難しく、いつもと少しでも違う症状があったり、なかなか改善が見られない場合は、早いうちに病院へ行くことをおすすめします。

化膿性汗腺炎の治療は形成外科へ

化膿性汗腺炎の治療は重症度によっては手術が必要になるので、形成外科への受診をおすすめします。
化膿性汗腺炎の手術では、すべての膿を取り出さないと再発の可能性がありますし、切開部分が大きくなることで傷跡が残ることも懸念されます。

当院では、手術による傷口を治すだけの治療ではなく、傷跡を目立たなくすることを重視した治療もおこなっています。
また、局所麻酔を使用して痛みを軽減する工夫もおこなっていますので、痛みが苦手な方も安心して手術を受けることができます。

日帰り手術も可能となっていますので、入院する必要もなく日程を組みやすいので、時間を取られず治療が可能です。
もちろん症状によっては投薬による治療もおこなっていますので、それぞれの患者様に最適な治療を提案させていただきます。

経験豊富な形成外科専門医が、一人ひとり丁寧に診察して対応いたしますので、できもの全般の治療は当院へお任せください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2024.03.29

化膿性汗腺炎が脇にできた場合の対処方法|見分け方や症状も解説!

「脇が赤く腫れているが化膿性汗腺炎ではないか」
「化膿性汗腺炎にはどのような症状があるのか」

脇のできものが、化膿性汗腺炎ではないかと上記のような疑問をもたれている方がいらっしゃるのではないでしょうか。化膿性汗腺炎は放っておくと進行し、範囲が拡大することがあります。そのため早めの治療が大切です。
本記事では、化膿性汗腺炎の特徴や見分け方などを解説しています。脇のできものが気になっている方は是非ご参考にしてください。

化膿性汗腺炎の主な特長

化膿性汗腺炎は、成長の終わった毛の毛包と呼ばれる、毛根を包む皮下組織が炎症を起こす疾患です。感染症ではありません。
男女比は2〜3:1で男性が多いです。ただし、欧米では1:3で女性が多いデータがあるなど地域によって違いがあります。
化膿性汗腺炎は、20〜40歳に多く発症する疾患です。臀部(お尻)や脇、陰部や足の付け根などに多く発症し、女性では、乳房の下にできることもあります。

化膿性汗腺炎ができる原因は、はっきりとわかっていません。化膿性汗腺炎の発症者の30%〜40%が家族に同じ疾患を持つことから、遺伝の関連性があるともいわれています。また肥満や喫煙、衣服の摩擦による影響があるなど、考えられる原因はさまざまです。

化膿性汗腺炎は、動くたびに患部が擦れて痛いため、動きづらい場合があります。また膿が臭ったり、衣服を汚したりしないか心配になるなど生活の質に影響するおそれがあります。

化膿性汗腺炎の4つの段階ごとの症状

化膿性汗腺炎は、大きくわけて4つの段階で症状が進行します。

結節

初期段階は結節(けっせつ)と呼ばれ、毛穴周辺が小さく腫れてふくらむ症状です。患部は赤く、痛みを伴います。

膿腫・膿瘍

炎症を起こした結節の内部に膿がたまった状態が膿腫(のうしゅ)です。また、皮膚内部で膿のたまった袋が破れて膿があふれ出た症状は、膿瘍(のうよう)と呼び、ぷよぷよした状態となります。

瘻孔

3段階目は、膿瘍から膿が出てくる状態の瘻孔(ろうこう)です。皮膚表面に膿が出てくる場合や、皮膚内部で複数の膿瘍がトンネル状につながる場合があります。

瘢痕

上記の症状を再発し、炎症を繰り返すことで患部の皮膚が厚くなり、縄状の傷跡が残った状態が瘢痕(はんこん)です。

脇にできる化膿性汗腺炎以外のできもの

脇にできる主なできものは、化膿性汗腺炎以外に粉瘤や毛嚢炎などがあります。

粉瘤

粉瘤は、通常は数mm〜数cmほどの半球状に盛り上がったしこりです。初期状態では痛みはありませんが、炎症を起こすと痛む場合があります。
色は肌色もしくは白色で、しこりの中央部に黒い穴があいていることが多いです。粉瘤は、本来であれば外に剥がれ落ちる角質や皮脂が皮膚内に形成された袋に溜まることが原因となります。中に溜まったものはドロドロの粥状で、臭気があるのが特徴です。

粉瘤は良性腫瘍ですが、放っておいても自然に治ることはほとんどありません。むしろ大きくなる場合があります。
見た目の問題や、今後炎症を起こす可能性があることなどから治療した方が良いでしょう。粉瘤は、皮膚内部の袋を取り出さない限り再発することがあるため、手術で袋を取り出す治療をします。

毛嚢炎

毛嚢炎は、毛穴から細菌が入り込み毛嚢(毛包)で炎症が起きた状態をいいます。毛穴の周辺が盛り上がり、赤く腫れ膿が溜まる症状です。

軽い痛みや痒みを伴うことがあります。毛嚢炎は通常、数日〜1週間程度で自然に治ることがほとんどです。
まれに悪化することもあるため、なかなか治らない場合は、医師の診察を受けましょう。

毛嚢炎の原因となる細菌は、常在菌である黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌です。通常は皮膚の上にいて、肌のバリア機能により皮膚内部に入らないようになっています。
しかし、ムダ毛処理などの肌へのダメージや肌の免疫力低下などから細菌が入り込み、毛嚢炎を引き起こすことがあります。

化膿性汗腺炎の見分け方

脇のできものが化膿性汗腺炎かどうかの見分け方は、まず、患部が前述の通り結節や膿腫・膿瘍、瘻孔などの症状があるかです。炎症を起こし、膿が溜まっている場合などは化膿性汗腺炎かもしれません。できものができたり膿が出たりを繰り返す場合は特に注意が必要です。
目安は、半年に2回以上繰り返すなど頻繁な場合は、化膿性汗腺炎の可能性があります。

化膿性汗腺炎が多く発生するのは、脇や臀部(お尻)足の付け根や陰部です。そのため脇のできものは、化膿性汗腺炎の場合があります。
上記は判断の目安となりますが、化膿性汗腺炎かを個人で断定することは難しいです。そのため、少しでも不安があれば医師の診察を受けましょう。

化膿性汗腺炎を自分で治すことは難しい

化膿性汗腺炎を自分で治すことは難しいでしょう。現在、化膿性汗腺炎を治す市販薬は無いためです。
また、自然治癒したかのように見えても再発することが多く、繰り返すことで重症化していきます。そのため、完治を目指すならクリニックでの治療が望ましいでしょう。

しかし、調査によると発症してから病院で化膿性汗腺炎と診断されるまでに平均7年かかっているとの報告があります。
参照:日本皮膚科学会「化膿性汗腺炎診療の手引き 2020」

クリニックでの治療の必要性を感じていても、診察をためらうことも多く重症化するケースがあります。
ごくまれに、有棘細胞癌を併発する例があることからも、化膿性汗腺炎の疑いがあれば早めに診察を受けた方が良いでしょう。

化膿性汗腺炎はどの診療科に行けば良いのか

化膿性汗腺炎の診察は、皮膚科または形成外科で診察できます。皮膚科は、全身の皮膚や爪、毛髪など肉眼で見える範囲の疾患に対応可能な診療科です。

外科治療する皮膚科や、塗り薬などの投薬治療をメインとした皮膚科などさまざまです。
形成外科では、体の表面の異常や変形の修復をおこなっています。例えば火傷や事故で損傷した皮膚の再生などです。また、腫瘍の摘出や手術痕の修復なども可能です。
そのため、手術による傷跡が気になる場合は、形成外科で診察を受けると良いでしょう。

化膿性汗腺炎の治療方法

化膿性汗腺炎の治療法は、外科的治療と内科的治療があります。医師と相談の上、最適な方法を選びましょう。

外科的治療

一つ目は手術による外科的治療です。外科的治療では、患部を切開し中の膿を排出する方法や患部を皮膚ごと切り取る方法があります。
再発を繰り返し重症化した場合には、広い範囲の皮膚を切り取る必要があり、皮膚移植が必要です。早めに診察を受けることで処置の範囲が小さくすみます。

内科的治療

手術による治療が難しい場合には、抗菌薬の内服や軟膏を塗るなど内科的治療で改善する場合があります。ヒュミラなどの皮下注射による治療も可能です。
外科的治療の際にもいえることですが、常に患部の清潔を保ちましょう。また、化膿性汗腺炎の原因ともいわれている喫煙や肥満の解消も重要です。

きれいな傷跡に特化した形成外科

形成外科は、傷口をきれいに治すことに特化しています。形成外科は、生まれつきもしくは怪我などによってできた異常や欠損などを修復する診療科であるためです。
機能面はもちろん、見た目の修復も重要視しています。例えば顔面の骨折や火傷によるケロイドの修復です。また、過去の治療でできた傷跡の修復もおこなっています。そのため、化膿性汗腺炎の治療においても見た目を重要視する方には形成外科が良いでしょう。
当医院では、形成外科の専門医が特殊器具を使用しきれいな傷口に特化した治療をおこなっています。

まとめ

化膿性汗腺炎は、毛穴内部が炎症を起こすことで発症します。遺伝や肥満、喫煙などが影響しているといわれていますが、はっきりとわかっていません。化膿性汗腺炎は、一度できると自然に完治することはほとんどなく、再発を繰り返すうちに重症化します。ごくまれに悪性になることもあるため、早めの治療が大切です。
当医院では、きれいな傷口に特化した治療が可能であり、日帰り手術にも対応しています。できもの全般に関して是非お任せください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

2023.12.06

化膿性汗腺炎の治療は何科でできる?正しい治療方法と見分け方

化膿性汗腺炎は、汗腺に細菌感染が起こり、膿がたまる皮膚疾患です。この疾患は放置すると病状が悪化し、激しい痛みや腫れが現れ、時には膿や血液が外に流れて不快な悪臭を伴うこともあります。そのため、早期治療が非常に重要と言われています。本記事では、化膿性汗腺炎の適切な治療方法や、何科を受診すべきかについて詳しく解説します。

化膿性汗腺炎とは?

化膿性汗腺炎は、皮膚の汗腺や毛包周りに起因する慢性的な炎症で、繰り返しできやすい疾患です。主にわきの下やお尻、あしの付け根、胸の下などにできやすく、20~40歳の人が発生しやすいと言われています。この疾患は特に慢性的に発生しやすく、完治に時間がかかるため、抗生物質や手術による治療が一般的です。ここでは、化膿性汗腺炎の原因と症状について詳しく解説します。

原因

化膿性汗腺炎の主な原因は、毛穴のつまりです。毛穴が詰まる原因の一つは、年齢とともに皮膚の新陳代謝が遅くなり、角質が毛穴から排出されなくなることです。また、ターンオーバーが乱れることも毛穴のつまりを引き起こす要因です。さらに、窮屈な衣類や摩擦や圧力、毛の処理なども化膿性汗腺炎を引き起こす可能性があります。遺伝的要因も一部影響があるとされていますが、具体的な原因はまだ不明確です。化膿性汗腺炎の原因は様々な要因が考えられますが、毛穴のつまりが主な原因と言えるでしょう。

主な症状

化膿性汗腺炎の症状は、痛みや赤い腫れを伴う場合があり、結節、濃腫、瘻孔、瘢痕などの症状が特徴的です。結節は、太もも内側や付け根に痛みを伴うしこりとして現れ、時間が経つと大きくなり、赤く腫れることがあります。濃腫は皮膚に膿がたまったしこりで、悪化するとぷよぷよした袋のように膿が貯留します。瘻孔は痛みを伴う、膿が排出される状態です。皮膚の下は、トンネルのようになることが多く、ここまで進行すると傷跡が残りやすくなります。治療を受けないまま進行すると、症状は悪化し、痛みや腫れが強まるため、早期の治療が推奨されています。
また完治していない状態では、炎症をが繰り返す恐れがあり、適切な治療を行うことが大切です。

化膿性汗腺炎は何科を受診する?

化膿性汗腺炎の治療は、形成外科か皮膚科で治療が可能です。形成外科では、手術による除去治療や薬物療法が行われます。手術では患部の結節や膿瘍を切開し、膿を排出する治療が一般的です。形成外科での治療は、症状がひどく進行している場合や、傷跡が残るか心配される場合に適しています。一方で、皮膚科では環境改善のサポートや抗生物質、抗炎症薬などによる薬物療法が行われます。環境改善では、清潔な状態を維持し、摩擦や汗を避けるなどの指導が行われます。抗生物質は感染を抑えるために用いられ、抗炎症薬は炎症を軽減する効果に期待できます。

化膿性汗腺炎の治療方法

化膿性汗腺炎には、主に2つの治療法があります。

  • 手術による治療
  • 薬を使用した治療

ここでは、それぞれの治療について詳しく紹介します。

手術による治療

化膿性汗腺炎の手術による治療は、炎症部分の除去と再発防止を主な目的として行われます。手術には、炎症部分を全て取り除く場合と膿瘍を切開して膿を排出させる場合があります。炎症の広がり程度に応じて手術内容も大きく異なり、早めの治療が体への負担も少ない治療法を選択できるでしょう。手術による治療は保険適用が可能で、状態や治療の範囲によって費用は大きく異なります。手術を受ける場合は、費用についても確認しておくと安心です。

薬を使用した治療

手術では症状が改善しない場合、薬物療法による治療があります。治療には、注射薬や経口薬、塗り薬などが使用され、代表的な治療薬がヒュミラです。ヒュミラは、化膿性汗腺炎を減少させる効果がありますが、効果が現れるまでには約3か月かかります。治療では主に太もも、お腹、二の腕の後ろに注射を打つことが一般的で、自己注射が可能なため通院の手間を軽減でき、治療への負担が軽くなります。薬物療法にかかる費用は、使用する薬や治療の内容により異なります。

化膿性汗腺炎は市販薬でも治療できる?

化膿性汗腺炎治療には、市販薬が一時的な緩和や予防に使えることがありますが、効果的な治療には適していません。そのため根本的な炎症や感染の治療には、医師による治療が必要です。化膿性汗腺炎治療は、完治までに時間がかかり、悪化すると傷跡が残ることも多く報告されています。自己判断による市販薬での治療を行うのではなく、適切な治療を行うようにしましょう。

似ている疾患と見分け方

化膿性汗腺炎治療は、見た目がよく似た他の疾患がいくつか存在しています。

  • 粉瘤
  • 毛嚢炎

ここでは代表的な2つの疾患を紹介します。

粉瘤

粉瘤は、皮膚の内部に老廃物や皮脂が蓄積されることによってできる良性の腫瘍です。初期は小さなしこりとして始まりますが、時間が経つと内部の老廃物がたまり、大きく変化します。粉瘤と化膿性汗腺炎の主な違いは、粉瘤に小さな穴が存在することです。

毛嚢炎

毛嚢炎は、赤みや膿を伴うしこりがあり、周囲の皮膚が赤く腫れることがあります。化膿性汗腺炎と毛嚢炎は、症状が似ているため間違われやすい疾患の一つですが、大きな違いは発生場所にあります。毛嚢炎は主に首の後ろや太もも、陰部などで発生しやすい傾向があります。一方、化膿性汗腺炎は、乳房の下、お尻、足のつけ根、わきの下などでよく見られます。

化膿性汗腺炎かも?と思ったら気を付けるポイント

化膿性汗腺炎が疑わしい場合には、気を付けるべきポイントがあります。

  • 患部を自分で潰さない
  • 毛嚢炎

上記の3つに注意し、適切な処置を行うようにしましょう。

患部を自分で潰さない

患部を自分で潰してしまうと、炎症を悪化させる可能性が高まります。そのため患部が気になっても、無理に潰すのは避けましょう。特に化膿性汗腺炎は、患部を無理に触ったり潰したりすることで、感染が広がる恐れがあります。自己判断での処置は避けて、疑わしい場合は早めの治療が大切です。

清潔に保つ

化膿性汗腺炎は不衛生が原因ではありませんが、二次感染を防ぐためにも清潔を保つことが重要です。シャワーや入浴で感染部分の周囲を清潔に洗うようにしておきましょう。洗う際は、刺激の少ないボディソープを使用し、優しく手で洗浄してください。

症状が改善しない場合早めに病院を受診

症状が改善しない場合や悪化した場合は、病院を早めに受診することが重要です。化膿性汗腺炎に似た疾患も存在するため、自己判断は難しいことが多いです。また悪化すると皮膚がんを発症するケースもあるため注意が必要です。

まとめ

化膿性汗腺炎は汗腺に細菌感染が起こり、膿がたまる皮膚疾患で、放置すると悪化する可能性が高いと言われています。症状は痛みや腫れ、膿や血液の外部流出を伴い、早期治療が不可欠です。治療には、形成外科が適切な専門科で、手術や投薬によって症状の改善を行います。化膿性汗腺炎が疑われる場合は、自分で潰さず、早めに病院を受診しましょう。化膿性汗腺炎の治療は、傷跡の目立たない治療を行う当院にお任せ下さい。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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化膿性汗腺炎はお尻、脇など、人に見せるのが恥ずかしい場所にできることもあり、病院に行くことをためらってしまう方が多くいらっしゃいます。しかし放置をすればするほど悪化し、生活に支障をきたし、また治療もより難しくなっていきます。

この記事では、化膿性汗腺炎ができる原因と正しい治療法を解説します。
病気について正しく理解し、悪化させないように早めに対処しましょう。

化膿性汗腺炎とは

どんな病気?

毛が生えてくる部分である毛包が、なんらかの理由で慢性的に塞がり、炎症が起こることで、痛みを伴う皮下への膿の蓄積が生じる病気です。
近年日本では食の欧米化、また衣類の変化に伴い急速に増えてきています。
しかし、まだ日本ではこの病気に対する理解が進んでおらず、適切な治療を受けている患者様が少ない状況です。

症状の出やすい部位

化膿性汗腺炎は、首、脇の下、乳房の周り、足の付け根、鼠径部、肛門の周りなどに発症することが多いです。人に見せるのが恥ずかしい場所にできることが多いため、受診が遅れ、悪化してしまうこともあります。

症状を発症する年齢、男女の違い

思春期以降の男女に発症することがほとんどであり、特に日本では20〜40代が最も発症しやすいと言われています。女性は閉経後に発症することが珍しいため、女性ホルモンとの関係が疑われています。一方男性は、化膿性汗腺炎が老後まで続くことも有ります。
また、男性の方が重症化しやすいとも言われています。

皮膚の診察の仕方

特定の仕方としては2つあります。腫瘍の位置と、治癒と再発を繰り返しているかどうかで判断する方法と、深い腫瘍から膿のサンプルを採取して、検査室で細菌を特定する方法の2通りです。化膿性汗腺炎の腫瘍は他の皮膚腫瘍と似ており、慣れていないと医師でも診断がはっきりしないことがありますので、 自分で判断するのは難しいと考えられます。
そのため、少しでも気になった場合は早めに病院で受診し、医師に相談することをおすすめします。

化膿性汗腺炎の考えられる4つの原因

化膿性汗腺炎の正確な原因は 不明

実は化膿性汗腺炎の詳細な原因は、いまだ解明されておらずわかっていません。
しかし、なんらかの要因で毛穴がつまり、炎症を引き起こすことが原因であることはわかっています。また、衛生状態の悪さや、デオドラント剤やパウダーを使用したり、わき毛を剃ったりすることは関係ないと考えられています。

正確な原因は不明ですが、これまでの調査により 考えられる原因は4つあります。
ここではその4つの原因に関して解説をしていきます。

喫煙

 タバコに含まれるニコチンが、毛孔閉塞を引き起こすのではないかと考えられています。また、化膿性汗腺炎を発症した患者様の内、喫煙者と禁煙者の割合が2:1であることから喫煙は化膿性汗腺炎の原因として大きく関係があると考えられています。

肥満

 肥満は肌の擦れによる刺激を引き起こすこと、化膿性汗腺炎を悪化・慢性化させる成分(TNFα)を産み出すこと、また、汗による蒸れを引き起こすことが考えられます。これらは化膿性汗腺炎を引き起こす要因になっているのではないかと考えられています。

遺伝

 詳しい機構は未だ解明されてはいませんが、化膿性汗腺炎の患者様の内、 30~40%の方が遺伝的な要因があったと報告されています。

食事

乳製品の一部、経口避妊薬、不妊治療で使われる薬、および避妊薬などが化膿性汗腺炎の原因である毛穴のつまりを引き起こす物質(アンドロゲン)を含んでおり、化膿性汗腺炎を引き起こすのではないかと考えられています。

以上の原因を踏まえると、かかりやすい方の特徴としては、トラック運転手、またデスクワークなどの長時間座ることが多い人、また、喫煙者と肥満者といった特徴があげられます。

化膿性汗腺炎の症状

化膿性汗腺炎は放置すると悪化し炎症が広範囲へと広がり、生活に支障をきたすようになります。各段階でどういった症状がみられるか解説します。

悪化の4段階

1.毛穴が詰まり、しこりやおできのようなものでき、時間が立つと大きくなり、赤く腫れる( 結節

2.おできに膿がたまり( 膿腫)、さらに膿がたまり毛を包む袋がやぶれ、ぷよぷよした状態になる( 膿瘍

3.膿が広がり、周囲の組織が反応し炎症を生じる。

4.おできが複数あると、隣通しの毛を包む袋が破れ、貫通し、皮膚の下で蜂の巣のようなトンネルができる( 瘻孔)。さらに炎症を拡大し、腫瘍の再発を繰り返すことで皮膚が厚くなり傷跡が残る( 瘢痕)。またこれを繰り返すことで慢性化していく。

このように、症状が悪化すればするほど、慢性化や傷跡が残る可能性が大きくなります。

日常生活に及ぼす支障

初期の状態では、痛みを伴うおできがいくつかできる程度ですが、
悪化すると以下のように生活に支障をきたします。

  • ・擦れると患部が痛み、思うように動くことができない
  • ・長時間座っているのが苦痛であり、会議や遠方への移動が辛い
  • ・外出することに対して消極的になる
  • ・膿によって服が汚れる
  • ・臭いが気になる

このように悪化すると様々な状況で支障をきたし、生活に悪影響を及ぼすため、手遅れになる前に、早めに受診し治療することをおすすめします。
当院では、できものを専門に治療を行っておりますので、少しでも気になった場合は是非ご相談ください。

化膿性汗腺炎の治療方法

重症度により、治療法は異なってきますが、投薬治療による内科的治療と手術による外科的処置の2つに分かれます。
それぞれの治療の特徴を解説します。

外科的処置

おできのできている 患部全体を切除、または、 患部を切開して膿を出します。
炎症部位が広範囲に及んでいる場合、切除する部分が大きくなるため、皮膚を切り移動する、または皮膚移植をする場合もあります。手術で切除する際に取り残しがある場合は再発する可能性もあるため、しっかりと切除することで、より抜本的な改善を見込めます。

内科的治療

患部の状態によっては、外科的処置を行うことができない場合があります。
また、外科的処置をしても症状が改善しない場合もあります。
そのような場合に、内科的治療として飲み薬や塗り薬、注射薬などの薬を使用することがあります。それぞれの重症度により、使用する薬が異なってくるため、早めに病院に受診することをおすすめします。

当院ではできものを専門に治療しておりますので、患者様にあった治療を行っております。少しでも気になった場合は一度ご相談ください。

化膿性汗腺炎に対するセルフケア

普段の生活でできる6つの対策方法

禁煙

たばこに含まれる成分は化膿性汗腺炎を発症させる原因と考えられています。禁煙によって他の病気も予防できるため、一度喫煙習慣を見直してみてください。

減量

肥満は化膿性汗腺炎を悪化させるTNFαという物質を産み出すだけでなく、皮膚にかかる圧力を増やし、膿の破裂を引き起こし、化膿性汗腺炎を悪化させます。

服装

肌への刺激を少なくするために、ゆったりサイズの綿素材の肌着と洋服をおすすめします。ピッタリとした服は患部を刺激し、悪化させる要因にもなるので、気をつけましょう。

使用するガーゼ

使用するガーゼは症状の状況によって最適なものが異なり、誤った種類のものを使用するとむしろ悪化させることもあるので、医師から指定されたものを使用するようにしてください。

カミソリの使用

カミソリは刺激が多いため、使用は控え、電気シェーバーやハサミで短くカットするなど気をつけるようにしましょう。

清潔な習慣

化膿性汗腺炎は不衛生が原因の病気ではありませんが、二次感染を防ぐために清潔に保つことが必要です。シャワーや入浴で清潔を保つようにしましょう。また、香料や他の刺激物が少ないボディーソープで優しく洗うようにしましょう。

化膿性汗腺炎以外の可能性も?

化膿性汗腺炎とよくにた2つの病気

化膿性汗腺炎と似ている病気として粉瘤や毛嚢炎などがあります。
それぞれの違いを解説します。

粉瘤

粉瘤は皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質といった老廃物が溜まった良性の腫瘍です。化膿性汗腺炎と同様、症状が進行すると膿がでてくる場合もあります。
見分け方としては、 患部に小さな穴があいているかを確認することで見分けることができます。

毛嚢炎

毛根を包む毛穴の奥の部分が炎症し赤みを帯びたり、膿をもったりといった症状を発症します。化膿性汗腺炎と症状がよく似ていますが、 発生する場所と原因が異なります。
毛嚢炎は、首の後ろや太もも、陰部付近でできやすいです。原因としては、細菌性の炎症のため、皮膚を清潔に保つことで予防、対処に繋がります。

まとめ

化膿性汗腺炎の原因は正確には分かっていません。
化膿性汗腺炎の原因は正確には分かっていません。 しかし、考えられる可能性として、喫煙、肥満、遺伝、食事の4つの原因があります。 また、化膿性汗腺炎に似た病気もいくつかあり、はっきりと区別することは難しいため、症状に気づいた場合は、悪化し手遅れになる前に早めに病院で受診し、治療することをおすすめします。当院では、できものを専門に治療を行っております。各患者様一人ひとりにあった治療法を行っておりますので、少しでも症状が気になった場合は是非ご相談ください。

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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